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第32話 内通者の影

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 僕達のパーティー名が決まったことで,正式に対サンクチュアリー冒険者として認められた。

 ただ,そのまますんなり終わらないのが主人公の物語である。

 皇帝の前を辞そうとした時,扉が乱暴に開かれた。

 酷く慌てた様子の騎士が,一言断ってから足早にアスセーラさんの方に向かっている。

「……何かあったのかな」

「多分な」

 普通,客がいる謁見の間に飛び込んできたりしないだろう。

 余程何か問題が起こったのだろうか。

 そこまで近くないので会話は聞こえないが,アスセーラさんは報告を聞いて眉を寄せていた。


「……どうされたんですか?」

 一応聞いてみると,意外にもアスセーラさんが僕達に話し始める。

「この皇帝直轄領インペラーゼにサンクチュアリーの疑いがある人物が目撃されたそうです。……君達は,ヴェレーノという組織をご存知ですか?」

『ヴェレーノ』という言葉に,リリーとリベが反応した。

 少し考えてから,僕はヒロ君と顔を見合わせる。

「あ,知ってます。最近その構成員を名乗る人達と戦ったので」

 何か凄く柄の悪い青年三人組が,自身達のことを「ヴェレーノ傘下のイレックス」と言っていたのを思い出した。

 多分下っ端中の下っ端だが,多分その組織の一員ではあるだろう。

 僕の答えに,アスセーラさんは何とも言えない表情を浮かべた。

「えーと……倒したら駄目だった系ですか?」

 リベが少し眉をひそめて問うと,アスセーラさんは慌てたように否定する。

「そういうわけではないんです。ただ……彼等はどうやら,サンクチュアリーと繋がっていたようで」

(……この大陸の腐敗は全て,サンクチュアリーに繋がってたりしない?)

 何となく目の生気が失せかけた。

 大陸全土に蔓延るという言葉には,そういう意味もあるのかもしれない。

 ただ,前に戦ったサンクチュアリー幹部のアゼリアとかは,あんな下っ端と一緒にされたくないタイプな気がする。

 アニメの方でもサンクチュアリー幹部は大して登場していないので,どのような組織なのかはいまいちわからない。


「……つまり,ヴェレーノ? の仲間がオレ達に倒されたから,報復に来たってことですか?」

 ヒロ君が要約すると,アスセーラさんは同意するように頷く。

「……暇なの?」

 リリーがぽつりと零した言葉に,意図せず苦笑が漏れた。

 アスセーラさんもリリーの気持ちがわかるのか,曖昧な笑みを浮かべている。

「まぁ……多分君達が公認の対サンクチュアリー冒険者になったことを知って,早々に粛清したいと思ったのでしょうね」

「え? 何でバレてるんですか?」

 それは,たった今認められたことだ。

 確かにそういう動きは皇帝直轄領インペラーゼであったと思うが,感知されるのが少し早いと思う。

 そういう意図を込めて問うと,アスセーラさんの代わりにアンリエットさんが答えた。

「最近わかったのですが,どうやら此処にはサンクチュアリーのスパイがいるみたいなんです。なので,情報が漏れているんですよね」

「それは大丈夫なんですか!?」

 リベが悲鳴のような声を上げ,リリーが驚いたように目を丸くする。

 皇族の皆さんも,その反応は最もだと言うように頷いていた。

「勿論大丈夫ではありませんよ。ですが,全く気配を掴めないので……とりあえず警備の強化に留めているのです」

(……成る程,とはならないよ!?)

