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温かくて素敵なものを手に入れた。
それは手に持つだけで心を落ち着けてくれる魔法のアイテム。大切な大切な宝物。
プレゼントは蒼の要望によってクリスマスが近くなってから渡すことになった。
私もクリスマスカードを用意したくて了承した。別々のクリスマスカードを後日購入してそれぞれにメッセージを書く。
簡単な作業のはずなのに、どう言葉を紡いだらよいかわからなくて、悩みながら今の私にできる最善の言葉を書くことができたと思う。
「それでね、クリスマスパーティー楽しかったよ。遥稀も来たら良かったのに。あ、友達よりも大事な予定があったんだっけ?薄情でさびしいー」
「は、遥稀の方はコンサートどうだった?楽しめた?」
「うん。すごく良かった。クリスマスソングメドレーとか冬ソングメドレーとかも演奏してて、行って良かった」
「そうなんだぁ...楽しかったみたいで良かった...」
なおは表情を少し曇らせて言った。何かあったのかな?
「ハル、今いい?」
「まい、えっと、ど、どうしたの?」
「あ、いや、これ、ハルに渡したくて...ほら、クリスマス近いから」
「え?」
「そ、それだけ、」
「ま、まって、その、私も、まいに渡そうと思ってて、いつも、お世話になってるから、」
机にプレゼントを置いて出ようとするまいを引き留めて急いでプレゼントを出す。
「え?ハルが?私に?」
「う、うん。ちゃんと、お店に行って選んだ」
「そうなの?あの、引きこもりがちのハルが...」
「え、感動するポイントそこなの?」
「もちろん、プレゼントも嬉しいけど、私のためにわざわざ外に出て選んでくれたことが嬉しくて...」
とりあえず、まいの中で私が外に出られないほどの引きこもりであるということが分かった。確かに今回も1人じゃ行けてたか分からないけれども。
「ありがとう、ハル。大切にするね」
「う、うん。まいもありがとう」
まいはいつも通りに私の頭を撫でて教室へと戻っていった。
「お、渡せたみたいだな」
「うん、蒼はどこに、って、呼び出しか」
「クリスマスの予定を聞かれた。埋まってるって言ったけど」
まあ、中学最後のクリスマスだもんね。同級生は進路が分かれるし、後輩たちからしてみれば卒業後に交流を持つのは難しいから最後のチャンスに、ってところかな。
塾に通ってる子は普通に授業があるって言ってたっけ。いつもよりは早く終わるから数人で集まるって話していた子もいたな。
「ハル?」
「ううん、なんでもない。そうだ、これ」
「お、ありがとうな。俺からも、」
「え、?この前、」
「サプライズ成功だな。あれは油断させるためのカモフラージュ」
「え、それなら、返した方が良い、?ごめん、結構気に入ってた」
「いやいや、あれ込みだから。返すとかはなしな」
蒼は慌てたように言った。驚かせるつもりが驚かされてしまった。
「プレゼント交換か?仲いいな」
「要、疲れた顔してるけど大丈夫?」
「だいじょばない...はあ...」
なおの表情も浮かないし要も疲れている。昨日何かあったのかな?
蒼に視線を向けると困ったように教えてくれた。
「あ、ああ...昨日、クリスマスパーティーをしたってさっき話してただろ?」
「うん。そこで何かあった?」
なおと要が疲れているということはさくら関連か...?
「席順とかプレゼント交換で少し、な...」
「えっと、もしかして、要の隣が取り合いになった、とか?」
「遥稀の言う通りだよ。他に何人かの女子もいたんだけど、要くんの隣が良いとか、要くんの選んだのが欲しい、とか」
「おー要モテモテダー」
「興味なさそうに言うな。蒼の方が人気でオレは高みの見物ができると思ってたのに」
「確かに...蒼は何ともなかったの?」
「そうはっきり言われるとなんか複雑だな...
勝手な想像だけど、蒼の方が人気あるのは事実。まいもさくらも前にそんなことを言ってた気がする。
「蒼くんは、望みがないことを知られてるみたいで。断る時もはっきり断ってるし」
「つまり、要の対応が甘い結果だと...」
「オレが悪いのかな?ってか、それならオレも望みないんですけど?」
「押せばいけると思われたか...哀れな」
「何がだよ!蒼も態度的にはそんなに変わんねーのに...なんでオレだけ...」
「それで、結局プレゼントは誰が貰ったの」
まあ、予想は出来てるけど...。
「オレのはなおに当たった。そんで、オレは蒼の。お前、適当に選んだだろ?」
「え?そんなことはないと思うけど...文房具セットだったよね?」
「いや、なんで参加してない遥稀が中身を知ってるんだよ?」
「選ぶのを手伝ったから」
「何にしたらいいか迷ってて、まあ、文房具でいいだろって。遥稀のおすすめのメーカーだから使いやすいはず。ついでに俺はもう1つのおすすめのメーカーのを買った」
「えっと、2人は一緒に買い物に行ったってこと...?」
「まいのプレゼント選びとポップアップショップに行くのを手伝ってもらった」
なおが何か言いたげな表情をしている。
ちなみに蒼はサトさんのを貰ったらしい。そして、行われようとしていた取引。
なおに持ちかけられたのは要のプレゼントを交換しようとの取り引き。正直、さくらだけなら後で渡すことも良くはないけど可能ではあるものの、さくら以外にも交渉を持ちかけて人がいる時点で詰みだ。
プレゼント交換の意味がないとどうにか阻止できたものの、その後の空気はお察しである。
「なお、おつかれ」
「はぁ...ほんとうに...」
「これ、よかったらあげる」
「え。いいの...?」
「うん。特典の栞だけど、何枚か同じの持ってるから。なお、ウサギ好きだし」
「ありがとう!」
「おい、オレにはなんかないのか?」
「え...?要に...?」
何かあったかな...?
「...クッキーでよければ...」
「嫌そうな顔をして渡すなよ。貰いづらいわ」
「やっぱ、こっちのクッキーで」
「お、おう...なんでカバンに入ってんの?」
「まいにあげようと思って作ってきれいなのだけを厳選した残骸。こっちはなおにあげる」
「あ、ありがとう。結構多いね」
「勉強会前の非常食として持ってきた」
まあ、これで納得いただけるならいっか。なおに渡したのは形がそれなりに綺麗だから先生たちにあげようと思ってたものだけど。要に渡してなおにあげないのは気が引けるし。
「残骸の割にきれいだな」
「厳選したから。味は問題なかった」
これで、せめてもの慰めになればいいけど...。
後日お返しとして2人には小さめサイズのお菓子の詰め合わせを貰った。なおはともかく要はもう少し自分の立場を考えて秘密裏に渡してほしかったのはまた別の話。




