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知らんふりの理由

 森村の爺さんは、なんで俺達にあんなに色々な事を話したんだろう?

 家に帰ったあと、正臣は疑問に思った。

 佐藤先生の旦那さんから、アブサイトミチヨライトのことを世の中から隠しとおしてほしいと頼まれていたはずなのに、佐藤先生はともかく、どこの何者かもわからないような中坊の俺達にすべて話してしまうなんて。

 もしかして、森村の爺さんが言ったことはすべて、はったり?

 いやいや、あの水のドームは、はったりじゃない。

 水のトンネルをくぐり抜けたのも、間違いなく現実だ。

 じゃあ、なぜ俺達に・・・・。

 その答えは間もなく分かった。

 正臣たちが水のドームを体験した何日か後に、採掘場の入り口2カ所で爆発が起きた。

 その爆発で採掘場の入り口が塞がれ、そこからの水抜き工事ができなくなった。

 その翌日は、4か所で爆発事故が発生。

 いずれも夜中だったため、けが人は誰も出なかったが、あと一か所塞がれたら、水抜き工事が大幅に遅れることになる。

 だが、小さな町を揺るがすテロまがいの事件は、その翌日、急転直下解決を見る。

 爆発事件の首謀者が逮捕されたのだ。

 その首謀者は、誰あろう、あの森村だった。

 正臣には分かっていた。

 森村は、採掘場で再び大きな事故が起きるのを避けるため、そして、アブサイトミチヨライトの存在を隠し続けるため、採掘場の入り口を全部塞いでしまうという過激行動に打って出たのだ。

 あの日、扉を開けた時にみせた悲壮な表情は、この暴挙を既にあの時決めていたからだったのだ。

 そして、自分が捕まったときに、採掘場のことをまかせらるよう、俺達に全てを話したのだ。

 このまま、森村の爺さんを放っておけない。

 麻耶と3バカトリオは、音楽室に佐藤先生を尋ねた。

 佐藤先生の顔色はお世辞にもいいとは言えなかった。

「先生、大丈夫ですか」

 光吉が尋ねると、佐藤先生はにっこりほほ笑んだ。

「わたしは大丈夫よ。それより、今日は何ごと?」

「何ごとじゃありません。先生、新聞読んでないんですか?」

 麻耶が、強い口調で言う。

「読んでいるわよ」

「じゃあ、採掘場の爆発事件は、知っていますよね」

「ええ」

「それなら話が早いわ。佐藤先生、なぜ、森村のお爺さんがこんなことをしたのか、その理由を説明に行きましょう」

 麻耶がまくしたてる。

「みんな、ちょっと待って。そんなことしたら、森村さんの想いを踏みにじることになるわ」

 と佐藤先生。

「森村さんの想い?それって何ですか」

「みんなを、この事件に引きずり込まないこと」

「なんで、そんなこと分かるんですか?」

「捕まる前の日、森村さんから電話がかかってきたの。自分が今していることを話してきたわ。最初は震えが止まらなかった。でも、なぜ、そんな過激な行動に出るか、その理由が分かってきたら震えは治まった。そして、森村さんは、あなた達に伝えてほしいと言ってきたの」

「伝えてほしいって、何を?」

「警察から何か聞かれても、自分とはまったく無関係を通すこと。そして、事故を未然に防ぎ、アブサイトミチヨライトの結晶を隠しとおすことができるアイデアを見つけてほしいと」

「でも・・・・」

「本当に大切なことは、今目の前にあることではなくて、その先にある。だから、一時の感情に流されて取り返しのつかないことをしないように。これが、森村さんからの伝言」

「・・・・森村の爺さんは、俺達がどんなことをするか先を見越して、釘を刺したんだ。俺達が小手先のアイデアで動く方が、かえって森村さんを悲しませることになるのかも」

「だったら」

 正臣の言葉に応えるように、麻耶が言う。

「だったら、わたしたちは、森村さんにこれ以上心配をかけないよう、知らんふりを通すしかない。それに・・・」

「それに?」

 譲吉が聞く。

「森村さんがいなくなったあとのあの採掘場を、わたしたちが見守らなければ、他に誰がそれをやるの」

 麻耶の一言は、その場にいた全員の心情を代弁していた。

 佐藤先生は、森村さんの想いを、正臣たちが理解してくれたことを感じ取り、笑顔になった。 


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