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幸せの匂いを考えたことがある。というか定期的に考える。
幸せの温度は暖かくて心地いい。眠気を誘うそんな安心できるぬくもり。
幸せの味はミルクキャンディ。優しい甘さで静かに溶けていく。
それなら、匂いは?落ち着く匂いはきっと。
「遥稀はどう?参加したい?」
「あ、えっと、なにが?」
「クリスマスパーティーをしようって話。ほら、中学生活も最後だから。勉強の息抜きも兼ねてね」
「日にちが合ったら」
ぼんやりしすぎていたみたいだ。
とても楽しそうな声が聞こえる。ひとまずなおにダメな日にちは伝えておいた。大切な予定が入っている日。この日だけは絶対にダメ。
「何か大事な予定でもあるのか?」
「うん。オーケストラのクリスマスコンサートを見に行く予定」
「オーケストラ?」
「お母さんがチケット貰ったんだって。前にも行ったことあるけどすごかった」
「へぇ...。遥稀ってクラシックとかも好きなんだな」
「詳しくはないけど、結構好き。あと、演劇とかも」
私が話すと蒼は楽しそうに聞いてくれる。
「クリスマスとか冬休みは?予定あるの?」
「家でゆっくりするくらい、かな。あとは、ばあちゃんの家行ったり。勉強もしないとだし」
「そう、だよな」
「蒼は?」
「俺も似た感じかな。冬休みは短いし」
大体の人がそんな感じになると思う。うん。
そういえば、優弥は好きなこと出掛けるって言ってたっけ。寒い中出かけられるなんてもはや勇者レベルですごいと思う。
「遥稀?」
「ううん、なんでもない。あ...」
「ん?」
買ったばかりの本に挟まっていたイベントの告知情報。はがきは送るとして、ポップアップショップがあることを忘れていた。年明けに行くのは難しそうだし、ここは今年中に行かないと...。
「遥稀、クリスマスパーティーの日程決まったわよ。残念だけど、あんただけ日にちが合わないみたい」
「あ、うん」
「遥稀も参加できないのは、他の日にしても、」
「ちょうど会うのがこの日しかないの!早めがいいでしょ?」
「でも、」
「プレゼント交換、楽しみね。要くんと交換できたらいいな」
よし、この日ならなんとか行けそうだ。でも、1人で、行けるか...。?いや、変装したらギリ。
知り合いに会ってもどうにか逃げられるように導線も確保しないと。とりあえず家に帰ったら場所とグッズを確認して、それから、
「遥稀、そろそろ移動しないと遅れるぞ?」
「へ、あ、うん、ありがとう」
「何か考え込んでたけど大丈夫か?パーティー、遥稀が行かないなら俺も、」
「あ、全然気にしてないよ。楽しんできたら?」
「え、いや、遥稀だけ仲間外れってそんなの、」
「本当に気にしてない。軍資金が増えただけだから」
「軍資金...?」
「うん」
蒼はさっきの会話で私がショックを受けているのではないかと心配をしてくれていたようだ。まったく気にしてないのに。
むしろ、遊びに行かないことで買い物に使えるお金が増えたからプラスになったとまで言える。
あ...でも、蒼やまいには何かプレゼントを用意した方が良いのかもしれない。いつも助けてもらっているお礼も兼ねて。
でも、蒼の好みはわからない...。
「遥稀?」
「蒼、あの、来週の土曜日って空いてる?」
「え、あ、えっと?」
「買い物、付き合ってほしい。まいにクリスマスプレゼントあげたいから選ぶの手伝ってほしい」
「あ、まいの、プレゼント選び...それなら、女子を誘った方が良いんじゃないか?」
「あ、いや、蒼のも選びたくて、ごめん、予定があったなら、無理にとは、」
「え?俺の!?」
「う、うん。いつもお世話になってるから。でも、蒼の好きなものわかんないし、どうせなら好きなものの方が良いかなって」
「ちょうど空いてるから行くか」
蒼は頬を掻きながら言った。
ついでにポップアップショップに寄ってもいいか確認をすると快く了承を貰えた。
まいには何を贈ろう。たくさんの感謝と友愛を込めて。久しぶりに家族以外の誰かと出かけるのが楽しみで私は少しだけ笑った。...なんてらしくないのかもしれない。




