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癒しの木  作者:
再び花が咲くように
82/120

17

 観覧車を楽しみに待っていてハルたちは先に乗った。

 私は蒼くんに親指を立てて一応のエールを送っておく。


今は夕方。

 この観覧車にはジンクスがある。それは、夜に観覧車に乗って告白すると結ばれるというもの。会えて時間帯を夕方にしたのはわざと、というか夕方でも問題ないと思ったから。


 ハルは蒼くんを嫌ってはいないし、蒼くんもああ見えて慎重な方だから言葉を選んで性急にはならないだろうと思っていた。

 そう、思っていた。




 テーマパークに遊びに行った数日後、蒼くんは教室で突っ伏して過ごすことが多くなった。

 帰り道の時から2人の様子はおかしかった。ハルは心ここに在らずという感じでかなりぼんやりしていた。蒼くんは蒼くんで気まずい雰囲気を漂わせていた。


「早緑、大丈夫か...?」

「おー何が?」


 一応、クラスメイトの呼びかけには応じるものの明らかに元気がない。

 スマホもまともに見られる状態じゃないことが伺える。いったいどのような告白をしたらこんな状態になるのか...。


「早緑って意外と不器用だよな...癒木さんも器用には見えないし...」

「うん...ハルって妙な所は鋭いのにそれ以外は極端に鈍いのよね...」


 先輩も似たような感想を抱いているみたいだった。よかった、私だけじゃない。


「あの様子だと時間が解決するかどうかも怪しいよな...」

「それは、確かに...。でも、私達が手を出すのは...せめて、ハルがきちんとした気持ちを教えてくれたらいいんだけど...」


 1番の問題はハルが答えを出せていないから蒼くんがどのような行動をしたらいいのか不明ということ。私の予想ではハルは即決でその場で答えを出すと思ってた。

 気持ちがどちらに傾くにしてもきっと冷静にすぐに選び取れるだろうと。でも、アテは外れた。

 まさか、ここまで停滞するだなんて...。

 ハルの相談に乗るにしても、求められていないことを押し売りのようにするべきではない。さて、どうしたものか...。


 そんな風に考えていると、私のスマホにメッセージが入った。

 ハルからではない。交換してはいたけど一切やり取りをしていなかった要くんから。

 アプリを開いてみると簡潔に「事情を説明しろ」とだけ書かれていた。




 要くんが指定してきたのは駅前のカフェ。待ち合わせ時間よりも少しだけ早くに要くんは彼女の小泉さんと一緒にいた。

 席に着き、注文が揃ったところで要くんが口を開いた。


「それで、何があったんだよ?」

「要くんたちはどこまで知ってるの?」


 じろりと睨まれ私はそう返した。ある程度知っているのであれば省けるところはは省きたい。


「何も知らないからこうして呼び出してるんだろ?由愛があの阿保の更新が止まったって心配してるんだよ。メッセージの返信もないって」


 ちらりと小泉さんを見ると気まずそうに座っていた。

 ハルの心配をしてたのは本当なんだろう。


「少し前から様子は変だと思っていたんです。新しい更新も恋愛要素を盛り込んだものに挑戦してたり、この前会った時に恋とは何かって聞かれたりしましたから」

「え、それ不審者じゃね?あいつ不審者にでもなったんか?」

「じゅ、純粋な興味って感じだったよ?」

「余計にタチが悪い...それで、何か知ってる事情があるなら教えてくれってこと。別に言いふらしたりはしないけど」

「実は...」


 私は最近の出来事を話せる範囲で話した。

 すると、小泉さんは目を輝かせて要くんは頭を抑えていた。


「早緑さんがついに、遥稀ちゃんに?もう、早くくっつけばいいのにって思ってたんですよ」

「くっついてないから状況が悪いわけか...頭痛い...」

「もう、要くんもそんなに悲観にならないでよ。2人は両想いでしょ?だって、遥稀ちゃん早緑さんといる時が1番可愛いもん」


 要くんは深いため息を吐いた。


「あの阿保がすぐに答えなんて出せるわけないだろ。まいは何を根拠に答えを出せると思ってたんだ?」

「ハルの普段の様子から蒼くんのこと大切に思ってるのは分かってたし、それに、ハルは好き嫌いはきちんと言えるタイプだと思ってたから」


 さらにため息を吐かれた。


「それ、昔の廊下凍らせ事件のこと言ってるだろ?あの時とは状況が全く違うしなんならややこしくなってるだろ」

「え、廊下凍らせ事件って何?」


 小泉さんが素朴な疑問をぶつけた。

 なんて説明したらいいんだろう...。


「小学生の時に遥稀がキレてその場の空気を凍らせた事件だな。それよりも遥稀は多分、今戸惑ってるんじゃないか?」

「え?なんで?遥稀ちゃん、明らかに早緑さんのこと好きだったのに喜ぶことはあっても戸惑うかな?」

「普通の人ならな...。あれを普通と同じように考えたらダメだろ」


 要くんが言い切ったところで誰かが席に案内されてきた。


「遅かったな」

「道に迷ってた。でも、待ち合わせの時間よりは早い」


 そこにはハルが立っていた。

 どうやら要くんが呼んでいたらしい。ハルも注文をして、小泉さんと軽く近況報告をしていた。

 この場で緊張しているのは私だけらしい。

 ハルの注文が来て店員さんが下がった時、


「それで、何があったかすべて話せ阿保」


 要くんがそう言った。

 遥稀も表情を固くして、言葉を選ぶようにあの日何があったのかを話し始めた。

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