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銃弾と攻撃魔法・無頼の少女  作者: 立川ありす
第22章 神になりたかった男

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預言

 舞奈たち、明日香たち、各々のチームが首尾よく不法移民に対処した日の翌日。

 ホームルーム前の教室で――


「――といった塩梅よ」

「こりゃまた、お楽しみな事で」

「別に楽しんでないわよ。そっちこそ、美人さんとよろしくできて良かったわね」

「そんな余裕はなかったよ。やんすとマーサさんがずっとついてたし、それでも手を出そうとするとレナちゃんが睨んでくるんだ」

 明日香はくつろいだ様子で腰かけ、舞奈は椅子の背に膝をついて、テックの机の前に並んでだらだら話す。

 内容は昨日のパトロール兼調査について。


「……2人ともお疲れ様」

 対面でタブレットから顔を上げながらテックが苦笑する。


 協力者チームの面々を加えたパトロール兼調査の初日。

 舞奈やレナたちのチームは倉庫街の廃工場に巣食っていた脂虫どもを殲滅した。

 明日香やルーシアたちの相手は児童公園を占拠していた集団だった。

 戦闘後に舞奈たちは支部の大人たちに後を引き継いでそれぞれ帰ったので、翌日の朝のうちに学校で情報交換だ。


 各々のチームが捕らえた人型怪異は渉外部を経由して地元警察に引き渡した。

 何匹かは情報収集のため支部にて(無断で)預かっているらしいが。

 まあ、いつもの事だ。


 あと舞奈たちのチームが救出した被害者の女性も警察に保護してもらった。

 話によると連れ去り事件の被害に遭った近隣の住民らしい。

 タイミングよく対処出来て何よりだ。


「……で、今日もパトロール?」

 本当にお疲れ様、みたいな表情でテックが尋ねてくる。

 だが舞奈は椅子の背で大あくびをしながら、


「いんや、運びこんだ脂虫どもの始末で今日は忙しいらしくて」

 そう答える。

 という話を先日のうちにメールで受け取っていた。

 だから「ふうん」と答えるテックに、


「その関係なんだけど、工藤さん、放課後に時間あるかしら?」

「あるけど……?」

 逆に明日香が真顔で問いかける。

 テックはタブレットに落としかけた目を戻しつつ、無表情のまま首をかしげた。


……とまあ、そんな訳で放課後。


 所は繁華街の一角。

 掲げられた看板に3人の天女と『太賢飯店』の店名が描かれた店内で……


「……という訳で、不法移民に扮した怪異の大量検挙を祝して乾杯でゴザルよ!」

 太っちょドルチェがジョッキ片手に音頭をとる。

 シャツに描かれたアニメの女の子は未成年だが、着ている彼は良い大人だ。


「良いぞ大将!」

「乾杯なんだナ!」

 音頭に合わせて店内の酔客たちが歓声をあげる。

 先日のパトロール兼調査と戦闘で、すっかり仲良くなったようで何より。


 ドルチェと同じテーブルには冴子、フランら協力者チーム。

 隣のテーブル席2つに騎士たちやマーサ。

 各々のテーブルにはエビチリや麻婆豆腐や青椒肉絲や餃子が並び、各々の手には泡立つビールが注がれたジョッキ。


 何故なら昨日のパトロールで両チームが大量の不法移民を【機関】経由で警察に引き渡したため、支部は後始末でてんやわんやだ。

 なので舞奈たちの今日の見回りはお休み。

 代わりに増えた面子の親睦を深め、協力者チームが来訪した矢先の勝利を祝うべく食事会と相成った。

 昨日のうちに決まった話なので舞奈たちは学校から店まで直行だった。

 少し早めの夕食になるが、ゆっくり歓談しながら食べるなら丁度良いだろう。


「皆さんも遠慮なく食べていくアルよ」

