第七話 接触
第七話 接触
――ファミレス『ドッコイ』――
「ミオは何食う?俺はドッコイバーグディッシュデラックスにする!あとオレンジジュース!」
「私はねぇ……うーんと、ヨッコイランチにしようかな。」
レンとミオはファミレスに来ていた。
「はい、ドッコイバーグディッシュデラックスを一つ、ヨッコイランチを一つ、オレンジジュースを一つですね。以上でよろしいでしょうか?」
「はい!あ、いえ!ドッコイポテトもお願いします!」
「ドッコイポテトを一つですね。かしこまりました、少々お待ちくださいませ。」
「んふふっ」
店員は注文を繰り返すと、一礼をしキッチンへ戻った。
「な、何笑ってんだよぉ……」
クスクスと笑うミオ。
「いっぱい食べるんだなぁって、そんなにお腹すいてたんだね」
「まぁ、朝食べてないからさぁ、朝の分まで食べないとなぁ」
「すごいねぇ」
「あ、ミオ、さっき遮っちゃったけど、私もって何を言おうとしてたの?」
レンは水に口をつけながら家を出る前の話をした。
「えっ、いや、それは……べ、別になんでもないよ」
ミオは頬を少し赤く染めた。
「そっかぁ……。あ。そういやまだ答え聞いてなかったけど、俺、どうやって部屋に戻ったの?あと誰に助けられたの?」
レンはまだ聞いていない答えを、また聞いた。
「……それは、……そうだよね。ちゃんと言わなきゃ。レンを助けてくれたのは――」
ミオは覚悟を決め、話そうとした時。
コンコンと、窓をノックする音が聞こえた。
「……ん?なんだ?誰もいないぞ?」
レンとミオは窓の方を向いたが、外には誰もいなかった。
「……」
ミオは目を細め、視線を下に落とした。
「お待たせ致しました。ドッコイバーグディッシュデラックスと、ヨッコイランチです。」
「ドッコイとポテトが俺で、ヨッコイがミオです!あ、オレンジも俺です!」
「はーい、ごゆっくりどうぞ!」
店員は配膳終わると、軽く頭を下げ笑顔で戻って行った。
「プフーっ!」
窓の外から、誰かが吹き出したような笑い声が聞こえた。
「なんだぁ?なんかやたらと視線感じるな、まぁいいや、食おうぜミオ。いただきまーす!」
レンは元気よく挨拶をし、ハンバーグを食べ始めた。
「ミオ、冷めるよ?……ミオ?」
ずっと下を向いているミオに、手を近付け目の前でブンブンと振った。
「……あ、ごめんね。いただきます!」
ミオはハッと気が付き、手を合わせ、お箸を取り食べ始めた。
――――――
「はぁー、食った食った!腹いっぱい!」
「ご馳走様でした。」
「ごちそうさまでした!!」
ご飯を食べ終えた二人は手を合わせ食事に感謝を込めた。
コンコン――
再び窓をノックされる。
「……なんか、ずっと外にいる気がする。ミオ、行こうぜ!」
「……うん。」
レンたちは会計を済ませ、外へ出た。
「どこだ?」
レンは周りを見渡し、ノックの正体を確かめようとしていた。
「……こっちだよ。」
ミオはレンの手を取り、店の裏手にまわった。
「え?本当にこっち?」
レンは疑問を抱いたが、次の瞬間。
「きったねーとこ!まぁ、誰かに見られるよりかはいいけど!」
中性的の声が聞こえた。
「……!?」
レンが振り返った、その瞬間。
何もなかったはずの場所に、異様な格好の二人組が立っていた。
「に、忍者!!!忍者だ!!!」
レンは目を見開き、忍者の格好をしている二人組を指差し、驚いていた。
「やっほー、忍者だよ〜♪」
「まじで!?すげぇ!?手裏剣とか出んの!?」
中性声の忍者は手をフリフリとしていた。
レンは目を輝かせ忍者について気になることを聞いた。
「出るよーん♪忍法手裏剣!ぽーん!」
懐から手裏剣が出てきた。
「すっげぇぇ!!!!」
「……もういいか?日向。」
「あぁ、はいはい。はーい!おーしまい!ドロン!」
