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癒しの木  作者:
枝は折られた
36/120

21

 慣れないことは難しくて少し怖いけど楽しい。

 新しい発見をしたり新しい自分に出会えるから。変化は怖くて不安で、だけど、それだけないことを教えてくれたのはきっと私の大切な人たち。

 変われなくても良いけど変わった方がもっと楽しくなれることを教えてくれたのは他でもないあの人たち。





「これとかどう?」

「蒼はさっきから誰の洋服を見てるの?」


 衣料品のあるフロアへ訪れいくつかのショップを巡るたびに蒼は私に意見を求める。全て女性ものの洋服に関して。


「誰って、遥稀のだろ?最初に話したじゃん。洋服も見てみるかって」

「え、自分のじゃないの?」

「いや、俺の服見てもつまらないだろ」


 そんなことはないと思うけど。さっきからチラチラと見られてるし。

 それにしても、自分が選ぶ想定を全くしてなくて普通に可愛いとか良いんじゃないとか言ってた。見るのは可愛いけど着るかどうかは別問題なんだけど。


「まあ、さっきから適当な返事しかしてない時点だ察してはいたけど」

「ご、ごめん、服は可愛いけど、さすがに私が着るのはちょっと...女の子らし過ぎて似合わないと思う」

「そうか?今着てるのとさほど変わらないと思うけど」

「まいみたいに可愛かったらいろんな色が似合うんだろうけどね」


 ショップから出てそんな話をする。

 確かに、パステルカラーのワンピースとか、フリルのついたスカートやブラウスは可愛いと思う。しかし、いかんせん、似合うかどうかはまた別問題な気がする。


「遥稀も似合うと思うけどな」

「お世辞をありがとう」

「お世辞じゃないって。優しい色の黄色とかピンクは似合いそうだなって思うし。お店の人も言ってただろ?もしかして、色が苦手だった?」

「苦手ではないけど、でも、その、着るには自信が足りないと申しますか...」

「何故に敬語...?」

「似合うかもしれないけど、着られるかもしれないけど、もしも着て似合わなかったり、きちんと着れてなかったら...って考えると少しだけ怖い...自信がないから」


 蒼は私の言葉に少し考える素振りをした。

 正直、こういった自信のつけ方は私にはわからない。他の、勉強とか習い事でやってることとかはひたすら繰り返して結果を見て、改善してを繰り返して自信をつけることができる。

 でも、ファッションや趣味に関することに自信を持つにはどうしたら良いのかがわからない。

 特に、容姿に関することなんて馬鹿にされることが多い。身長だって、本当は大きくなりたいし、俯きがちな自分をどうにかしたいと思っている。

 でも、繰り返し投げつけられる「チビ」や「ブス」の言葉に対してどう切り返して自信をつけたらいいのかが私にはわからない。

 家族は小さいけれど決して貶められるような容姿はしていないって言うし、まいだって、そんなことないって言ってくれる。

 でも、それは身内だから言ってくれてるだけに過ぎないと思うし、それに、


「俺はさ、遥稀のこと、カッコいいと思うよ」

「え、カッコいい?」

「前に大会見に行ったことあっただろ?その時に自信を持って堂々と演舞している姿はすごくカッコいいと思った」

「あ、ありがとう?」

「あいつらは酷い言葉を言ってくるけど、そんなの全部聞かなくていいと思う。だって、遥稀の悪口はあいつらしか言ってないから」

「で、でも、私が可愛くないのは事実なわけで、というか、普通の人間は面と向かって本人に悪口を言わない良識を兼ね備えているし」

「それ、あいつらは普通じゃないって暗に言ってるからな」


 しまった。そういうことを言いたいわけではないのに。

 勝手に慌てていると蒼は笑い出した。


「ふっ、ってか、そんなこと言えるくらいには元に戻って来たんだな...いいじゃん。遥稀のたまに毒づくところ、俺、結構好きだし」

「ば、馬鹿にしてる...」

「そんなことないって。でも、普通の人は面と向かって誰かれ構わず可愛いとも言わないんだよ。言うのは本当に好意を抱いているか、信頼しているか、素直な人間だけだろ。後はそれ以外の目的か。まあ、言わないと本人には伝わらないものでもあるけどな」

「蒼?」

「遥稀、本心かお世辞かわからない言葉でも良い言葉は素直に受け取っておいた方が良い。本心だった場合、相手の気持ちを無視することになるかもしれないだろ?」

「うん...」

「そんで、お世辞でも良い言葉を言われたらいやな気持ちにはならないじゃん?」

「まあ、うん」

「それなら、良い言葉は素直に受け取ろうぜ」

「...。ありがとう」


 まいも、私が否定すると少し辛そうな顔をしていた。きっと、言葉を無視されたと思ったからなのかな。


「それから、自信をつけるにはやっぱり、好きなものを身に着けることだろ」

「好きなもの?」

「おう。さっきの反応から好みに合いそうなものは大体わかった。今度はそれを見に行こうぜ」

「すごい観察眼をお持ちで」

「限定的だけどな」


 歩き出した蒼の後ろに続く。ここまで自信満々なら少しだけ気になる。

 今好きなものじゃなくても蒼が見つけてくれたものなら好きなものや気になるものになる気がする。

 不安とワクワクを握りしめながら私達は次のショップへと向かった。

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