「「はーい!」」

 朗らかな張の言葉に、さらに別のテーブルから諜報部の面々が笑顔で答える。

 給仕姿の鷹乃も満足そうに笑う。


 こちらのテーブルには鷹乃ちゃんが頑張って運んだ熱々の火鍋が鎮座している。

 各々の目前に取り皿と一緒に並んだグラスの中身は烏龍茶だ。

 バイト帰りに経費で飲み食いするような奴らでも、そういう部分は厳格だ。

 というか今日はフランも冴子もいるのだから高校生が飲酒とか許されんだろう。


 なお今日は珍しい団体客の宴会なので、休日だけバイトの鷹乃も特別に出勤だ。

 友人の梓と美穂も歌のレッスンが終わり次第、駆けつける予定らしい。


「まさか任務の初日で視察と戦闘協力の両方の目的が果たせるなんて、思いもよらなかったわ。……あら、ありがとうフランちゃん」

「いえいえ。まったくですよ。本当に常識を超えた地域ですよね」

 普段はクールな冴子も今日ばかりはくつろいだ様子でジョッキを傾ける。

 空になったジョッキにフランが慣れた調子でビールを注ぐ。

 禍我愚痴支部の調整役となった冴子はフランの上司だ。

 まあ元より世話好きなフランにとっては性分でもあるのだろうが。


 ちなみにフランら【三日月】の教義ではアルコールの摂取は推奨されていない。

 だが教徒以外の人間に勧められた場合は、その限りではないとされている。

 現にモールも本来は御法度なカツ丼が好物で、食堂で見かける度に机に数人前ほど並べて美味しそうに食べている。

 それが暴走バスを正面から止めるパワーになるのだから誰からも文句はない。

 聞いた話では、教義を他教徒に押しつけるのも教義に反するのだそうな。

 あえてそれをするのは信仰を侵略の手段にする狂える土のような輩……らしい。

 神を信じるのも楽じゃない。


「ハハッ! 巣黒では、あの程度は序の口ですぞ!」

「そうなんだナ! ボクたちも来てからずっと戦争みたいな大軍や魔獣の相手が日常茶飯事だったんだナ! ……ありがとうなんだナ」

「お気になさらず。イワンさんはいつも本当に良い飲みっぷりですね」

「ったく、好き勝手なこと言いやがって」

「……マーサもほどほどにしてくださいね。運ぶの大変ですので」

 別のテーブルの酔客たちに、舞奈はやれやれと苦笑してみせる。

 後退した生え際のせいかビールのジョッキが板についたゴードン氏は元より、ドルチェと同じくらい肥え太ったイワン氏まで出来上がっているようだ。

 体重が重い人間は酔いにくいとは何だったのか。

 ルーシアが珍しくたしなめるように声をかける。


 ちなみに舞奈や明日香、ルーシアはカウンターに並んでいる。

 もちろん舞奈は慣れたいつもの席。

 当然ながら未成年なので、目前に並んでいるグラスの中身は烏龍茶だ。


 騎士たちの主君であるルーシアがこっちにいるのは御愛嬌。

 飲めない人間が一緒だと羽目を外せないというルーシアの気遣いと、酔っ払いの隣だとルーシアの情緒教育に良くないとの明日香の気遣いが半々だ。


 加えて舞奈の前にはいつもの担々麺と餃子。

 明日香の前には天津飯とたまごスープ。

 ルーシアは美味しそうに麻婆豆腐を頬張っている。

 そして――


「――そういえば舞奈殿、そちらの御仁は御学友でゴザルか?」

「ああ。テックだ。皆の事はもう話したし、【機関】の関係者じゃないけど事情は知ってるから無礼講でいい」

「なるほど彼女が。民間協力者という奴でゴザルな。若いのに立派でゴザル」

「流石は舞奈さんの友人でやんすね」

「レナ様と同じ年くらいなのに、凄いんだナ」

「……どうも」

 舞奈に紹介されたテックが、汁なし担々麺から顔を上げて会釈する。

 表情の薄い女子小学生を、大人たちは敬うように笑顔で見やる。


 埼玉の一角で、巣黒での一連の事件で、皆はテックの調査に何度も救われた。

