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癒しの木  作者:
再び花が咲くように
75/120

10

「清水さんと早緑くんのおかげだよ。本当にありがとう」

「ほらほら。功労者なんだからたくさん食べて」


 学園祭が終わってから数日後、その打ち上げで私達は焼肉に来ていた。

 そして、私の皿には焼かれた肉が盛られている。


「こんなに一気に食べられないよ。ほら、交代で焼くから皆も食べて」


 なんだか、こうして世話をされっぱなしは悪いと思い私もトングを取って他の子の皿に肉を載せていく。

和やかな雰囲気で美味しいごはん。

 個人的にいろいろな感情が溢れた学園祭だったけど終わってみると呆気ないものだった。

 話題に上がるのはやっぱり蒼くんとハルのこと。ミスターコンで優勝した蒼くんは一躍校内で有名になり、仲良く校内を巡っていたハルも注目を集めていたらしい。


「女子は結構悲嘆にくれてる子もいたのよ」

「うんうん、早緑くんが手を引いてた女の子いたじゃない?彼女がいるの?って話題になってたのよ」

「1年生の子達に絡まれているのを助けたらしいじゃない?悲嘆にくれたり大盛り上がりしたり大変だったんだから」


 意外と2人の目撃情報は多く、私が知り得ないことまで聞くことができた。

 ...随分とハルとの散策を楽しんでいたみたいね...。


「それで、舞依ちゃん、早緑くんとあの子の関係はどうなの?付き合っててもおかしくない距離感だよね?」

「残念ながら蒼くんの片思いなのよね...」

「えー?うそ!あんっなに仲良くてこっちが和むくらいの笑顔見せてたのに?」

「うんうん、だって、1年生の子達が絡んだのだって蒼くんがあまりにも特別扱いしてるから嫉妬したって噂だよ。まあ、私的には嫉妬というよりも眺めていたい気分だけど」

「わかる...あの2人の空間に入れる人は少ないと思うわ...」


 この場でも悲嘆にくれたり盛り上がったりと随分と忙しいみたい。

 まあ、確かに、あの2人の間に入るのは難しいかもしれない。蒼くんの恋心はもちろんだけど、ハルも蒼くんを信頼しているみたいだし、私以外が入り込むのはきっと難しいのだろう。


「今回、告白せずに玉砕した子多そうだよね」

「わかる...あんなの見せつけられたらね...他のクラスの友達とか後輩、落ち込んでたなぁ...」

「あ、はは...まあ、蒼くん、ハルに片思いして結構長いみたいだからね...」

「それは、ぜひ聞かせて!」


 やば、盛り上がる燃料を投下してしまった。

 私が話せる範囲ってどこら辺までだろう...?


「清水さんはいつ頃気がついてたの?ってか、早緑くんと元から仲良かったの?」


 まあ、そのあたりなら話しても大丈夫か...。


「最初から、というか、今も大して仲が良いとは思ってないけど...まあ、話すきっかけになったのはハルかな」

「ハルってあの子のことだよね?」

「うん。蒼くんとハルがなんか仲良くて、それで、最初は警戒していたんだけどね...」

「警戒って、」

「だって、あんな何を考えているかわからないクールの皮を被った変人にハルが弄ばれてるんじゃないかと、」

「舞依ちゃん、早緑くんには結構辛辣だよね...」


 最初は割と本気で警戒していたから多めに見てほしい。


「んん、まあ、後々、ハルのことを話すようになって、本気ってわかったから邪魔はしないで上げようとは思ったかな。ハルもなんだかんだ本当に仲良かったみたいだし」


 そう、ハルが蒼くんといるのが楽しそうだから私は2人の友人関係を邪魔しないことにした。そして、ハルが打ち明けるか、あの冷淡さを晒す機会がない限り秘密にしておくつもり。

 別人みたいに冷酷で冷徹な態度を見た時、蒼くんは何を思うのだろう。ハルは自分を守るためにそして、さくらに気がついてほしくて敢えてあんな態度を取ったことが今ではわかる。

 ハルはきっと、さくらに気づいて変わってほしかった。だから、きっと、突き放すような態度を取った。それはハルの不器用な優しさ。

 結果としてそれは無駄に終わったわけだけど。あの後もさくらはハルのそばを離れなかったし、ハルも無理に拒絶することはなかった。完全に拒絶しきれない甘さがあったから。


 その様子を要くんだけが複雑な表情で眺めていた。

 要くんはあの出来事以前から薄々ハルが隠していたものに気がついていたのだと思う。彼だけがあの時唯一、冷静だった。

 普段と変わらずハルに話しかけて、ハルもそれに返していた。クラスの誰もできなかったことを平然とやってのけてしまった。


 蒼くんはどうだろう?私みたいに変化が怖くて距離を置くのか、それとも要くんみたいに何も変わらずに接するのか。


「清水さん?」

「あ、なに?」

「それで、今度は清水さんの話を聞かせてよ」

「え、私?」

「舞依ちゃん、川端先輩とデートしてたでしょ?こっちも話題になってたんだよ!」

「うんうん、お互いで作った籠を交換してたり、楽しそうに手を繋いで歩いてたりとか、」


 蒼くんとハルだけじゃなく私も見られていたらしい...。隠れ蓑にできてると思ってたのに。


「まずは、川端先輩とどういういきさつで付き合ったの?あと、どういう所が好きになったの?」


 近くにいた女子の視線が一気に私に集まった。

 周りは囲まれている...退路は断たれた。


「えっと、」

「舞依ちゃんが照れてる!かわいい!」

「ね、どういう所に惚れたの?」


 キラキラとした目で聞いてくる彼女たちを邪険にすることもできず、恥ずかしいけど私は質問に答えることにした。

 顔が熱いのはきっと、そう、お肉を焼いているから、そのせいで熱いんだ。

 そんな心の中の言い訳が誰かにt通じるはずもなく、私は会話が別の話に移るまで中心にいることになってしまった。

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