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癒しの木  作者:
再び花が咲くように
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 出会った頃から私とハルは仲が良くてお互いが唯一の存在だった。

 もちろん、成長するにつれてずっと一緒にいられないということもお互いにわかっていて、それでも大切で愛おしい唯一無二の親友。それが、ハルと私だった。



「まい、少しいいか?」


 そんなある日、私は早緑蒼くんに話しかけられた。

 カッコよくて男女ともに人気で、最近、ハルのそばにいる男の子。正直言って私は彼のことが好きじゃなかった。

 人当たりが良いように見えて毒を吐くし、女の子を適当にあしらっている印象があって、何より自分がカッコいいことを自覚していそうな所が鼻につく。


「...なに?私達、そんなに話したことなかったよね?」


 当然、警戒心丸出しで返す。

 この見た目の整った男にハルが弄ばれていないか心配でもあった。何より、ハルに軽く触れているのも目につく。誰にでもやっているのではないか疑わしい。


「...そんなに警戒しなくても...俺に対して当たりキツくね?遥稀にはもっと柔らかかったのに」

「何?ハルと同じ扱いされると思ってたの?あり得ないから。ハルが私にとって特別なだけ」


 この時間さえ無駄に思える。

 適当に切り上げて教室に戻ろうかしら。


「遥稀のことで、相談がある」

「ハルのこと...?もしかして、ハルが最近元気ない理由を知っているの?」


 蒼くんは重苦しい様子で頷いてクラスでのハルの様子を教えてくれた。

 私が想像していたよりも事態は良くないらしい。味方がほとんどいないに等しいなんて...。それに、昔からさくらのこともあまり好きではなかったけど、ハルに対してあんまりだと思う。


 さくらは昔からハルを見下している態度が節々に見られた。ハルには気をつけるようにと何度か言ったけど、友達だからさくらが変わってくれるのを信じていると、健気に話していた。

 1人の寂しさをハルは知っていたから自ら突き放すことができなかったのだろうけど、それでも目に余る。それとなく私もやめた方が良いとさくらに言ったけど、結局私をおだてるばかりで意味はなかった。


「...奈穂は?あの子、ハルと部活が同じで仲良かったでしょ?」

「さくらがくっついているからそんなに強く言えないんだよ。さくらだけでも大変だから遥稀にまで意識が向かないのかもしれないけど」

「なるほどね...。ハルも奈穂を巻き込みたくないのかもしれないわね...ハル、優しくて臆病な所があるから、巻き込んだ末に被害を受けたらって考えているんだと思う」


 他人のことよりも自分のことを先に考えるべきなのに...。ここで私が何を言っても無駄なだけだわ。


「でも、何で私に話したの?協力を求めるなら同じクラスの奈穂とかの方が良いんじゃない?」

「それも考えたけど、現状あまり期待はできないだろ?それよりも遥稀が1番大好きな友達って言ってた舞依の方が信頼できると思ったから」

「私、この前図書館であなたのこと睨んだ記憶があるんだけど?」

「うっわ、やっぱ睨んでたのかよ...。まあ、それは別としてそっちが俺のこと嫌っていたとしても、遥稀のために協力できるなら手を組みたいと思った。俺は、遥稀に笑ってほしいから」


 少しだけ蒼くんに対する認識を改める必要が出てきた。

 今、彼がハルに対して抱いている感情が恋情なのか友情なのかはわからないけど、この様子から弱みに付け込むことはないだろうし、何より目的は一致している。


「わかった、ハルのために協力しましょう。私もハルの笑顔が好きなの。あの子には笑っていて欲しいわ」

「...やっぱり、お前って重いよな...」

「はぁ?」

「図書館で会った時から思ってたけど遥稀に対して感情重すぎじゃね...?」

「ハルのことは守るって決めたの。ハルが私を守ってくれたから」

「遥稀が...?」

「小学生の時のことよ。そういうそっちこそ、ただの友達にしては肩入れし過ぎじゃない?ハルが懐に入れたら甘くなるとはいえ、」

「俺は、遥稀の言葉と行動に救われたから恩返しで...いや、お前に言い訳は通用しないよな...俺は、遥稀のことが好きだから助けたいんだ。もちろん、告白はしない。混乱させるだけだから」

