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軽く校内を案内しながら学園祭の目玉イベントなどについて説明すると、ハルは興味深そうに相槌を言い ながら聞いてくれた。
普段は周囲からクールに見られているみたいだけどこうして見ると、年相応な、いや、それよりも少しだけ幼い純真さや無垢なものを感じられる。
これはきっと、ハルと親しい人だけの間でしか見ることのできない特権のようなもの。
「まいってやっぱり高校でも人気なんだね...」
「そんなことないわよ」
「そんなことあるよ。だって、いろんな人から声掛けられてるし、皆楽しそうだし、」
それは、ハルの周囲にいる人たちも同じだと思う。ハルにその自覚は薄いのでしょうけど。
「まあ、でも?まいは昔から可愛いし、カッコいいし、優しいし、笑顔が可愛いし、人気になるのは当たり前だよね。うん」
そうやって人のことを素直に褒められるのも昔から変わってない。それも、ハルの大切な魅力。そのことに私は何度も助けられたから。
「遥稀って本当にまいのこと好きだよなぁ」
「当たり前じゃん。まいだよ?」
「いや、まいだけど...」
あ、蒼くんが少しむくれている。
「そんなに私が羨ましいからってむくれないでよ」
「く、褒められたからって調子に乗りやがって...」
「というか、この程度で嫉妬していたらもたないわよ?ハルの本気の褒めはあんなものじゃないんだから」
「いや、遥稀は破壊力がやばい魔法でも放ってるのか...?」
あながち間違っていないと思う。
ハルに褒められると大体の人が心を開いてしまうから。淡々と事実を述べる中で言葉の柔らかさ、本人の警戒を抱かせづらい見た目が奇跡的に合わさったあれは結構すごい。
私は手放しで褒められて喜んでいる年下の子や照れながらも心を懐柔されて最終的にハルにお菓子をあげていた年上を幾度となく目撃している。
無自覚なのが実に質の悪い話ではある。
「あれ、蒼の名前もある。ミスターコン?」
どうやらハルはパンフレットのミスコンとミスターコンのページを見つけてしまったらしい。
「蒼くんも出るんだよ」
「いつの間にか決まってたんだよ。柄じゃないし本当は嫌だけど」
蒼くんはパンフレットを忌々しそうに見て呟いた。HRの時に寝てたから自業自得でしょうに。
「へーそれじゃあ、ミスコンはまいでミスターコンは蒼が優勝するんだ?」
「いや、まだ決まったわけじゃないけどね」
他のクラスにはかわいい子がいっぱいいるし、ハルの期待に応えられるかは微妙だけど。
私が苦笑しつつ答えて、蒼くんに視線を移すとさっきとは打って変わって実にやる気に満ちた表情をしていた。...単純すぎでしょ。
いや、キラキラと期待した目でハルを見つめても絶対に気がついていないからね。
やる気を出してくれたのはいいとして、このやる気が持続するかは疑問ね。あ、でもハルが応援してるって言えば最後の方まで持ちそうね。
今度はコンテストに出ている間のハルの安否について心配しだしたわ。
若干ハルが引いてるのが目に見て取れる。子供扱いされてると思ってるのかもしれない。
私は、ハルの安否についてブツブツと1人で考えてる蒼くんを放置してハルの手を引きながらとある場所へと向かった。
「お、まいに早緑いらっしゃい」
やって来たのは3年生のクラス。
私が付き合っている川端圭吾先輩のクラス。穏やかで人当たりが良いからハルを少しの間お願いしても大丈夫だと思っていたのだけど。
「怖がらせちゃったか?」
「あ、す、すみません...」
「先輩、遥稀人見知りだから」
「お前、なんか嬉しそうな顔してんな?」
案の定、ハルは蒼くんの後ろに隠れてしまった。警戒心が強い。
蒼くんも蒼くんでハルに頼られて機嫌が良さそう。
ハルの警戒心を解くのは私の役目みたいね。
「ハル、圭吾先輩は優しい人よ」
私がハルに声を掛けると、ハルは少し肩をビクッと跳ねさせて蒼くんの後ろからそろそろと出てきた。
そして、何か覚悟を決めたように言葉を発した。
「う、うん、あの、まいのどんなところが好きですか?」
少しの沈黙の後、ハルから発せられたのはそんなことだった。
それにより、周囲には沈黙が訪れたように感じる。え?今聞くとこ?
蒼くんも呆気に取られて何も発することができていない。
そして、圭吾先輩はノリノリでこちらが耳を塞ぎたくなるくらい私のことについて話し始めた。
友達に彼氏を紹介したらお互いに自分の自慢やいい所を語り合っている光景を見ることになるなんて、物凄く恥ずかしい。新手の拷問かしら?
「川端さん、やりますね」
「癒木さんこそ、なかなかだね」
最後の方はお互いに固い握手を交わしている。なんで?
まあ、ハルの警戒心が解けて、仲良くなれたからいいの、かしら?確実に私の心の何かは削られたけど。
「うん、大丈夫そうね。コンテストの間、先輩と一緒にいてもらおうと思ってたの。信頼できる人といてもらった方が安心だし」
平常心、平常心。動揺を悟られないように私は努めていつも通りに言った。
うん、動揺は悟られていないようね。
「なるほど...?早緑は癒木さんのことが好きと」
会って数分。蒼くんの恋心を見破られたみたいだ。
自分より動揺している人がいると人って冷静になれるものだと改めて実感した。
「とりあえず、移動しましょうか」
「うん、1番良く見える席で応援しとくね」
何がスイッチを押したのかわからないけど、何故かハルもやる気を出していた。その様子に蒼くんも密かに気合を入れいているのを見ないふりをして私達は会場へと向かった。




