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森の様子

 翌日の昼。


 ルーベル村の広場は少しだけ騒がしかった。


 森から戻った猟師が、村長と話していたからだ。


「なんかあったのか?」


 父が聞く。


 レオンとトムも一緒だった。


 猟師は腕を組む。


「森の様子がおかしい」


「またか」


 父が眉をひそめた。


「また?」


 村長が聞く。


「この前、レオンと森へ行った時にな」


 父が説明する。


「牙ウサギが火を吐いた」


 周囲がざわつく。


 だが。


 もう以前ほどの騒ぎにはならない。


 魔法が使えるようになった今なら。


 あり得なくもない話だったからだ。


「それだけじゃない」


 猟師が言う。


「灰狼を見た」


 広場が少し静かになる。


 灰狼。


 森の奥に棲む魔物だ。


 村の近くまで来ることは珍しい。


「一匹か?」


「三匹」


「多いな」


 父が呟く。


「しかも風を使った」


「風?」


「ああ」


 猟師は頷く。


「いきなり突風が来た」


 今度は少しざわついた。


 魔物も魔法を使う。


 その可能性は皆なんとなく考えていた。


 だが。


 実際に聞くと話は別だった。


「他にも角猪を見た」


 猟師は続ける。


「身体が光ってた」


「光るのか」


「知らん」


 猟師は肩を竦める。


「だが、いつもより大きかった」


 それを聞いて。


 村人達は顔を見合わせた。


 少しだけ不安になる。


 だが。


 まだ恐怖まではいかない。


「近付かなければいいだろ」


 誰かが言った。


「そうだな」


「森の奥へ行かなきゃいい」


 そんな空気だった。


 村長も頷く。


「しばらく子供だけで森へ入るのは禁止だ」


「猟師達は見回りを増やしてくれ」


「分かった」


 話はそれで終わった。


 村人達も散っていく。


 魔法騒ぎに比べれば小さな話だった。


 実際。


 今すぐ何かが起きる訳でもない。


 皆そう思っていた。



 夜。


 夕食を終えた後。


 トムはいつものように窓際にいた。


 外を眺めている。


「何見てるんだ」


 レオンが聞く。


「森」


 トムは答えた。


「なんか赤いの増えてる」


 レオンも窓の外を見る。


 だが。


 何も見えない。


 いつもの森だ。


「まだ増えてるのか」


「うん」


 トムは頷く。


「昨日より多い」


 少しだけ不安そうだった。


 レオンは弟の頭を軽く撫でる。


「父さん達も見回りしてる」


「大丈夫だろ」


 トムは少し考えてから頷いた。


「そうだな」


 笑顔が戻る。


 そのままベッドへ飛び込んだ。


 単純だった。


 レオンは少し笑う。


 そして窓の外を見る。


 静かな森だった。


 何も変わらないように見える。


 けれど。


 森の奥では。


 確実に何かが変わり始めていた。

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