怪文書086号【青い死に至る黒】考察会議②
紫月︰私は「黒い。」はオオクワガタだと思っているんだよね。
綺璃︰オオクワガタ?
麗夜︰まぁ、確かに黒いけどさ。
闇魅︰生き物大好きな紫月が考えそうなお話ね。依頼者のおじいさんはオオクワガタを見たと言っているのだから、連想しても不思議はないわね。
紫月︰そうでしょ? 今、闇魅が言った通り、この山にはオオクワガタが生息していた。みんなも知ってると思うけど、野生のオオクワガタはすごく貴重で、サイズによっては非常に高額で取り引きされてるの。
綺璃︰それは知っているけど。ああ、待てよ。この文書の「黒い。」をオオクワガタにしてみると案外当てはまるかもしれない。
麗夜︰マジかよ。
闇魅︰ところどころ疑問点はあるけど、意外ね。
紫月︰私が一番引っ掛かったのは「光った。黒い。が来た。」の部分。
綺璃︰オオクワガタを見たことはあるが、確かに光沢があった気がする。ライトか何かを当てた時に光ったとか、そういうことか?
紫月︰いや? 私はライトトラップをあの小屋でやってたんじゃないかなって思う。
麗夜︰ライトトラップ?
紫月︰そう。ライトトラップってのは大きな白い布にライトを当てて昆虫を呼び寄せる採取方法なんだけど、それこそが「光った」の正体。
綺璃︰なるほど。その発想は微塵もなかった。
麗夜︰誰も思いつかんだろうよ。
闇魅︰友人の死はどう捉えてるのかしら?
紫月︰採取の途中で死んだんじゃないかな。崖とか木から落ちたとか。目の前で友人の死を目の当たりにしたらショックで文書もおかしくなるよ。んで、友人のためにオオクワガタを見つけたいってことだと思った!
綺璃︰オオクワガタ説は今までで一番おもしろい考察かもしれない。詳しく聞かせて欲しいけど、そろそろ僕の考察も話さないといけないね。
闇魅︰そうね、綺璃の考察を聞かないとね。
紫月︰おもしろいって言ってくれてありがとう!
麗夜︰外国人、妖怪、オオクワガタと来て、綺璃はどんな考察したんだ?
綺璃︰書き手には本当に死の色が見えたんじゃないかと思っている。一旦、「黒い。」は置いておいて、「青く死んだ友人」に関して考えてみたんだ。青く死ぬとはどういうことなのか。
闇魅︰死を青い色を用いて表現することがあるのは知っているわ。宮沢賢治は死を表現するのに青を使うし、歌舞伎役者が死んだときは浅葱色(水色っぽい色)の死装束を着せた姿を死絵として描いたりするのよ。だから青は命の色、とも言えるわね。
綺璃︰そこまで知ってるなら、あとは闇魅に任せたいところだけど、それはイメージだよね。
闇魅︰まぁ、そうね。
綺璃︰僕が思っているのは、死んだ友人は本当に青く光ったのではないか、ということなんだ。
麗夜︰青く光った!?
紫月︰どういうこと?
綺璃︰これは、線虫の話なんだけどね。命が尽きようとしている線虫が青く輝いていたという観察結果があるんだ。
紫月︰ビネガーイールって線虫培養してるけどそんな話、知らなかった。
麗夜︰ビネガーイールを知らねぇんだけど、線虫飼ってんの?
紫月︰飼ってるってか培養ね?
闇魅︰とりあえず、続きを聞きましょう?
綺璃︰ビネガーイールの話はあとで教えてもらいたいよ。メダカのエサ用とか、そんなんでしょう?
紫月︰さすが綺璃、当たりー!
綺璃︰さて、線虫の話に戻るけど、実際は紫外線を当てていたらしいんだよね。死の瞬間、最も青く輝き、消えていったんだって。これは線虫の話で、人間で観測されたわけではないんだけど、線虫だけが特別に青く光った、と言い切れるだろうか。
闇魅︰人間でも起こり得る、と?
綺璃︰そう。書き手が見た友人は青く光っていた。話をした線虫と同じようにね。
麗夜︰でも線虫は紫外線を当てていたんだろ。人間に紫外線は見えないと思ったけど。ブラックライトでも当てたとか?
綺璃︰紫月は知ってると思うけど、動物の中には紫外線が見える動物もいるよね。
紫月︰モンシロチョウが有名かな。人間にはオス、メスどちらも白いけど、モンシロチョウから見ると違うの。オスは黒、メスは白だったと思う。
綺璃︰さすが紫月だね。書き手に紫外線が見えていたとは思わないし、人間には人間の見え方があると思う。モンシロチョウに見えない色が僕たちには見えているんだ。だけど、こんな話を聞いたことないかな。
闇魅︰どんな話かしら?
綺璃︰わたしはオーラが見えるんですって。
麗夜︰ああ、いるなそういうヤツ。
闇魅︰昔、占いを受けたときに言われたわ。
綺璃︰青い光をオーラと仮定すると、書き手は友人の死に直面したときに、初めてオーラが見えたんだと思う。当たり前にオーラが見える人ならわざわざ青く死んだなんて使わないだろう。