日向と呼ばれた中性声の忍者は、ドロンと一声で煙幕を投げ透明になった。
「うおおおお!!!!」
初めての忍者に興奮しているレン。
「日向、弥生。どうしてここに?」
ミオは、冷静に忍者の名前を呼んだ。
「任務だよ。」
両手をパーカーのポッケに入れている弥生は答えた。
「そーそー、上からの指示で、この子を調査しろってさ!」
日向の声がレンの横から聞こえ、レンの肩に腕を回す輪郭が現れ、姿を表す。
「うぉお!急に出た!!」
「あははっ、毎回いい反応してくれるねぇ、僕嬉しいよ〜」
日向はレンの反応にケラケラと笑う。
「……レンを……調査……?この子は関係ない。関わらないで。」
ミオはレンの前に手を出し、制止する。
「関わらないでって言われても、上の指示は絶対。ノアも知ってんだろ。」
「…………」
ミオは苦い顔をし、口を固く閉じた。
「……ノア?ノアって……お前ら!悪の組織か!?」
レンは家で聞いた話を思い出し、弥生を指さした。
「悪の組織???あははっ!悪の組織!悪の組織だって!あはははっ!!」
レンにくっついていた日向は『悪の組織』という言葉に、手を叩いて笑いだした。
パンパンパンと、手を叩く音が響いていた。
「まぁー、そうだな。俺らは悪の組織からの遣いってわけ」
「ミオを捕まえる気か!?」
弥生の言葉を遮るようにレンは言い放つ。
「レン、落ち着いて。」
ミオはレンをなだめる。
「落ち着けるか!?ミオがまた襲われるってことだろ!?」
「落ち着けって。俺達の目的はノアじゃない。」
「僕さっき言ったじゃーん、君の調査だってさ!」
弥生と日向は冷静に目的を告げた。
「……俺の、調査?な、なんだ?俺なんも持ってないぞ!?」
レンは自分が対象だと気付くと、少し怯えだした。
「付き合ってんの?お前ら」
「「へっ?」」
レンとミオは、弥生からの思いがけない言葉に声を裏返し、顔を少し赤くした。
「なんだ、違うみたいだ。日向、違うって。」
「えー!違うの!?ずっと一緒にいるから付き合ってんのかと思った!」
「え、あ、いや……そんな付き合ってるとかは……出会って数日だし……」
弥生と日向の呑気な会話に対し、てれてれと頬をかきながら否定するレン。
「出会って数日……?まじ?そんなに距離近いのに?えっ……嘘でしょ。」
あまりの驚きに開いた口が塞がらない日向。
手で口を覆い隠したまま固まっている。
「日向もそんな感じだったけどな。初日から距離ガン詰めで来てたじゃねぇか。」
「それとこれは違うじゃん。」
「なにがだ。」
日向と弥生の痴話喧嘩を横目に、ミオは口を開く。
「レンの調査って何?何を見に来たの?」
「……どうやら、ノアは前置きってもんを待ってくれねぇらしいな……」
弥生は軽く笑うと、真剣な目に変わった。
「暁 煉、十八歳。高波大学一年、剣道サークル。バイトは辰ノ屋。血液型はB。好きな芸能人は、絢瀬まつり。お気に入りのパンツは真っ赤なトランクス。だっけか?」
「ぃ゛……そ、それは言うなぁああ!!」
正確な情報と、お気に入りのパンツをバラされたレンは、顔を真っ赤にした。
「俺らにかかるとこんなもんうさぎを愛でるように簡単なのよ。」
「何が聞きたいの?」
ミオは問い詰める。
「……異能力を目覚めさせたようだな。ノア。俺はその異能力が何かを調査するために来た。」
「…………」
ミオはグッと口を閉じる。
「見た感じ、守りたーいって叫んでたし、守る系の炎なのかなー?ってさ。」
「もしそうなら……」
日向は軽く言った後に、弥生は重く話し始める。
「っ!!俺は負けねぇぞ!!守炎は負けねぇ!!」
レンは流れをぶった斬るように声を出した。
「……はぁぁ。まぁ、その意気はいいよ。情報感謝。」
弥生はため息をつく。
「守炎。お前に言いたいことがある。」
