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癒しの木  作者:
再び花が咲くように
89/120

24

 約束通り、私はクラスの友達と買い物に来ていた。

 こうして誰かと一緒に買い物に来る機会なんてあまりなかったから嬉しさと緊張が入り乱れて、今までに感じたことのない感情が私の中を支配していた。

 そのことを話すと彼女たちは驚いた顔をしていた。

 

 そんなに意外かな...?ハルは、あまり外に出るタイプじゃなかったし、それに中学までは習い事や塾があった。それで、機会がなかなか訪れることのないまま終わって、高校でも自分から誘うことも人から誘われることもなかった。


「おお!まいちゃんの私服って新鮮!」

「へ、変かな...?」

「すっごく可愛いよ!ね?」

「なんで、そんなに興奮してんのよ...舞依ちゃん困ってるでしょ」

「あ、ごめん、ごめん...そんじゃ、ショッピングにレッツラゴー!」


 この中で1番明るい桃花が私の手を引いて歩き出した。

 人懐っこい笑顔でいつもクラスの雰囲気を明るくしてくれる女の子。学園祭の時にハルを教室まで案内してくれたし、意外と面倒見もいいのかもしれない。


「って、最初にどこに行くのか決めてるの?」


 すかさず突っ込みを入れたのは由紀。クールでカッコいい女の子。真面目でしっかりしていてみんなから頼りにされる存在...。一時期蒼くんに想いを寄せていた、らしい。意外と乙女なのかな。


「まあまあ、まずはまいちゃんがどこに行きたいのか聞いてみようよ」


 そして、おっとりしている世奈。癒し系で、少しだけハルと雰囲気が似ているかもしれない。よく周りを見ていて、後輩から人気らしい。


「え、私?」

「うん。だって、まいちゃんのこともっと知りたいから...だめかな?」

「お、出た...世奈の無自覚おねだり」

「これ、断れるのなかなかいないよね...なにも反応しなかった早緑くんはやっぱり異常だわ」


 桃花の蒼くんに対する評価って結構辛口だと思う。いや、男子に対して基本的に厳しいのか。理想は年上の男の人って言ってたし、クラスの男子が子供に見えて仕方ないみたい。


「うーん...雑貨とか、お洋服見るの楽しいかも...?」

「いいね、それ。それじゃ、まずは雑貨屋さんに行ってみるか」


 由紀の言葉に頷いてから私達は移動を始めた。





 久しぶりにやって来た雑貨屋さんは、それなりに人がいて、たくさんの可愛いものが並んでいた。

 アクセサリーにマグカップ、小物、どれも見ていて飽きないものばかり。


「まいちゃん、これ可愛くない?」

「えー?可愛いか?」

「うーん...桃花ってセンス独特だからなぁ...」


 桃花が手に持っていたのは小さなバレッタ...サメがついている...。なんか、ハルが好きそうな見た目をしている気がする...。


「えっと、サメ、好きなの?」

「いや、そうでもないよ?ただ、色が可愛いなって」


 結構リアル寄りのサメで色が可愛いとは...?可愛い...のかな...?


