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癒しの木  作者:
再び花が咲くように
90/120

25

 あれから興味の赴くまま、私達は4人のあとをつけて観察していた。

 桃花、由紀、世奈の3人は蒼くんが普段を違う表情を見せていることに興味を持ったらしい。確かに、教室にいる時よりは表情筋が仕事しているように見える。


「んで、お前は他に何を買おうとしてるんだ?由愛の好きそうな店を紹介してくれたのは嬉しいけど」

「そろそろなおの誕生日だから、プレゼント何がいいかの候補探し」

「相変わらず仲いいんだな」

「まあね...ついでに美波のも見ておきたいし」


 なおと美波、か...。

 前になおは中学時代のことを後悔している様子だったって要くんが言ってたっけ...。それは克服できたのかな...。

 美波は面倒見が良くてハルがよく懐いていたのもわかる...。私が少しだけ距離を開けていた期間に、ハルは美波とも仲良くなっていた。


「ここは、さっきの店よりは落ち着いた雰囲気なんですね...」

「動物系の小物が多いお店だからね。結構掘り出し物とかあるかも」


 そんな風に言いながらハルは羊とうさぎのアイテムのコーナーを見ている。


「あー...由愛は何を貰ったら喜ぶんだ...?遥稀、選ぶの手伝ってくれよ...」

「やだよ...由愛ちゃんは要が一生懸命選んだものの方が嬉しいんだから...恋人からもらうものに他の人の思想とかアイデアが透けてたら嫌でしょ?」

「それは、よくわからんな...」

「...例えば、由愛ちゃんが要に渡すプレゼントを蒼と一緒に選んだって言ったらどう思う?」

「え?俺?なんか急に巻き込まれた...」

「それは、複雑な気分だな...。蒼が良いやつなのは知ってるけど...」

「わかったようで何より...。ほら、だから渉も涼音ちゃんに渡す物きちんと考えて」

「はーい...」


 ハルの1言に2人は先ほどよりも真剣にプレゼントを選び始めた。

 ハルが私にくれたクリスマスプレゼントもこんな風に選んでくれてたのかな...?そうだったら嬉しいな。


「遥稀、何見てるんだ?」

「蒼、いや、これ、まいっぽいなって思って」

「まいっぽい...?」

「うん。すっごくきれいだと思って...それで、蒼はこっち」


 詳しくは見えないけど、ハルは何かの動物を指さしているみたい...何だろう?気になる...。


「蒼って猫好きだよね?」

「まあ、好きというか、好きになった、だけどな」


 蒼くんは目を逸らしながら言った。きっと、ハルの影響で好きになったんだろうな。


「これ、可愛くない?キャップに肉球が付いたハンドクリーム。蒼が使ってるメーカーと同じところが出してるみたい」

「俺が使ってるって言うより遥稀が薦めてくれたメーカーだろ?それ、遥稀は持ってるの?」

「気になってたから探してたんだよね...買っちゃおうかな」

「ふーん...お、この香りとか良いんじゃないか?」

「オレンジか...いいかも。早速買ってくる」

「あ、ちょ、」


 どうやら蒼くんはハルにプレゼントしてあげたかったみたい...。気づかれずに肩を落としているけど。




「なんか、こうして観察してみると早緑くんて結構面白いね...」

「ハルちゃんに振り回されてる感じがでしょ?あれはなかなかお目にかかれるものじゃないわ」

「うんうん、クラスじゃ絶対に見れないよねぇ」


 会計が終わったハルは蒼くんの肩を叩いて励ましている...。落ち込ませたのはハル本人なのにそれを理解していないみたい。



「そういえば、今日はシンプルな恰好なんだな?」

「うん...今日の私は頼れるカッコいい先輩だから」


 ハルはドヤ顔をしながら胸を張って言ってる。こういう砕けたやり取りもきっと蒼くんや要くんの前だからできるんだろうな。


 それにしても、カッコいい先輩か...。学校でのハルはきっと後輩からしたらカッコよくて優しくて頼りがいのある先輩なんだろうな。いろんな人から憧れられて、いろんな人をきっと虜にしている。

 見た目の小動物感とにじみ出る内面のカッコよさと優しさ。矛盾が魅力に、アンバランスさが神秘的に映る。それが、多くの人がハルに惹かれる理由なんだと思う。


 今だって、シンプルで中性的な恰好をしているのにその表情はとても愛らしく見える。


「遥稀はいつも可愛いと思うけどな...あ、もちろん、カッコよさもあるけど」

「まあ、カッコいいのはいろんな人が言ってた。要が前に、私は1番カッコいいやつだって言ってたんだよ」

「要が?」

「うん...真面目な顔して言うからびっくりした。蒼も私のことカッコいいって言ってくれるの嬉しい。可愛いは、まだ慣れないから...」


 ハルは少しためらいながら言った。


「まいちゃん?」

「え、あ、なに?」

「なんか、寂しそうな顔してたから、大丈夫?」


 世奈はそう言いながら私のほっぺたを揉んだ。

 ムニムニとしばらくされるがままになっていると、なんだかおもしろくなってきた。


「あ、やっと笑った!」

「ふふ、だって、くすぐったいだもん...ふふ、」

「それで、まいちゃんはどうして寂しそうな顔をしてたの?」

「んーハルって蒼くんと一緒にいる時が1番可愛いんだなって思っただけ。可愛い友達取られちゃったなって」

「まいちゃんジェラシー?」

「うん、ジェラシー」


 世奈と目が合って私はまた笑った。


「もう、2人だけで何楽しそうな話してるの?」

「桃花が拗ねてるよ。そんで、面白いことでもあった?」

「まいちゃんジェラシーだって」

「はぁ?何それ」

「なんでもーよっし、尾行は飽きたし私達の買い物しようよぉ」


 世奈が私の腕を組んで言うと桃花と由紀も呆れたように頷いた。


 改めて私達は移動を開始する。

 最後に後ろを振り向いた時、ハルと目が合った気がした。一瞬見えたハルの笑顔がやっぱり眩しかった。

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