第33話 想像通りの正体
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内部にサンクチュアリーの協力者がいるとわかったところで,僕達が出来ることは特に無い。
取り敢えず,先程感じた気配を追うのを優先した方が良いだろう。
黒い笑みで子供達を怖がらせているダークリリーを一旦視界から外して,僕はヒロ君の方を向く。
「……どっちの方向に行ったか,わかるか?」
ヒロ君もやはり気配に気付いていたのか,少し声を潜めてそう問うた。
「一応。……宮殿の方に気配がある」
「えっ……!?」
僕がそっと宮殿の方を指差すと,聞き耳を立てていたリベが驚いたように声を上げる。
ハッとしたように口元を抑えてから,衝撃を逃がすように何度か瞬いた。
「……不味くない?」
「いや,宮殿は大丈夫だと思うけど……」
騎士団やそれを束ねる大陸最強が居るので,宮殿は確実に安全だろう。
本当に心配なのは,宮殿そのものではない。
「……宮殿までの道で,何かやる可能性があるってことか」
ヒロ君の表情が険しくなる。
人通りも多いこの道で暴れられたりすると,最悪の事態も有り得るのだ。
「早く追いかけた方が良い……?」
「そうだろうね」
硬い表情でそう呟くリベに頷いていから,気配がある方を見る。
気配は一つで,今僕達がいる場所からそう遠くない,宮殿の近くの屋根の上で止まっていた。
何かを見ているのか,或いは何かを待っているのか。
「あっちに行けば良いの?」
悪餓鬼集団を涙目にさせるくらい言い負かしたリリーが会話に混ざる。
リベが頷くと,リリーは跳躍の姿勢をとった。
「あー……じゃあ,全員で行__」
僕が言葉を最後まで言い終える前に,大きな破砕音が響く。
驚いて音のした方を見ると,砂埃が舞い,建物の一部が飛び上がっているのが見えた。
しかもそれは,気配が居た場所。
「……何かを爆発させた?」
「急ごっか」
リリーが真顔になって飛び出した。
僕達は顔を見合わせてから,あとに続く。
後ろで,一連の流れを見ていた人達がざわつき出すのがわかった。
「……これはヤバイね」
爆発した所に辿り着いて,僕は思わず呟く。
遠目ではよくわからなかったが,小さめの爆発が連続して起きており,そこそこの被害になっていた。
何度もすれ違ったので察してはいたが,この辺りにいた人は皆逃げたらしい。
だが,例の気配は未だこの辺りにいる。
もう視認出来るほど近くに居るはずだが,周囲を見回してもそれらしい人影はない。
「……フレイム,あれ」
不意に,ヒロ君が一方を指差した。
爆ぜる砂埃で上手く隠れている屋根の上に,一つの影がある。
「……サンクチュアリー,だろうね」
僕の声に,リベが眉を顰めて杖を取り出した。
軽く振って,音の刃を飛ばす。
「あ……!?」
リベが驚いたように声を漏らした。
それこそ音速で飛んで行った刃は,相手に届く前に一瞬で跡形もなく消え去る。
影は微動だにしていない。
ヒロ君は僕達と軽く視線を合わせてから,拳を構えて地を蹴り,影に肉薄する。
すると,拳がぶつかる寸前,影は立っていた屋根を飛び降りた。
「え__?」
影は,それを見つめていた僕達の方に飛んで来る。
僕達が反応するより速く,影は迷わずリベに襲いかかった。
「リベ姉!!」
青褪めたリリーが,杖を振って出現させた巨大な鋸を叩きつける。
すると,影は咄嗟に身を翻して僕達の後ろに立った。
「__あー,残念。欲しかったんだけどな」
赤い砂埃に紛れて,若い青年の声が響く。
警戒態勢を取った僕達に,その青年は暗く笑った。
「聞いたよ。俺達専用の冒険者って,お前等だよね? 宜しくー」
軽いノリで手を振る青年に,僕は訝しむような目を向ける。
(……サンクチュアリーなのは確定だね。でも,かなり強いな)
経験則だが,四天王アゼリアには届かないものの,かなりの実力者に見えた。
「……お前はサンクチュアリーなのか?」
ヒロ君が確認するように問うと,青年は人当たりの良い笑みを浮かべて頷く。
「勿論。俺はラオネール。名前だけでも覚えて帰ってくれ。……まぁ,帰れるかどうかは別として,だけどな」
口の端を上げた瞬間,青年__ラオネールの姿が消えた。
「……!」
真横を通り過ぎる気配を感じて振り返ると,背後に移動しているラオネールがいる。
「これ,良いな。俺にくれない?」
その手には,リベの杖が握られていた。
「は……!?」
驚いたように叫ぶリベの横から,リリーがラオネールに飛びかかる。
「おっと」
シャボン玉のような光に紛れたリリーが杖を奪い返して,僕達の横に戻った。
ラオネールは大して気にした様子もなく,手を軽く振って僕達の方に視線を向ける。
「んー……。もうちょい遊びたいんだけど,そうも言ってられないんだよなー」
「……どういう意味だ?」
ヒロ君が拳に魔力を込めながら問うと,ラオネールは笑みを深めた。
「何て言うんだろうな? ……今回の目的はお前等だけじゃないんだよね」
「……真逆」
思わず呟くと,リベ達の困惑気味な視線を感じる。
僕が考えたことを理解したのか,ラオネールが暗く嗤った。
「そういうわけだから,邪魔はするなよ?」
そう言うや否や,軽く飛んで屋根の上に降り立つ。
「……何するつもりなんだろ」
リリーが険しい目でラオネールを睨んだ。
「……野次馬を避難させた方が良いかも」
僕は自分の声が震えているのを自覚しつつ,小さくそう零す。
視線を巡らせれば,街の住人や先程の悪餓鬼集団,騎士達やローブを纏った人物が見えた。
(……え? いや,何で?)
ローブを纏った人物は此方の視線に気付いたのか,慌てたように身を翻す。
(……あー,駄目だ。凄く嫌な予感がする)
勘が良い事は,必ずしも善ではない。
それを身を以て知る時が,訪れようとしていた。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:新キャラの容姿が全く語られていませんね……!?
設定資料を探してるとかでは無いですよ? 無いですから。




