13
弱い所は見られたくない。強くてかっこいい自分でありたい。
それは昔から思っていたことだった。でも、強い自分もカッコいい自分も本当はいなくてその事実と無力さにいつもがっかりする。
あの子みたいに強くてカッコよくなれたらいいのに。
「ほら、これで目を冷やせよ」
蒼はいつの間にか氷嚢を貰いに行っていたらしい。ハンカチに包んで渡してくれた。
「泣いたら少しはスッキリしたか?」
「ん、お見苦しいところをお見せしました」
「いや、そんなことないって。俺こそ、隣の席なのに何もできなくてごめん」
「そんなこと、」
「本当にその通りよ!こんなに泣いちゃうくらい辛かったなんて...。でも、これからはハルのことお願いね。私はクラスが違うからできることが限られてきちゃうし...」
「わかってる。でも、それならなおにも協力してもらった方が、」
「なおはダメ」
私が力なく呟くと2人は驚いた顔をした。
「どうして?ハル、仲良かったでしょ?」
「さくらと、私で、板挟みになったら、なおが困っちゃうから、だから、」
「ハル、ハルが優しいのはわかってるよ。でもね、今1番優先すべきなのはハルのことなのよ?なおもハルのこと心配してた。だって、ハルのことを私に聞きに来てたくらいだもん」
「なおが?」
「うん。だから、少しだけ迷惑かけてみよう?」
まいはそう言ってくれたけど少しだけ怖った。
頼ったら嫌われて離れてしまうのではないかって。
蒼はそんな私を見て慰めるように言った。
「まあ、それはゆっくりで良いんじゃないか?クラスの女子との関係が悪いかって言われたらそうでもないしそれとなく他のやつにSOS出せば」
「...そうね。それとなく伝えてみるわ」
「2人とも、ありがとう...」
「これくらい良いって。勉強で世話になってるし」
「そうよ、友達なんだから。それに、私が困ってた時はハルが助けてくれたでしょ?」
「うん、だって、まいは大好きな友達だから」
「それは私も。だから、大丈夫、昔2人でよく話したじゃない?私とハルは最高で最強のライバルで友達だって」
小さい頃話した何気ない言葉を覚えていてくれたのが嬉しかった。私が前を向いてこられたのはまいが手を引いて明るいところを教えてくれたから。
まいだけでも強いけど、私も一緒だともっと強いって言っていた。やっぱり、まいはカッコよくてすごく眩しい。
「それじゃあ、帰ろっか。蒼くん、ハルのこと送ってね。私はこれから習い事があるから」
「逆方向だからいいよ。1人で帰れる」
「ダメよ。もう暗いんだから何かあったらどうするの?」
「それは、まいの方が、」
「とにかくダメ。蒼くん、頼んだわよ」
「了解。遥稀、行こう」
「え...」
結局押し切られる形で送ってもらうことになってしまった...。申し訳ない...。
体の節々が少し痛む。主に頭と手が。自業自得と言われればそれまでなんだけど。それに、カバンも取り上げられてしまった。普通に持てるのに。
「やっぱり、頭痛むか?」
「え、あ、うん。少しだけ」
「急に何かをつぶやいたと思ったら急に頭を殴り出すから驚いた」
「ご心配をおかけしました...」
「すぐに止めるのは難しいと思うけど、あまりやるなよ?それこそ大きなけがに繋がったら怖いし」
「仰る通りにございます...」
「あ、そこまできつく言いたいわけじゃなくて、その、あんまり気負い過ぎるなよってことで、えっと、俺が近くにいるときはガードできるようにするから」
「うん、ありがとう」
蒼も優しい人だと思う。逆方向なのにわざわざ送ってくれるし、氷嚢まで取って来てくれた。
ハンカチまでお借りしてカバンまで持ってくれてるのはさすがに申し訳ないど...。
「まいみたいに安心させる事は出来ないけど俺のことも遠慮せずに頼ってほしい」
「けっこう、頼ってる」
私が言うと蒼は目をパチパチと瞬かせて笑った。そして、ぐしゃぐしゃと私の頭を撫でる。
「じゃあ、今以上に。遥稀が潰れないように、これ以上辛くならないために。約束な」
嬉しさをにじませて笑う蒼は今までにないくらい爽やかで不覚にもカッコいいと思った。まいには敵わないけど。
その数日後、まいのお母さんを通じて私の学校での様子が私のお母さんへと伝わった。私の知らないところで担任の先生とも面談が行われたらしく、これ以上酷いことにはならないようにすると言われたと言っていた。
学校側としてはあまり大事にはしたくないらしい。それは、私達が受験生で私がどうにか学校に通うことができているのが要因だと言われた。
お母さんは言い分は理解できるけど、納得はできない様子だった。