「舞依ちゃん、遠慮しなくていいよ...桃花、感性がずれてるだけだから」

「な、なるほど...?」

「えー?由紀ひどーい...それじゃあ、由紀はどれが可愛いと思うわけ?」


 桃花が拗ねながらそう言うと由紀は苦笑しつつ、桜の装飾がされたバレッタを手に取った。


「私はこれかな」

「すごくかわいいね。由紀って花が好きなの?」

「うん...変だよね?」

「そんなことないよ。そのバレッタすごく似合うと思う。花が好きなんて素敵だと思う」

「舞依ちゃんが言ってくれると自信が持てるな...これ、買っちゃおうかな」


 由紀は照れつつも嬉しそうに笑ってくれた。そのことに胸の奥が少しだけじんわりと温かくなる。


「由紀だけずるい!まいちゃん、私にも似合うの選んで!」

「まいちゃん、私も選んでほしいなぁ」

「うん、わかった...それじゃあ、2人の好きなものを教えて?」


 こうしたショッピングも初めてのことですごく楽しい。友達の好みをこうして知っていくのってドキドキするけど、すごく嬉しくて楽しいことなんだな...。

 ハルもきっとこういう気持ちが大好きだから、好きなものを聞いたりしてたのかな。


「まいちゃん?どうしたの?」

「ううん、すごく楽しいなって思って」

「えー?何それ、まいちゃん可愛すぎ」

「きゃっ、」

「こら、桃花落ち着きなさい...舞依ちゃん困ってるでしょ」

「まいちゃん大丈夫?」

「とか言いつつ、世奈も抱き着くのやめなさい」

「だって、まいちゃん、いいにおいするしぃ」

「それ、理由になってないから...」


 本当にこうして仲良くなれると思わなかった。驚くことも多いけど本当に楽しいな。


「んー?あれって、ねね、まいちゃん、」


 世奈が何かに気がついたように私に声を掛けた。指をさす方に目を向けると、そこにはハルがいた...。



「先輩、僕には無理ですよ!」

「何を今さら...ほらほら、早く入る」

「ひ、人の心がない...」

「...放置して帰ろうかな...」

「やめてください、お願いします」


 ハルも雑貨屋さんに用事があったみたい。今日は随分とシンプルな服装をしている。中性的というか...なんか、ハルらしい服装...。


「あれって、ハルちゃん、だよね...?」

「と、隣にいる子は?え?蒼くん、もしかして玉砕した?」

「なんで、あんたは少し楽しそうなのよ...でも、目立たないけど整った顔してるわね...意外と積極的?」

「ねぇねぇ、もう少し近くで見てみようよぉ」


 色々とハルが気になるみたいで近づいて行っている。会話も徐々に詳しく聞こえるようになってきた。


「この中から選ぶってマジですか...?」

「渉がプレゼント考えたいって言ってたから連れてきたのに...普通に文具とかでも良かったんじゃ...」

「いや、だって、せっかくなら好きなもので返したいじゃないですか...。一応誕プレを貰った身としては」

「そういうとこ律儀だよね...そんじゃ、頑張って選んで」

「ええ!?アドバイスとか、一緒に選ぶとか、」

「渉がきちんと考えて選ばないと意味ないでしょ...大丈夫。やばそうなものは止めるから」

「...先輩、最近僕に対する扱い要さんレベルで雑になってません?」

「気のせい、気のせい」


 どうやら、渉くんの買い物に付き合っているだけみたい...。蒼くんもよく許可を出したわよね...?いや、ハルが話していないだけの可能性も...。


「むむ、あれは、早緑くんと、誰?」


 今度は桃花が声を上げた。蒼くんと、要くん?まあ、結構一緒に遊んだりしてるとは聞いてたけど...。これ、蒼くんがハルのこと尾行してきたとかではないわよね...?いや、要くんがいるってことはその可能性は限りなく低いか...。

 あ、2人も中に入って来た...結構注目を集めてる...。


「あれ?渉じゃん。こんなとこでどうしたんだ?」

「あ、蒼さん...実は買い物に来てて、助けてください、先輩が僕を見捨てるんです」

「えっと...?」


 蒼くんは状況が呑み込めていない...ハルは、別のコーナーを見ている...。本当に渉くんのこと放置してたんだ...。


「あれ、遥稀じゃん」

「あ、要だ。どうしたの?可愛いものに目覚めた?」

「ちげーよ。映画ついでに由愛の誕プレ選びに来た」

「由愛ちゃんがイベント参加でデート断られて寂しく買い物してるのかと思った」

「ま、間違ってないけど...」

「でも、由愛ちゃんの好みならここじゃなくて、」

「よし、遥稀取り引きをしようじゃないか」


 また2人にしか理解できない話を始めた...。


「え?遥稀?」

「あ、蒼だ」

「今日、用事があるって、」

「うん、今用事の真っ最中。渉が涼音ちゃんにプレゼント買いたいけどお店に入る勇気がないから付き合ってほしいって」

「先輩、そんなことまでばらさないでください!」


 あ、蒼くんが少し拗ね始めた...。一応、付き合ってるのに面白くはないわよね...。


「お前、本当に阿保だよな...」

「急にディスられた?え?なにが?」

「いや、なんでも...ってか、何か買うつもりだったのか?」

「まあ、うん...要、取引しない?」

「まあ、内容によるけど...」


 蒼くん、あからさまに拗ねてる...。ハルは気づいているのか、いないのか...。


「まいちゃん、あの人たちって誰?蒼くん、何も言わないけど...」

「小学校時代からの友達の要くんと、ハルの部活の後輩の渉くん...。2人とも蒼くんとも仲良しだから」

「なるほど...?その割に拗ねてない?」

「拗ねてはいるけど、たぶんすぐに機嫌直すと思う。単純だから」


 あ、ほら、ハルが話しかけただけですぐに機嫌が直った。本当に単純...。

 渉くんもどうにか選び終わって会計を済ませている。どうやら、移動するらしい。結局、ハルが何を買ったのかはわからずじまいだった。

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