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Wデート当日、私は先輩と一緒にテーマパークの前でハルと蒼くんを待っていた。
待ち合わせ時間より少し早い時間。朝、いつもより早く目が覚めて、前日に決めた服を改めて確認して、可愛いって思ってもらえるように準備した。
いちおう、蒼くんに告白のチャンスを作ってそれを見守る立ち位置にいるわけだけど、建前はWデート。私だって好きな人には可愛いって思われたいし言ってほしい。
「まい、随分と気合が入ってるんだな」
「だって、こうしてテーマパークに来るのも、圭吾先輩とデートするのも久しぶりじゃない」
「確かに...。早緑のことが心配過ぎて忘れてたよ」
それは、地味にショック。
でも、先輩の気持ちもわからなくはない。先輩と蒼くんは普段から仲いいし、蒼くんの覚悟に感化されてもいる。でも、だからって、少しくらいデートということを意識してほしかった。
言わないけど...。
「ハル、久しぶり」
私が手を振るとハルは笑顔でこちらへと走り寄って来た。蒼くんの手を引きながら。
ここまで迷子対策とかなんとか言って手を繋いできたのだろう。発案者であろう蒼くんだけが少しだけ緊張した様子だ。
「うん、まいおはよう。川端さんも、お久しぶりです」
「久しぶり。今日は急に誘ってごめんね」
「いえ、ここのキャラクター大好きなので誘ってくれて嬉しいです」
「ハル、そうだったの?もっと早く教えてくれたらよかったのに...」
「その、可愛いキャラクターとかマスコット好きなの、私のキャラじゃないかと、思って...」
ハルは目を逸らしながら言った。
その様子に少しだけ胸が痛くなる。
「そんなことないよ!っていうか、そのグッズ初めて見た。どこで買ったの?」
「これは、2年前くらいに出てたガチャガチャで、」
「へぇーすごく可愛いね。ハルに似合ってるよ」
「あ、ありがとう」
ハルは照れ臭そうに言った。キャラのことを完全に嫌いになったわけでも、好きな気持ちを完全に封印してしまったわけではなさそうだ。そのことに少しだけ安心する。
好きなものや好きなことについて話すハルは1番可愛くて、輝いている。その輝きが失われていない事実だけが私の心を軽くした。
列に並んでいる間、ハルはどのような所が好きなのかも教えてくれた。
本当に楽しそうで嬉しそう。その様子を眺めているだけで心が心地よい暖かさで満たされていく。そして、ハルが蒼くんとつないでいる方の手は、ハルの感情に合わせて強く握られたり力が抜けたり、揺れたりと忙しい。
この楽しみが最後まで続くように私は入場した後の目的について軽く話した。ハルは目を真ん丸にして驚いた後に少しだけ笑った。
そして、ようやく私達が入場する番になった。
まず最初の目的地はエントランスショップ。
ここで各々好きなキャラクターのモチーフグッズを購入することでパーク内の楽しい雰囲気を最大限に味わうという寸法。
「やっぱりハル似合ってるよ」
「本当?」
ハルは猫のキャラクターのリボン付きカチューシャを試着して不安げに聞いた。
似合っているのに、不安になる要素なんてどこにもないのに。
「本当。ね?蒼くん」
ハルの視線が蒼くんへと向けられた。
「えーお、おう。すごく似合ってるし可愛いと、思う」
可愛いの部分、小さすぎて絶対にハルに届いていないでしょ。
というか、普段、可愛いってよく漏らしてるくせに何でこういう場面では照れるのよ...。まあ、素直に褒められたみたいだし、まあいっか。
「蒼とまいが言うならこれにしようかな」
ハルの表情からは不安は取り除かれていた。鏡を見て、少し笑っている姿が可愛い。
そして、お揃いのカチューシャを今度は蒼くんに薦めている。
「やはり、蒼もカチューシャ?」
「いや、リボンが付いたやつは俺に難易度高すぎる」
「似合うと思う。お願い」
これは、ハル、完全に面白がっている。要くんと手を組んで何かをやらかそうとしている表情と完全に一致している。
蒼くんは「お願い」の1言に心が動きそうになっているみたいだけど、ハルのこれは完全にからかいなのよね...。
まあ、面白半分で言ってるだけだから、蒼くんが意思を曲げないとわかるとハルもあっさりと引き下がった。
「はい、買ったなら向こうで写真撮ろう」
まずは、ハルと蒼くんの写真でも撮ってあげようかしら。これも思い出よね。
フォトスポットで何枚か写真を撮って確認する。うん、可愛く撮れてる。私と先輩の写真もお願いして撮ってもらった。
いきなりシャッターを切った時の驚いた顔に照れ臭そうに笑う顔。いろんな表情が撮れた。
蒼くんだけが疲れた顔をしてたけど、ハルの写真を見たらきっとすぐに復活するから平気よね。




