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「それで?ハルと一緒にお化け屋敷に入った自慢をしに来たの?」
「違うって...」
結局あの後どうするべきか悩んだ結果、俺はまいと川端先輩に相談することにした。
事情説明をした直後に投げられたのが最初の言葉である。
「まいも落ち着けよ。癒木さんとまだ付き合ってないのがおれとしては意外なんだが...」
「当たり前よ。ハル、人間関係の構築が苦手なタイプなんだから。今まで好きな人がいたなんて話も聞いたことがないし...。あ、1番好きなのは私って言ってたわ」
「こ、ここぞとばかりにマウント取りやがって...」
「はいはい、そこまで。そもそも、癒木さんが早緑のことを異性として意識しているのかどうか怪しいけどどう思う?ってか、恋愛対象どっちだ?あの子」
言わんとしていることは何となくわかる。
人間関係の構築が苦手でも執着はされるんだよな...いい意味でも悪い意味でも。
「うーん...。私的には両方だと思う。自覚はないだろうけど...」
「両方...。え、まい一緒にお泊りしてるんだよな...?」
あ、先輩が不安になってる。
「私にその気はないし、ハルにもないわよ。いつもハルの方が先に電池切れて寝ちゃうし.、朝も私の方が早く起きるし」
「それ、大丈夫な要素にはならなくね...?」
やはり最大のライバルはまいと言えそうだ...。ラスボスかよ。
「でも、早緑も急だな。誰かに触発されたのか?」
「触発って言うか、このままじゃダメだと思ったんす。というか、下心があるままこのまま友達としていてもいいのかとか、仮に遥稀に恋人ができたら俺、耐えられないだろうなって...」
「それで、告白とは思い切ったな...。拒絶されるリスクもあるのに」
「それは、まあ、はい...。覚悟は決めないといけないんですけど、」
ずっと、村雨さんの言葉が引っかかってるんだよな...。俺だって遥稀を誰にも渡したくない。
「蒼くんの気持ちは分かったわ。協力は出来ないけど頑張ってみたら?」
「まい、協力はできないって、」
「だって、私はハルの味方でいるって決めてるもの。ハルが泣かないように傷つかないようにする。それは、蒼くんも知ってるでしょ?」
「わかってる。だから、まいに話そうと思ってた。もしも、俺の言葉で遥稀が傷つくようなことがあったら、俺のことを思いっきり殴って、遥稀から引き離してほしい」
「早緑は、それでいいのか?」
「...はい。遥稀は、最近は慣れてきてはいるけど、友達以外の男子がまだ苦手なんです。俺が思いを告げた時点で関係は崩れてしまうから、そうなったら、俺のことも怖くなるかもしれない」
「...わかった。ハルのこと泣かせたら思いっ切りぶん殴ってあげるから」
「まい!?」
先輩が困惑している。無理もないか...。遥稀のことになると容赦なくなるんだよな...。
「それじゃあ、早速Wデートの予定たてよっか」
「え、Wデート?なんで...?」
「近くにいた方がハルに何かあった時すぐに対処できるでしょ?」
まいはノリノリでいくつかの候補地を挙げていった。
俺と先輩はその勢いに圧倒されるようにただ頷くことしかできなかった。
この話し合いから数日後、俺は何故か渉に呼び出されていた。
「それで、どうしたんだ?悩み事ならいつも遥稀に相談しているんだろ?」
「実は、先輩のことで相談があって...」
遥稀のことで相談...結構重い内容なのだろうか?
「先輩の様子が最近、おかしくて、」
「えっと、具体的には?」
「それが、最近人気の恋愛小説や漫画に手を出したみたいで...個人でやってる別垢の同人活動の方も恋愛メインの話を書き始めたみたいで...」
「え、それだけ?」
「それだけって、結構すごい変化なんですよ!?先輩のフォロワーの人たちも最初は戸惑ってたけど、面白かったみたいで、高評価もたくさんついてて、新規のフォロワーも増えてて、先輩自身が困惑してました」
それは、喜ばしいことなのでは...?
遥稀も遥稀で何で困惑しているんだよ...。
「それに、最近、部活内でも好みのタイプについていろんな人に聞いてて、絶対創作のネタにする気ですよ!」
「ちなみに渉はなんて答えたんだ?」
「えっと、それは、いや、違くて、」
「いや、何が...?そういえば、一緒にお化け屋敷入ってた子とはどうなったんだ?」
「え?どうもなってないですよ?先輩たちとじゃ気を遣って緊張するから僕と入ったって言ってたし」
何故、遥稀と渉の師弟コンビはこうも自らに向けられる好意的な視線に疎いんだ...。
遥稀と渉の共通点...。自身に興味と自信がないことか...。類は友を呼ぶってこのことか?
どちらにせよ、勇気を出したあの子が報われていないのはわかった。ここは、俺が間接的なフォローをするべきか?
「多分、遥稀が恋愛ごとに興味持ち始めたのは俺のせいかもしれない」
「蒼さんのせい、ですか?
俺は、あの帰り道での会話を軽く渉に話した。
「なるほど、創作厨の先輩なら創作のためにいろんなことやりそうですね」
「悪いな...まあ、普通に遥稀の好みのタイプを知りたいのもあったけど」
「確かに、どんな人がタイプなのか読めないですよね...先輩って」
「だよな...。」
可愛いやつが好みくらいの情報しかないんだよな...。しかも、遥稀の可愛いの基準もまちまちだし。
「蒼さんはどんな人がタイプなんですか?俺から見れば蒼さんも全く読めないタイプですけど」
「俺?俺は、タイプというか、」
言ってもいいのだろうか。
「俺は、遥稀のことが好きなんだ。ずっと前から」
「え、ええ!?マジですか!?」
「そ、そんなに驚くことか?あ、これ遥稀には内緒な」
「え、なんでですか?」
「遥稀に変な気を遣わせたくないし、縛りたくないんだよ。遥稀は俺の気持ちに気づいていないし、仲のいい友達だと思っている」
「それは、確かに...。にしても、結構敵とライバルがすごいですね、2人とも」
「知ってる。だけど、好きなんだよ、昔から」
「僕から見たらお似合いだと思いますよ。先輩、蒼さんといる時楽しそうだし、普段と違って可愛く見えるし」
「いや、遥稀はいつも可愛いだろ」
「それは、蒼さんといるからですよ。普段はカッコいいが勝ちます」
「まあ、遥稀がカッコよく見えるのは分かる。中学時代も同じ部活の後輩からは人気だったし。あの頃からライバルは多かったな...」
遥稀を見るたびに抱き着いている女子いたもんな。
「とにかく、頑張ってください。僕にできることはないけど、尊敬してる先輩なんで絶対に傷つけないでくださいよ!」
「それ、まいも似たようなこと言ってたな...」
やっぱり遥稀は周囲の人間に大切にされて愛されている。
きっとこの先も出会う人に大切にされて愛され続けるのだろう。でも、1番多くの愛情を注ぐのは俺でありたい。
まいからメッセージが来た。チケットが取れたらしい。
俺は遥稀を誘うためにメッセージアプリを開いた。