 彼女が腕のいいハッカーだという話も皆が知っている。

 おまけに県庁での殴野元酷との決戦の際にもドローンで加勢してくれた。

 だが、そんな彼女の実物を見るのは初めてだ。

 舞奈たちと同い年のクラスメイトなのでビックリしたのだろう。


 なおテックはドルチェとネットゲームでの友人だと聞いている。

 だがリアルでは舞奈の協力者で通すつもりらしい。

 なので舞奈も明日香も、そこをあえてツッコんだりはしない。

 それより……


「……」

「どうしたでやんすか?」

「……いえ別に」

 テックはやんすが気になる様子だ。

 姪でもあるらしい6年やんす氏とそっくりだからだろう。


「な? 瓜二つだろう?」

「本当ね」

 舞奈と顔を合わせて苦笑していると――


「――そういえば、こちらに来たついでに支部に寄ったでゴザルが」

「何かあったのか?」

 ドルチェがグラス片手に世間話。

 早速、無礼講な話である。


「デスメーカー殿と桂木楓殿が脂虫の尋問をしていたでゴザル。実に凄惨な様子でゴザったよ。大人でもあそこまでは中々できないでゴザル」

「やんすー」

「ええ……」

「まあ、そうでしょうね……」

「そりゃまあな……」

 あの2人ならそうするだろう。

 それは良いが、飲み食いの席でするような会話か? と少し思う。

 デスメーカー――死体作成人とは小夜子のコードネームだ。


 脂虫を殺すの大好き小夜子と楓が捕まえた脂虫を嬉々としていたぶり倒し、一緒に来ていた紅葉とサチが手持ち無沙汰というか困っていた構図だろう。

 事情は知ってるし、想像もできる。

 なのでテックや明日香も若干、引く中で、


「聞けば彼女、執行部からスカウトされた後に諜報部でも信じられないくらいの戦果を挙げたという話でゴザったか。某たちも見習わねばならんでゴザるなあ」

「まあ大筋ではそうだが……」

「本当に凄いですよね」

「おお、スマンでゴザル」

 ドルチェは感慨深そうに語りながらジョッキを空ける。

 舞奈はやれやれと苦笑する。

 フランがすかさずビールを注ぐ。


 小夜子とサチは、協力者チームが三人組の敵回術士(スーフィー)に対する戦力面での不備に悩んでいた際に講師に来てくれた。

 後に捕らえた薬物中毒者の狂える土から情報を引き出してくれたりもした。

 なので皆も彼女の実力を認めているのだ。

 そういう部分は大人も子供も大差ない。


「楓さんも、昨日は現場を手伝ってくださったのに今日の尋問にまで御協力されていて、どうやったらあんな神童のようなお子様が育つんでしょうか?」

「ええ、本当に立派だわ。わたしたちも気持ちを引き締めなければいけないわね」

「ま、まあ気持ちを引き締めるのは悪い事じゃありませんが……」

 フランと冴子は自分たちのジョッキを片手に楓を褒め称える。

 少しペースが早すぎはしないだろうか?

 明日香がウーロン茶を手にして若干、引いている。


 楓は先日、あちらのチームに協力して公園の人型怪異を叩きのめしたらしい。

 その際に意気投合していたと朝の情報交換で聞いてはいたが……。

 何か好かれる要素あったっけ?

 担々麺をすすりながら舞奈は思う。

 やんすみたいに手を巨大化させて怪異を握ってたらしいし。

 それとも単に冴子やフランが酔ってるだけか?


 楓や小夜子があんなになった理由は、過去に怪異に大事な人を奪われたからだ。

 桂木姉妹は弟を。

 小夜子は幼馴染を。

 同じように大事な誰かを失った冴子やフラン、大人たちが喪失を乗り越えた方法を少し知りたいと思った。

 あるいは大人になったからといって、そんなものは見つからないのだろうか?

 だから実力のある若者が前のめりな様子を、小気味良いと感じている?