「それはそれは殊勝な心掛けね。まあ、ハルのことを悲しませることはないでしょうからお互いに協力しましょう」


 私達は友好の握手を交わしてこれからどうするべきかを話した。



 状況的に、ハルが嫌がっているとしても仲間は増やした方が良い。そこで、私が奈穂と接触を図ることになった。

 機会をうかがっているとチャンスはやって来た。さくらどころか周囲には誰もいない。今を逃す手はない。


「奈穂、少しいい?」

「あれ?まいちゃんどうしたの?話しかけてくれるなんて珍しいね?」


 奈穂は能天気に言った。悪意や疑念などのマイナスの感情は感じられない。奈穂はすごく優しくて素敵な子だって以前に遥稀は言っていたっけ。

 だけど、その優しい子は友達の異変に気がついているのかしら...。


「少し、相談があって、良い?」

「え?私に!?いいけど、力になれるかはわからないよ?」

「うん、それは大丈夫。私のこと、というよりもハル、癒木遥稀のことなんだけど...」

「遥稀?まいちゃんと遥稀って仲いいの?」


 驚くのはそこからだったらしい。

 確かに、今はあまり一緒に遊ばないし、話しているところもあまり見られてはいないか。


「うん。私とハルは仲のいい友達なの。そのハルが最近元気なくて心配で、何か知っていないかと思って」

「遥稀が...?普通にいつも通りだと思うけど...」

「最近見るたびに表情が暗くて、体育の移動教室も1人でいるのを見ることが多くて大丈夫かなって」

「移動教室...」


 そこで、奈穂は何かはっとした表情を浮かべた。


「私、最近、遥稀と話していないかもしれない...。」

「そうだったの?」

「うん...最近さくらと行動してるから。さくら、遥稀の悪口とか言ったりするから遥稀いい気分しないかもと思って。トイレとか誘っても遠慮されるし、2人組み作る時とか、も...」


 奈穂はポツポツと最近の出来事を話してくれた。


「それが最近当たり前になって声かけることも無くなって...あれ...?遥稀と最後に話したのっていつだっけ...?」

「それじゃあ、最近の教室でのハルの様子、わからない?」

「いつも、本を読んでて、それで、時々蒼くんと話してて要くんが来た時には本の貸し借りをしたり、してて、あとは...あれ?それは、去年のこと...?」

「...ハルは奈穂に遠慮してたんだと思う」

「遠慮?」

「うん、さくらと行動するの邪魔しちゃいけないって思ったんじゃないかな?3人だとペア作る時に揉めたりしちゃうから。ハル、奈穂のこと大切な友達だって話してたから迷惑とか嫌な思いをしてほしくないって...自分が傷ついたり困ることがあっても平気で身を引いちゃうの」

「そう、なんだ...最近、クラスで遥稀は、あ、男子たちに揶揄われて...私、最低だね...知ってたはずなのに見ないふりをしてた...必死に俯いて耐えてるの見てたはずなのに...」


 ここまで気がついたのならきっと協力してくれるだろう。


「奈穂、お願いがあるんだけど良い?」

「何?」


 奈穂は怯えた表情で私に聞いた。


「ハルと向き合って、ハルのことをきちんと見てあげて欲しい」

「...」

「ハル、傍から見てわかるくらいにボロボロで心配なの。蒼くんもフォローしてくれるって言っていたけど、奈穂にも助けてほしい。本当は、私がハルのことをずっと守ってあげたい。でも、クラスが違うと上手くいかなくて、だから、お願い。ハルの笑顔を取り戻すために協力してほしい」

「わかった...私、もう見ないふりはやめる。遥稀が私を大切な友達だと思ってくれてるならそれに応えないといけない。私も大切な友達だと思ってたのに何で忘れてたんだろう...」


 奈穂は涙をこぼさないようにこらえながら言った。奈穂の強い瞳に私も胸が熱くなった。

 仲間は増えた。これで、少しでもマシになるといいのだけど。

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