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帰り道、藍沢さんの策略?により、俺は遥稀を家まで送るという任務を課せられた。
元々送るつもりであったからいいが、やはり、村雨さんの視線は厳しいままだった。
「蒼、大丈夫?」
「ああ、悪い、ぼーっとしてた」
遥稀は少し俯いていて元気がないように見える。それもそうだ。苦手な場所に飛び込んでひたすら恐怖に襲われていたんだから疲れないはずがない。
わかっていたのに、結局俺は遥稀と一緒にいたいという欲を優先してしまった。村雨さんに下心を悪く見られても仕方ないのかもしれない。
「今日、楽しくなかった...?」
「え?急にどうしたんだ?」
「無理にお願いして一緒に入ってくれたから。蒼は楽しくなかったのかなって思って...私、ずっと怖かったし」
「いや、俺は楽しかったけど、遥稀は、疲れただろ?適当に誤魔化して入らないこともできたはずなのに、」
「でも、怖かったけど、入ってよかったって思った」
「それは、何で?」
「みんなで、どこが怖かったとかびっくりしたとか感想を共有できたから...かなり怖かったけど、それでもよかった、と思う...夜眠れるかわからないけど...。」
強がりじゃない遥稀の言葉。本当に遥稀はこういう所、強いと思う。
村雨さんが遥稀のこういった眩しい所に惹かれるのはわかる。俺も同じだから。
「遥稀は、村雨さんとクラス違うのに仲いいんだよな?」
「え、うん。友達だから。体育の時に仲良くなったんだよ。最初にペア組もうって声を掛けたの」
「遥稀から?」
「うん。めぐちゃん、困ってたから。それで、1回ペアになれないことがあってその時に物凄く謝って来てた。クラスの子と組んでたから気にすることなかったのに」
その話の内容から察するに、1人で心細かった村雨さんは遥稀が救われたように感じられたのだろう。遥稀は気にしていないみたいだけど
そして、今度は孤立しそうになった遥稀に村雨さんは手を差し伸べることができなかった。その後悔の念、そして簡単に許されたことに対する感謝から崇拝、という感じだろうか。
「蒼、めぐちゃんが気になるの?」
「いや、全然」
「えー?めぐちゃん可愛いよ?抜けてるとこあるけど」
抜けてる?抜け目ないの間違いじゃないのか...?遥稀の隣を取る強い意志と絶対に譲らないという執念を感じた。あの中の何人が村雨さんの遥稀に対する執着心に気づいていたんだろうか?
藍沢さんはなんとなく察しているような気がするし、渉も本能的に感じているのだろう。話す時1番緊張して怖いと言っていた。
他の人と話している時もさりげない牽制のようなものを感じた。遥稀のことを1番わかっていて仲が良いのは自分であると。
「蒼?気になるなら連絡先教えていいか聞こうか?」
「いや、いい。というか、俺のタイプじゃないし」
うん、連絡を取り合うこともないしな。
そもそも、敵視されているし。
「蒼のタイプってどんな人?」
「え。急になんだよ?」
「だって、今まで1度もそんな話したことないし、中学時代は告白全部断ってたし高校でも同じってまいが言ってた」
そりゃ、好きな人にわざわざ話すことでもないだろ。変な勘違いされたも困るだけだし。
いや、むしろこの機会を利用するべきか?遥稀の特徴を上げて意識させる絶好の機会では?
「は、遥稀はどんな人がタイプなんだよ?」
「え、私?」
「俺だけ言うのはなんかフェアじゃないだろ?あ、歴史上の人物とか2次元はなしな?」
「えー?難しくない...?先に蒼の教えてよ!」
「だから、フェアじゃないだろ?まあ、強いて言うなら、一緒にいて楽しい人、とか?」
どうだ?俺は遥稀といる時結構楽しいって伝えている気がする。
「ありきたりな答えだ」
まあ、そうなるよな。
というか、そろそろ本気を出さないと危うい気がする。クラスメイトの反応や、まいが仕入れた情報によると、遥稀を狙っているやつはそれなりにいると思われる。
本人がそっち方面に疎いのと遥稀のクラスメイトが過保護故に告白とかはされていないみたいだけど。俺自身、友達というポジションから先に進みたいと思い始めているし、だが今の関係が崩れてしまうのも惜しい。
身勝手な我がままなのは分かっている。それでも、失いたくない。
「一緒にいると楽しい人か...。蒼といるの楽しいし、落ち着くから結構好きかも」
「お、れも。今さらな気もするけどな。なあ、遥稀」
「なに?」
「いや、なんでもない...次遊びに行く時までに好きなタイプについて考えとけよ」
「えー宿題?」
「うん。宿題」
「そっか。それなら考えてみる」
「案外あっさりしてるな?」
「だって、創作に恋愛ものって多いから...蒼はすごいね」
「え?何が?」
「だって、いつもいいタイミングで私が必要なアドバイスとかきっかけをくれるから」
「まあな」
もう少しで遥稀の家、か。
俺もそろそろ覚悟を決めないとだな。
遥稀が家に入ったのを見届けて俺は決意を新たに家まで帰った。
次に遊びに行く時までに遥稀に惚れ直させるくらいにカッコよくなると決めた、