弥生は重い口調のままレンを真っ直ぐに見た。
「ノアを、いや、ミオを死ぬ気で守れ。」
「…………はっ?」
レンは思いがけない言葉に、唖然とした。
「この先、ずっと追っ手がノアの事を追い続けるであろう。だから、お前は死ぬ気でミオを守り続けろ。」
弥生の本気の目に、レンは胸を叩き。
「……あったりまえだろっ!!ぜってぇに俺が守りきってやる!そんで、ミオを泣かせるトップを説得してやる!!追うのを辞めてもらうぜ!!」
レンは自信満々に、拳を握り炎を纏わした。
「説得……?ははっ、……じゃあ、楽しみにしてるかな。」
弥生は一瞬だけ鼻で笑い、思ってもいないことを口にした。
「おう!!」
「あと、ノア。お前に悲報もあるぞ。」
「悲報?」
弥生はミオの方に向き直り、小さく笑った。
「一ヶ月後、レオン率いるエデンが日本に来る。表面は他国との交流って話だが、狙いはお前のことを追い詰めるつもりだ。」
「……ついに、来るのね。」
「あぁ。」
弥生の情報に、ミオはわずかに顔が強ばった。
「守炎くんが居るなら安心なんじゃなーい?ねっ?」
日向が呑気に言葉を発し、レンを見た。
「うん?うん、うん!絶対守る!」
とりあえず、守ると宣言をした。
「明日ぐらいにまた新しい下位異能が来る。備えろよ守炎。」
「よっし。じゃあ、頑張れよ守炎!俺らは行くわ。」
「まったね〜」
弥生はパチンと手を叩くと、ひらひらと手を振り、
日向と共に、背を向けて歩き出した。
「お、おう。ありがとうな!……あいつら、良い奴だな。でも敵なんだろ?」
レンも手を振り、ミオに聞く。
「そうね、敵ではあるわね。……すごく嫌な予感。」
「……大丈夫だ、ミオ。俺が守るから。」
レンは俯くミオの手を握る。
「……当たらなきゃいいけど。」
ミオは小さく呟いた。
「よーし、また明日なんか来るみたいだし、守炎の力ももっと色んなこと試してみたいし!よーし!経験値詰むぞー!!おーーっ!!」
「……ふふ」
ミオが悩んでいる横で、張り切っているレンを見ていると、ミオは自然と笑みがこぼれた。
一方、弥生は――
表通りを日向の【透明】で歩いていた。
耳のインカムを触っている。
「――はい。以上です。」
ピッと、音を立て通信が終わった。
「……嘘はついてないぜ。そんなに睨むな、日向」
「ふーん。」
日向はまた報告で弥生がやらかすんじゃないかとじっと見つめていた。
「守炎ねぇ。簡単に喋ってくれるやつで良かった。あいつに強くなってもらわねぇと、ノアが死んだら俺たちも逝かれるからな。」
「まぁねぇ。僕らが生きるには仕方ないって事かぁ。」
「そういう事だ。だから嘘はついてねぇだろ?」
「だねぇ。」
静寂が二人を包み込む。表通りは賑わっている。
「飯、食ってこうぜ。」
「僕ドッコイバーグディッシュ気になってた!」
「あぁ、守炎が頼んでたやつな。お前吹き出してたもんな。」
「レッツゴー♪」
「はいはい。」
二人はファミレス『ドッコイ』へと踵を返した。
――シャングリー管理局――エデン――
「例の子供の異能力は、ノア様が【契約継承】で授けた【守炎】だそうです。明日には下位異能が到着予定ですが、如何なさいますか?レオン様。」
黒服が窓辺で外を見ていた男、レオンに話しかけた。
「……守炎……ねぇ。守る炎か、面白い。……どこまでノアを守れるのか。試してみようか。」
レオンは、くいっと口角をあげた。
「下位異能は邪魔だ。ケインに消させろ。その代わり、次力一名、送り付けろ。」
「……はっ。どなたに致しましょうか。」
「そうだなぁ……。お、ピッタリのやつがいるじゃないか。」
レオンは机の上の書類をチラリと見た。
とある能力名が書かれた、一枚の紙が目に入った。
レオンは嬉しそうに顎をさすった。
「待っていろ、守炎。」




