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【第三十三話】生まれ落ちた罪、生き残る罰(2)

 びしゃびしゃとした足音。勇ましい叫び声。俺達の鳴らす音だ。

 ドグオンという落下音。巣窟を通る暴風のようなゴウンゴウンという叫び声。俺達の相対する怪物の鳴らす音だ。

音だけで、到底敵わないという感じがする。人類は災厄と戦えるが、それは比喩的に対処対策を指したのであって、直接殴り合っての戦闘は意味していない。人間は災厄と戦えない。人に雷を切ることは、どうやってもできない。それほどの規模感、存在している次元が違う。現在、それは喩えではなく、目の前の怪物はありもしない海から這い上がった。文字通り存在している"次元"が違う相手だ。

 にもかかわらず、俺の足は止まらない。浅瀬を駆けるびしゃびしゃとした足音も、覚悟を決めた勇ましい叫び声も、止まる気配がない。それでどうなるというわけでもない。二秒後、ふと目を閉じて瞬きをした瞬間に俺達が吹き飛ばされて、上半身と下半身が泣き別れてしても不思議ではないし、どう叫んだらそれに抗えるという話でもない。けれど叫ばずにいられない。自身を鼓舞し、恐慌と反逆心を制御して抗わずにはいられないのだ。大人しく海に沈んでやるという奴はいない、死の淵に滑り落ちそうになったら必死で指に力を入れてしがみつく。溺れそうなら必死にジタバタとするだろう。犬だって犬かきするんだ、人間の俺だってできる筈だ。

 叫びの楽譜が最初にあって、最初の叫びなんてただ指揮棒を振るだけに等しい。徐々に絶叫の意思に声が追いついていって、沸騰する薬缶が鳴らす水蒸気の発露のように妙に甲高くなる。

「うぉおおおッ!!!」

最初の一歩で退いてしまいそうで、そうなれば二度と立ち向かえない予感がしたから、俺の身体は全身全霊を前進に力を入れた。

 目の前に一人、背中が見える。フルトーさんだとよかったけど、残念、達磨体系のよく知らないおっさんだ。魁か、最初の犠牲者ファーストペンギンか、自分の突っ切る地雷原を重ねるように彼の背中に視線を向ける。彼が生きているうちは、俺も生きているのだろう。その確証もない安堵の入手先を信じながら、水に浸った床を走ると、彼―レクレス・マエオミロイの拳が光る。

「『()豪胆(ごうたん)なる獅子(しし)鉄拳(てっけん)を』!《聖獣咆哮(ガーデロアー)》ッ!!!」

レクレスの両手が眩い輝きを放ったかと思った次の瞬間、彼の持つ盾が光に包まれ、いつの間にか巨大な獅子の顎のように変化した。

「ンンンッヌグオォォォ!!!」

俺が彼の背中しか見えなくてよかった―きっと凄まじい表情をしながら叫んでいるのだろう彼はその獅子の顎で怪物に噛みつくように挟み込むと、二つの拳骨でぶん殴った。

怪物の黒い表面が波打ち、巨体が揺らぐ。ダメージは計り知れないが、相当の衝撃はあったらしい。

「ルカッ!!!!」彼は攻撃した時より一層大きな声で名を呼ぶ。

「我が妙技、受けてみよ! 『いざ龍殺(りゅうごろ)し』、《銀閃鈍槌(ギードーツ)》!」

背後で声が聞こえる。レクレスの盟友にして、怪物の頭を撃ち抜いた弓手、ルカウェイ・ミハルヴェキのものだろう。

俺は振り返って彼の矢を視る。振り向いた視界の先には銀色の重々しい流星の尾を持つ巨大な矢がそこにあった。この大きさだ、見逃しはしないだろう。

 この矢に合わせる。

同時攻撃。それで有効打になるかなんて分からないけど、可能性は少しでも高い方が良いに決まってる。そう思って、俺は必死に怪物との距離を詰め、攻撃の当たる距離まで近づいた。

「うおぉぉぉぉ!」

レクレスに倣うようにできる限り大きな声で自らを鼓舞しながら、槍を投げた。フォームはお世辞にも綺麗とは言えないし、声の割には全然届きはしないのだろう。それでも俺は槍が手から離れるその瞬間まで叫び続けた。