 それでは,何か起こってから手遅れになる可能性が高いのではないか。

 困惑しつつ,別に何とかなるから と言いたげな視線に従うことにした。


「それで……僕達はどうすれば良いんでしょうか」

 僕が問うと,アスセーラさんが皇帝と一瞬視線で会話してから口を開く。

「……折角なので,初任務として,現れたサンクチュアリーを排除してきて下さい」

「排除……?」

 咄嗟にリベが聞き返すと,アスセーラさんが僅かに含みのある笑みを浮かべた。

「処分ではないですよ。とっ捕まえて連れてきて欲しいんです」

「第一はこの街の安全ですからね!?」

 アンリエットさんが慌てたように訂正する。

 それに苦笑しつつ,僕達は顔を見合わせてから頷いた。

「わかりました。その任務,責任持って受けさせて頂きます」


「えーと……この辺?」

「地図逆ですけど」

 謁見の間を出て,僕達は騎士に渡された地図を見る。

 サンクチュアリーの疑いがある人物が目撃されたという場所に印がつけられており,それは宮殿からそう遠くない街中だった。

「……既に騒ぎになってそうだね」

「これオレ達が通ってきた道だな……」

 僕達が歩いてきた長い道の途中に印がある。

 此処は人通りが多かったので,既に大騒ぎになっているかもしれない。

「……とりあえず,行ってみよっか」

 そう言いながら,リリーが跳躍する。

 バネのように高く飛んで,連なった屋根の上を駆け出した。

「……何あれ」

「初めてみたんですけど?」

 リベが,本気で混乱したような声で呟く。


「……この辺だね」

 印がついている所に辿り着いて,僕達は周囲を見回した。

 若干人々の流れが慌ただしいが,怪しい人物は特に見えない。

「あー! 怪しい奴等がいるぞ!」

 突然,背後からそんな声をかけられた。

 振り返ると,そこそこ仕立ての良い服を着た少年が三人立っていて,こちらを指差している。

「……?」

 首を傾げていると,先程叫んでいた少年その一が更に言葉を続けた。

「母様が言っていた怪しい奴だな! 大人しくしろ!」

「そうだそうだ!」

 ふふん,と胸を張ってそう言い切った少年その一に,二人の少年が追従する。

(……典型的な悪餓鬼集団? 面倒だなぁ)

 僕は若干呆れに近い苦笑が漏れるだけだったが,三人は少し違ったようだ。

「へー……? 怪しい奴等のこと知ってるの? 悪い子じゃないならお姉ちゃんに教えてほしいなぁ」

「は!? 何言ってんだよ,怪しいのはお前達だろ!」

「そうだそうだ!」

 リリーが仄暗い笑みを浮かべて歪に笑う。

 正直めちゃくちゃ怖い。

「……リリーの地雷踏んでる,この子達」

 リベがボソッと呟くが,止める気はないようだ。

「あー……リリー? 暴力と魔力は使うなよ?」

 ヒロ君が控えめにそう言うと,リリーは振り返って,普段通りの笑みを浮かべる。

「え? 大丈夫だよ? ……わからないと,痛い目見るってことを教えてあげるだけ」

(……わぁお。ダークリリー)

 勝手に名称を付けつつ,動向を見守ることにした。

「ひっ……やっぱり怪しい! 暴力とか言ってるぞ!」

「そうだそうだ! 怪しいぞ!」

 ずっと賛同しかしていない少年その二が初めて言葉を続けたなぁ,とか思いつつ,ふと視線を感じて周囲を見回す。

 周囲を通る人々は急いでいるのか,それともよくあることで気にしていないのか,此方に気を向ける様子はない。

 視線を感じるのは,上から。

 屋根の上に,一瞬だけ気配を感じた。

 それをヒロ君に言おうとしたが,少年の声に掻き消される。

「こ,これ以上怪しいことをするなら,騎士様を呼ぶぞ! ()()()()()()()()()()()()()()()んだからな!」

「__!」

 少年その一の言葉に,僕はヒロ君と顔を見合わせた。


 僕達がこの街に入るために騎士に色々と尋ねられたように,ここの警備レベルはかなり高い。

 何せ,この国で最も権力を持つ皇族の住まいに繋がっているのだから。

 そんな分厚い警備を潜り抜けて,相手は既にこの街に入っている。


(……確定だね。内部にサンクチュアリーの協力者が居る)



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:未だにダークリリーがツボです。これまた登場させたいですね。

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