 そのように舞奈が考えるうち、普段は滅多に開かないドアがガラリと開き――


「――おまたせ!」

「皆さん、お邪魔します」

「こんばんはー。スゴイ! お客さんがいっぱいいる!」

「レナちゃん、園香ちゃんにチャビーちゃんも、いらっしゃいアル」

 元気なレナと一緒に園香とチャビーもやってきた。

 折角のパーティーだし、その方が楽しいと思って呼んだのだ。

 学校で話は通したが、ホームステイしているレナと合流してから来たらしい。

 道中でどんな話をしていたのか、早くも楽しそうで何より。


 今日はお客さんがいっぱいいる! とか舞奈が言うと確実に嫌味に取られるのだが無邪気なチャビーの口から出ると張もニコニコ笑顔だ。


「っていうか! なに園ちゃんを差し置いて先に食べてるのよ」

「腹が減ってたから、先に毒見してやってるんだよ」

「……何てこと言うアルか」

 レナは酒も入ってないのに絡んでくる。

 浮かれているのだろうか。

 舞奈の返しに張が露骨に嫌な顔をする。


「お料理を冷ましてしまっては店主に申し訳ないと思って先にいただいていたのですが、気に障ったのなら謝りますわ」

「えっ!? いやその、姉様に言った訳じゃないから!」

「ふふっ、レナちゃんは気を使って言ってくれたんだもんね」

 天然なルーシアの言葉に慌てるレナを尻目に、


「3人とも、何にするアルか?」

「マイちゃんと一緒のものを貰って良いですか?」

「担々麺と餃子アルね! 少々お待ちアルよ」

「わたしはエビチリが食べたーい!」

「承知したアル」

 皆でカウンターの舞奈たちの隣に並ぶ。

 大人たちがテーブルで大騒ぎしている側で、子供たちはカウンターで礼儀正しく食事である。


「舞奈さんや明日香さんのお友達なんですね、可愛い!」

「あっいえ。ありがとうございます」

 だいぶ酔いが回っているのか、はしゃぐフランに園香は少し恐縮する。


 割と朗らかで子供からも好かれそうなフラン。

 だが保健所の敷地にある超法規機関の施設は、もちろん託児所なんかじゃない。

 なので普段は子供と接する機会が少ないのだろう。

 しかも舞奈や明日香のようにキナ臭く世間慣れしていない子供とは。


「舞奈さん、学校ではどんな感じなんですか?」

 舞奈と特に親しいのを見抜いたか、フランは園香に興味津々。


「やっぱりお尻を触ったりするんですか?」

「えっ? マイちゃん……?」

「いやその、なんだ……」

 続く言葉に、園香は少し冷ややかな目つきで睨んできた。

 レナは無言ながら露骨に睨んでくる。

 舞奈は思わず首をすくめる。

 チャビーは「おしり?」と首をかしげながらもエビチリを待ちわびている。

 明日香とテックは素知らぬ様子で各々の料理に取り掛かっている。

 そんな様子を見やってフランはニコニコ笑顔になる。


 どうやらフランは酔っているらしい。

 可愛らしい褐色肌の彼女は、顔色ひとつ変えずに相当に酔っているようだ……。

 舞奈が微妙に困っていると――


「――おまたせしましたー」

「おっ店主殿。本当に今日は大入りだなー。鷹乃ちゃんもお疲れ」

「鷹乃ちゃん言うな」

 奥から給仕姿の梓と美穂があらわれた。

 以降はキナ臭い話は抜きにした楽しい食事会だ。


「よっ! 真打ち登場だぜ」

「わらわは前座か。失敬な」

「そんな事ないよー。鷹乃ちゃんは頑張ってたもんねー」

「梓よ、そなたもなあ……」

「鷹乃ちゃんて、ひょっとしてあの鷹乃ちゃんですか?」

「……向こうではさんづけではなかったか? 久しいのうフラン」

 耳ざとく気づいたフランの言葉をきっかけに、


「あら、この方がそうだったのね。お給仕までしてもらって恐縮だわ。本当に可愛らしいわね」

 追加の料理を運んでいた鷹乃に今度は冴子が絡む。

 色々な意味で反応が豊かな鷹乃に興味をそそられたのだろうか。

 こちらも少しばかり酔いが回っているのだろう。

 大人も大変だなあと少し思う。


 だがまあ、彼女が気になるのも無理はないと思いもする。

 鷹乃は舞奈たち以前に禍我愚痴支部に協力していたらしい。

 その際にフランは式神を通してしか会っていなかったそうなので、実物を見るとこういう反応になるのも、まあ、道理ではある。

 話でしか聞いていない冴子も同様だ。

 リンクした式神を通して県外で仕事ができる腕前は並大抵ではない。

 だが今回は見た目のインパクトが上回る。


「って、まさか小学校の低学年?」

「……安心せい。高学年じゃ」

「鷹乃ちゃんはわたしたちと同じ6年生なんですー」

「舞奈ちゃんたちより1学年上なんですよ」