と、ここで思いがけないことがあった。なんと槍の持ち手がスライドして、柄の最後まで下がるとクロスボウのように勢いをつけて跳んで行ったのだ。きっとバネかなにかを、フルトーさんが仕掛けたに違いない。これをもっと早く言ってくれていれば、気は幾分か安らいだに違いない。…けど、あの人ほんと、他人(ひと)に相談しないからな。

「おぉぉぁええええぇぇぇ!!」俺一人だけふざけているような気の抜けた声を出すと、前に転びそうだったが本能が働いて腕が前に出たおかげで転ばずに済んだ。

俺は身を起こして、俺は(武器を投げてもう手元にないのでしょうがないのもあるが)自分の攻撃の顛末が知りたくてほとんどぼっ立ちで怪物の方を眺めていた。

「馬鹿してんじゃねぇ」聞いたこともない冷徹な声が聞こえる。だと思えば一瞬で過ぎ去ってしまって、それが誰のものなのかを見ることは出来なかった。

あまり速い展開に、俺の視界は置いてけぼりを食らっていて、今はもう聴覚でしか判断できていない。何の音があって、何が起きているのかを整理することで精一杯だった。だがそれでも、その声の主は分かる。どこまでも冷淡で冷徹で、しかし安心感を覚える声を俺は一人分しか聞いたことがない。

「フルトーさんッ!!!」自分の声帯から発されたとは思えない、洗練されていない断末魔のような声だった。こうしていると、レクレスがルカウェイをあんな大きな声で呼んだ気も分かるかもしれない。

自分の次を托したいのだ。どうにかしてくれ、という投げやりな思い出はなく、信頼として、次を任せたいと思ったのだろう。

 鎌鼬(かまいたち)と間違える鋭い風のようなものが一閃。フルトーさんは俺達の攻撃の最後に、驚異的な速度の縮地術を使い急接近すると、大斧を振り下ろして怪物の頭を真っ二つに切り裂いた。

 頭を切り裂かれたというのに怪物は、レクレスの強烈な一撃による身悶えから立ち直っても依然変わる様子はない。寧ろ不気味にも血の代わりに黒い生溶肉(スライム)をぼとぼとと身から落としながらも、鬼灯(ほおずき)のような真っ赤な眼光を絶やしていなかった。

 前線はなんとレクレス一人。俺とフルトーさんも攻撃をしたので怪物には近いのだが、今は少し引いて様子を見ている。観察して少しでも行動の綾を乱して、天衣無縫の大怪物をどう料理してやろうという羨望(ヴィジョン)を考えている。それ同時に、ルカウェイによる後方からの一撃も期待している。今一番怪物と距離を取っているのは弓手のルカウェイで、然るに一番状況を俯瞰して見えているのも彼だ。さっきのように大技で隙をつき、それを俺達三人が袋叩きにする―たった一回の成功体験ではあるけど、攻撃が成立した以上、もう一度の成功を求めてしまうのも当然だろう。

 「()()()()()

「…なにがです?」

「頭切った時、弓手が貫いたにしては骨を感じたというか、二層構造になってる手応えがした。矢で貫けるようなやつにしては、なにかこう…止まる感じがあってな」

「そうですか…」と、相打ちをうったはいいが、正直言ってそれは当たり前ではないかと思う。

なにせ、見えてる限りでも、そして結果として起きた限りでも、あの怪物は生溶肉(スライム)を纏っているから二重にはなっている。まさかフルトーさんはそれを指して言ったわけじゃないだろうし…どういうことなんだろうか?

 ルカウェイが最も後方から大局的な隙を狙えるのだとしたら、最も細かな隙を狙えるのは最も前方―怪物の真っ正面で時間稼ぎに徹しているレクレスだろう。ボクサーがインファイトで一瞬の隙を見逃さないように、彼は夜間のような丸っこい兜ごしに怒涛のような怪物の攻撃を捌き続けている。その偉業の立役者―彼の持つ盾の真ん中に、全てをあざ笑うようななんともいえない表情の太陽が書かれていなければ、多少いたたまれなさを感じたことだろう。そう思うほどに傍から見ると彼のしていることは極めて過酷で、如何に霊体といえど長くは()つまいと思わされる。

