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学年が上がるごとに遥稀は社交性というものを身に着けたらしくそれ以降は特に大きな問題(まいの一件はあったものの)はなく中学へと進学することになった。小学校最後の方は再び、遥稀の逆鱗に触れる猛者も現れたが、どうにかあしらい解決するに至った。
成長なのか、解放なのかはわからないが、結果的に一部から異常に恐れられる存在へとなってしまった。
本人が気にしていないのならば良いのかもしれないが。いや、話を聞いた時には若干へこんでたな。
「要、また同じクラスなんだね」
「オレと同じクラスはそんなに嫌か?」
「美波と同じクラスが良かった」
美波ともケンカすることなくずっと仲の良い関係を築いているらしい。
世話焼きの美波と結構抜けていて、庇護欲をそそられる遥稀は相性が良いらしい。姉妹のような母娘のような会話や様子を垣間見ることが何度もあった。
「だって、要と同じクラスって代わり映えしないし」
「そんなこと言ったってな、誰が誰となるとわからんし文句を言うな。小学生に間違えられるぞ」
「な、誰が小学生だ、ひどい、身長だって2センチも伸びたのに」
それは誤差の範囲では?いや、言ったらキレられる。
「まあ、制服着てるから間違えられることはないだろ」
「それはそれで複雑な気分」
少し大きめの制服の裾を握りながら遥稀はつぶやいた。今後の成長を見越して制服業者のおばちゃんが大きめにしたらしいが、果たして意味があるのか。
スカートの丈は長めだし、セーラーシャツも袖の部分が幾分か大きいように見える。
「スカート、慣れない」
「そういや、お前ほとんどズボンだったよな」
「だって、そっちの方が動きやすかったし。スカートって夏は暑いし冬は寒いんだよ」
「夏は風が通るから涼しいんじゃねーの?」
「夏用のスカートだったらそうかもしれないけど、夏冬兼用だから生地が丈夫で厚めなんだよ。中が透けるのも防止するためもあるだろうけど」
そこから、遥稀はいかにスカートに対して不満があるかをつらつらと話し始めた。
「話が長い。結論から話せ」
「かわいい子が着てたらすごく良いと思う」
随分と論点がずれたが、長話を続けるのは面倒なのでオレは何も言わない。満足げに頷いているから放置することにする。
コミュ力というか、議論力がおかしな方向へ成長してしまった感は否めないが、これも個性なのだろう。考えることに対して前向きに取り組もうとしているのは良い兆候だ。
「はーい席に着いて。HRを始めます」
担任の声掛けにより、教室の騒がしさが止んだ。
前の方からいくつかのプリントが回されそれらに適当に目を通していく。部活動一覧に仮入部届、委員会希望調査、学力テストの案内。どれも初めて見るものばかりだった。
「部活動の見学は今日の放課後から一週間、興味のある所にそれぞれ見学に行ってくださいね。それと、明後日には学力テストが行われます。一部結果は貼り出されるので手を抜かずに取り組んでください。それから、」
担任の話を適当に聞き流しながらオレは委員会希望調査の紙をぼんやりと眺めていた。
できるだけ楽できるところが良い。
「要は委員会どこに希望出すの?」
休み時間、遥稀はふいにオレに投げかけた。
「楽そうなところ。お前は?」
「図書委員会。新刊情報がすぐに入るらしい」
らしいと言えばらしい選択か。それにしても大抵の人間は知り合いや仲いいやつに希望を聞いてから選択するのが多いのに、即決とは。
社交性を身に着けても根元の部分が変わっていない様子にオレは少し安心した。
「だけど、図書委員はなかなか倍率高いかもな」
「なんで?」
「ほら、あそこ」
オレが指さした方向には1人の男子生徒がいた。意図を理解できないらしい遥稀は首をかしげている。そして、オレに視線を向けた。
「お前な、他人に無頓着過ぎないか?」
「む、無頓着というか、まだ顔と名前をきちんと覚えきれていないだけだから。それで、なんで倍率が高いの?」
女子ならば同学年の人気の男子について噂を聞いたり盛り上がったりすると思っていたがどうやら例外だったらしい。
「な、なんで可哀そうなものを見る目をしてるの?」
「いや、流行とかに疎そうだと思ってな」
「ひ、ひどい」
男のオレでさえ、「早緑蒼」の噂はたびたび耳にしていた。学校説明会の時から注目を集めていたし、むしろ知らない人の方が少ないと思う。
いや、こいつは美波やまいとニコニコ話していてそもそも眼中になかったな。
「それで、理由を早く教えて。私図書委員が良い。たくさん本読むって決めたの」
「図書委員にならなくても本はたくさん読めるだろ」
「それは、確かに…え、倍率高いなら別の所に変えようかな」
なろうがならまいが図書館に頻繁に通う様子は容易に想像できる。「早緑蒼」の話には関心がないらしくすぐに次の候補について考え始めてしまった。
だが、結局第一希望を図書に決めたらしい。
オレはどこにしようか。活動が極端に少ない委員会は…。
視界の端で「早緑蒼」がため息を吐いたのが見えた。
イケメンというものは思っているよりも大変なのかもしれない。