「あら御免なさい。それでも年齢以上の力量だと思うわ。凄いわ鷹乃ちゃん。本当に巣黒は才能の宝庫ね」

 いじってるんだか褒めてるんだかわからない冴子の言葉に、


「皆さんは鷹乃ちゃんのお知り合いなんですか?」

「ええ。その……リモートで仕事を手伝ってくれた事があるんですよ。資料をまとめる感じの業務だったのだけど、鷹乃ちゃん、とっても上手で」

 フランが嘘でもなく機密漏洩でもない器用な返事を返す。

 酔っているのに。

 だが高学年とはいえ小学生には額面通りの意味に聞こえたのだろう、


「わっ。鷹乃ちゃん凄いー」

「お姉さんに褒められて良かったなー」

「そなたらまで……」

 梓と美穂も一緒に鷹乃をいじって盛り上がる。

 そんな様子を見やり、


「お姉さんたち、鷹乃ちゃんや安倍さんの知り合いなの?」

「アルバイトのご関係ですか?」

 チャビーが首をかしげる。

 園香も同じ表情だ。

 まあ舞奈や明日香とも親しげにしてるし、気になるのも当然か。


「そんな所かしら。以前に県の保健所から行ける所でお手伝いをしてもらったのだけど、明日香ちゃんも、舞奈ちゃんも、とても優秀だったわ」

「安倍さんスゴイ!」

「ふふ、マイちゃんも頑張ったんだね」

「まあな」

 冴子の答えにチャビーも園香も笑顔になる。

 まあ頑張ったのは本当なので、柄にもなく少し照れたように笑みを返す。


 それにしても、こちらも多少は酔っているはずの冴子も嘘ではないが守秘義務に抵触しない答えをすらすらと言ってのけた。

 まるで梢の適当なトークを見ているようだった。

 ひょっとして子供(高校生も含む)の個性なんて、大人が誰でもできる技術をひとつふたつ前借しているだけなんじゃないか? とも少し思った。


 そうするうちに園香たちの料理も出来上がり、梓と美穂が持ってくる。


 その間も皆は舞奈たちを肴に一般人が聞いても問題ないトークで食事を楽しむ。

 園香やチャビーも学校の出来事を話して皆で盛り上がる。


 と、まあ、そのように楽しく歓談しながら、すっかり腹もくちくなり……


「……じゃ、そろそろお開きかな」

「では、代金はわたしたちがお支払いいたしますわ」

「いや自分の分くらい払うよ」

「貴女は現金で払ってないでしょう? 王族の食事代をツケにするつもり?」

 と舞奈がレナに睨まれる側で、


「掛け払いでお願いします。宛先は大使館で」

「毎度ありがとうアルよ」

「マーサさん、ありがとうございます」

「ごちそうさま!」

 マーサが涼しい顔で会計を済ませ、園香とチャビーにお礼を言われていた。


 そしてタクシーを呼ぼうとする大人を尻目に園香とレナは迎えに来たスカイフォールの公用車で、チャビーは安倍の防弾リムジンで帰路につく。

 なので舞奈も帰ろうと思った矢先……


「……そうそう、そなたらに話す事があった。ちと気になる事があってな」

「なんで帰りがけに言うんだよ」

 鷹乃が何食わぬ表情のまま声をかけてきた。

 油を売っている友人を尻目に皿を片付ける梓と美穂を見やりながら、


「しばらく前から大掛かりな占術をしておったのだがな」

「それで調査に顔を出さなかったのか」

 続く言葉に苦笑する。

 明日香も素知らぬ顔で聞き耳を立てている。


「その際に、ちと気がかりな結果を得た」

「なんだそりゃ?」

「大規模な戦闘のヴィジョンが見えた」

「そりゃまた」

「場所と時間、相手はわかるかしら?」

「確実なのはヴィジョンだけじゃ。場所はおそらく首都圏の何処かじゃろう。相手は……というか装脚艇(ランドポッド)と大型怪異の戦闘じゃった」

「それなら、あたしたちより向こうに言った方が良いんじゃないのか?」

 さらに続く言葉に、騎士団を見やりながら再び苦笑する。


 また聞くからに厄介そうな預言である。

 いつか転移先のリゾートホテルでやらかしたような、あるいはヘルバッハとの決戦の直前で行われたような大立ち回りが街中で発生するという事だ。

 加えて、そもそも装脚艇(ランドポッド)による戦闘は舞奈や明日香の領分じゃない。

 装脚艇操手(ポッドテイマー)たるスカイフォールの騎士たちの役目のはずだ。

 だが、そんな舞奈を尻目に――


「――時に安倍明日香よ」

 鷹乃はさらに明日香を見やる。

 そして……


「……そなたの実家の『鉄鼠』がどうなっておるかわかるかの?」

 難しい表情で、舞奈には意味のわからない何かを問いかけた。


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