 強大な存在を相手しているのだからしょうがないが、焦りがつきまとう。一瞬のミスが命取りということは、一瞬の好機ですら命を繋ぐ貴重なものになる。見逃せるわけなんてないが、現実は非常で、いくら好機が目の前にあっても、それがピタリと重なることは少ない。結果としてレクレスもルカウェイも動けていなかった。

 槍を回収して、フルトーさんが辻斬りのように巨木のような怪物の六本腕をかいくぐって攻撃を加えるような、特に大きなことも起きなかった数分が過ぎ、遂に変化が起こる。とはいっても、その変化のきっかけは決して良いものではなかった。

「あっ!」

俺が床を浸す水で転び、倒れてしまったのが変化のきっかけだった。

 針に糸を通したかのように突如として怪物は少し離れた距離―フルトーさんやレクレスが充分包囲して行動を制限できていたにもかかわらず、多少傷の増えた六本腕をドグンドグンと大地を揺るがしながら、俺に目掛けて突進しにきた。均衡の崩壊というのは一瞬で、牽制の為に大技を撃っていなかったルカウェイも咄嗟に銀色の巨大な流星を撃ち放ち、レクレスが抑え、フルトーさんが力の入った一撃をかましても尚動きは止まらず、フルトーさんが粘ったからか、辛うじて怪物は左一番目の腕から転倒する形で止まった。だがしかし、勢いは消えず、前線で抑えていた二人が吹き飛ばされ、ルカウェイと俺も余波で荒波と化した水で姿勢を崩してしまった。

防御術であり、受身であり、いなして攻撃に転じようとする動きであり、最もすべきだった一名―俺を除いて、各々が自身に出来る最善策を取ったにもかかわらず、誰一人としてすぐに動けるものはいなかった。いや、いたとして、この巨体を一瞬だけでも怯ませられるような攻撃を出来る状態にはなかっただろうと思う。

 俺は掴まれた。創作とかでありがち、原典で言えば巨大な猿にされるように、人が人よりもデカい存在に掴まれてどうにもならない、という状況設定(シチュエーション)はよくある。あるからといって、それは頻繁に使っていい描写じゃないだろうし、現実にあってほしいと思うような状況でもない。代わりに美少女に囲まれる手に綺麗な花でも持ちたいような華麗な場面があってほしいが、そんなものは現実逃避に過ぎず、美少女に代替されることもなく俺は巨大な怪物にがっしりと掴まれている。

「おわっ…」俺は口を閉じる。

散々叫んでおいたことで得た教訓、『言葉に出すと気持ちまでそれに引っ張られる』を活かし、自分の終末を悟っても泣き言を言わない道を選択した俺を高潔だと褒めてほしい。だがそれよりも絶対的に助けてほしいが、持ち上げられるにしたがってどんどんと小さく見えていく"ゆかいな仲間たち"を見ると少し望み薄だと落胆しかける。

 持ち上げられる慣性を身体を以て実感してしまったので、その分自分がこれからどうなるか―どのように上から下に水風船のようにぶつけられ、破裂するかを鮮明に想像できてしまう。ジェットコースターの落下前、観覧車で立つ、自転車でドリフト…体験したことのある可能な限り楽し気な加速度(ジー)を受ける感覚を身体に染み込ませようとするが、妙にヌルヌルとした怪物の手の触感がそれを許さない。大人しく叩きつけられろってことですか、と諦観しそうにさえなった。

 最後の抵抗として、俺は瞳にかかった絶望を出来る限り取り除き、怪物の深紅の眼球を睨みつけた。すると、一度体験したことのある感覚がした。肉体から意識が離れ、遠い世界に連れていかれるような無力化に溢れた感覚。それがもう一度、脳の色を染める。


 【 】


 脳に直接吹きかける風のようにするりと、鈴の音が聞こえた。ちりん、ちりん、ちりん ―まるで嵐の中の灯台で鳴らした風景が、絵画として記憶に叩きつけられ、染みつくように、自分の内側の深く、深い部分で音を感じた。

― その鈴を持つ少女は寂しげな表情をしていた。だが、それが真意ではない。その眠たげな眼球の奥底ではもっとなにか、別の感情を人形劇のように楽しんで動かしているに違いない。


そう、以前は思えた。


しかし、今になって考えると、それは疑いすぎだった。この場所―『オルハ地下水路(ちかすいろ)』の本質は、集まる事だったように思える。俺達が戦っていた暗黒の怪物がその集大成ともいえるが、生溶肉(スライム)になってまで―己が人間ではなくなっても尚誰かと集まり、一つになり、強大ななにかになろうとする意志がこの異常遺跡を動かしていた。人を喰らう大鼠(おおねずみ)の中に巣食い、陽探向の華(ヒマワリ)となって生き人形として操り、一人に寄り集まって異形の司祭となり、無数の意識が融け合って―完全に融合してあの枯れ木の森の怪物を創り出した。

鈴を持った彼女は、寂しげな表情をしていたんじゃない。()()()()()んだ。


 近づこうとはせず、一歩も動かずに彼女を見る。一歩も動かず、一つの敵意も殺意も、害する気持ちなんてこれっぽちもないと示す為に俺はなにもしなかった。


逆に、彼女は動いた。鈴を鳴らしていた手を止め、俺を見る。()()()()()()()()

この本は、ある人が持っていた本だ。

この本は、ある人がひとり座って持ち続けていた本だ。

おかしいじゃないか、集まる事が本質のこの異常遺跡(ばしょ)で、ずっと一人だったなんて。

きっとこの本は、断絶の証だ。集まる事を拒否し、一人でいると決めたあの"生きてはいない"少女の決意の証明だ。


 彼女は俺の持つ赤い本を眺め、伸ばそうとする手を手で抑え込み、じっと見つめていた。

すると、ふと不動の瞳から涙がこぼれる。彼女は泣いていた。ぽつぽつ、と決して大粒ではない小さく、漏れ出してしまったような彼女の涙がこぼれる。

 彼女は泣いたまま、思い詰めたような表情をすると立ちあがり、灯台から出る。嵐の中、灯台の中では感じなかったごうごうという音が聞こえる。それを表すように荒れ狂う波は全てが切り裂く刃のように鋭利だった。風に揺らされ、鈴が鳴る。ちりん、ちりん。あまり響かない、小さな音だった。

 少女は柵に手をかけ、なんの疑いもなく、極めて真っ当なことを実行するかのように躊躇いなくカミソリのような波が渦巻く海に飛び込んだ。不思議なのは、少し疑いはしたものの、俺もその荒れ狂う海に素早く飛び込んだということだ。

 二人の人影は、真っ赤な世界の中で波によりバラバラに切り裂かれる。

 人は、その中にある肉は、その中にある内臓は、その中にある骨は、その中にある細胞は―そうした区別もなくいっぺんに呑み込んで切り刻まれてしまった。


 なにもない。本当に()()()()、虚無が映る。

なにかが起きる未来はない。なにかがあった過去はない。なにより、なにかになりうる今がない。時間はその連なりの糸を引き抜かれたように全てがこの瞬間に収束し、バラバラに散乱した俺達の肉塊さえも何事もなかったかのように繋ぎ合わされている。

 無間地獄とはこのことか、と思わされた。唐突に始まり、唐突に終わる。そんな不条理さえなく、何事も起き得ないという完全なる可能性の否定―最も残酷な理不尽()()、ここにはない。全てが平穏無事であり、全てが致命的混沌である、なにものとも形容できない全てを満たし、全てに成り得ないごちゃ混ぜの空間。そこに俺達は堕ちたのだと悟るのに、時間は要らなかった。というより、そういった感覚に付随する自我に、時間の存在はなかった。


 近いようにも、遠いようにも感じる視覚的情報がなんら意味を持たない二次元的で四次元的な暗黒空間の原野を、少女は走る。絶対に追いつけるけれど、俺も釣られて走り出す。


 空間の概念も、時間の概念もない筈の暗黒の()()()に辿り着く。そこにあったのは物質的な建造物や、精神的な象徴なんかではなく、この暗黒に相応しい抽象的なもの。《境界線(きょうかいせん)》だった。

その境界線は、ただそこに存在しているだけで、ただ区切っているだけで実際にあるわけではないけれど、俺の視界が捉えたその姿は見覚えがあった。

 現実で見た、灰色の大扉だ。だが、こっちは現実と違って骸骨巨人によって開かれてはいない。そのまま、壁のような有様だ。永遠に開かない、永久にその内の聖域を閉じ込められ続ける。

筈だった、が、扉は開いた。

恐怖で白く染まった髪を荒ぶらせ、少女は鬼気迫る様で大扉を叩き続けていた。なにが苦しくて、なにが悔しくて、なにがあったらそうなるのか。俺には決して辿り着けない()()絶望を垣間見た。

それに応えて―いや、それを裏切る為に()()()扉は開いてしまったのだろう。


 聖域は、とうとうこの暗黒の中でも解き放たれてしまった。暗黒に存在を封じ、その暗黒を虚構で封じ、その虚構が現実に暴かれる三十の解放の最終段階。聖域から現実へ一本の筋を通す最後のきっかけが今、開いてしまった。

悲劇の因果を遡ると、これ以上ない惨劇の始まりである筈なのに、目の前はそんな大掛かりなことはなかった。ただそこに、一つ石棺があっただけだ。

 俺は近づこうと、一歩でも石棺の近くの寄り言ってやろうと「お前の何者なんだ」と問いかけようと一歩踏み出した刹那、虚無は音を遺し、消え去ってしまった。


俺は石棺により、虚無から追放されたのだ。


 【 】


 意識が肉体に戻って分かったことといえば、あれはあくまでも精神世界のようなもので、現実―つまり怪物に掴まれて、今叩き落されるぞという状況から一秒も経っていないということだ。決して投げやりなご都合主義的に「全て夢でした」という風にはしてくれない。しかし、虚無だの暗黒だのは実在していることになる。

 夢オチにはしてくれなくても、意識だけが独り歩きしていたせいか感覚は寝起きのように非常に鈍い。瞼を開けるのも嫌になってくるので、気が付けば目を閉じているような状態だ。


 遂に落下が始まる。軽く見積もっても現在高度は十メートル以上、確実に死ぬ。せめてもの足搔き、未来への遺産、そういう想いで俺は自分の肩のあたりにいるモグラネズミ―ちゅーたをフードで覆い、彼の尻尾を甘く噛むことで落下しないようにした。よしんばちゅーたが叩きつけられても、その時は俺の内臓が多少クッションの役割を果たすだろう。俺、体脂肪率高めだし。


 未来の遺産は残した。となればあとは俺個人の善意としてこの世界への感謝、俺が見届けることのできなかった輝かしい未来への言葉を考えよう。そう思って俺は意識的に目を閉じて、頭の中のありったけを思い出した。

 死に際、ゆかいな仲間たちを思い出す。

俺を助け、導き、教え、あわや食べようとしていたフルトーさん。

鼠の胃袋の中でしぶとく残っていた髑髏(しゃれこうべ)のプラガハ。あんたの言葉は偉そうで少し鼻についたよ。

あとはレクレス、ルカウェイ―短い間だったが楽しかった。もしあんたらが俺の欲望通りの美少女達だったらこんな思いにはならなかっただろう。だが、もしよければ、こんな変なおっさんではなく、ちゃんと同じ数―第四の美少女も感じさせるような…


第四の?それは変だろ。そういう言葉は、「第三の」があって成立するわけで…


「あっ」


誰もが間に合わないと、そう勝手に結論付けていた絶望を、一人が掻き消した。

俺の頭から完全に消えていたイレギュラー。寡黙な三人目のおっさんは大剣を構えると鮮やか且つ荒々しく怪物の腹を切り裂き、怪物を苦痛に満ちた叫び声とともに地に伏せる大偉業を成し遂げた。


 腹を切り裂かれた怪物は頭を裂かれた時とは違い、発狂の体を見せた。壁を、地面を、目につく全てを殴りかかり、自傷のように体を打ち付ける。地震という言葉では形容できないほどの大暴れの末、怪物は今まで聞いたことのない大きさ、今まで聞いた覚えのない()()の喉を自ら裂きたいかのような凄まじい絶叫が世界を歪める。


腕をもぎ取り、翼をちぎり、体を覆う生溶肉(スライム)を毟り取る。災害の規模で行われているが、その内容は冷静に見れば単なる発狂だ。と、叩きつけられはしなかったものの、地面に打ち付けられて痛みで起き上がれない俺は、誰かに背負われながら思っていた。


俺の意識か、それとも視界か。怪物は暗黒を腹から掻き出し、()()()()を露にさせた。

【あとがき】

 筆の進みが止まりません。散文的な言葉が適当に思いつく。どうか、学校の課題をやらせてください。適当にさぼると思うけど。


至らぬ点ありましたら、どうぞご意見お願いします。


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