第28話【ヒロイズム視点】友であり 頼れる仲間であり
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今,何が起こった?
オレは静かに引いていく炎の波を見もせずに,広間の中央を見ていた。
リリーもリベも,唖然としている。
多分,オレも同じ表情になっていた。
オレ達は今,大陸最強の人物と戦っている。
対サンクチュアリー冒険者__つまり,自分達の望みを叶えるために。
フレイムが何やら交渉? して,実力を示すことになった。
何故大陸最強が出てくるのかはわからないが,オレは深く考えない癖がついている。
不可解なことには首を突っ込むな。
クラージュ家の鉄則だ。
それはともかく,本当に不可解なことが今目の前で起こっている。
フレイムが,信じられない規模の広範囲魔法を使用した。
そこまでは許容範囲である。フレイムならやりかねない。
それは呆れであり,困惑であり,同時に信頼でもある。
ただそれも,大陸最強__アスセーラという女性には意味をなさなかった。
彼女は炎の中を悠然と進む。
オレは勿論焦ったし,リリー達も驚愕していた。
あんな大技をかましたフレイムは,多分魔力が殆ど残っていない。
死角から自分を狙うアスセーラさんに太刀打ちするのは不可能ではないか。
オレは,本当にそう思っていた。
そしてそれは,見事に覆される。
オレの頭上には光を受けて輝く,レイピアが舞っていた。
それを掴もうとした細い腕を,咄嗟に止める。
澄んだ金属質の音が響いた。
「……ははっ」
驚いたようなアスセーラさんの表情が,徐々に笑みに変わっていく。
その場に座り込んだ彼女の口から,乾いた声が漏れた。
そして,貴族女性らしくない満面の笑みを浮かべる。
「凄い! 君達,本当に凄いね! 予想以上だよ!」
明るくそう述べ,正面にいたフレイムの手を掴んで上下に振った。
フレイムは「腕椀げる」みたいな顔をしつつ,「それは良かったです」と返している。
「……フレイムって,剣単体でも戦えるんだな」
「確かに。ずっと魔法を使用するための物だと思ってた……」
炎が引いたことで地上に降りてきたリベ達とそう言葉を交わした。
リリーはよくわかっていないのか,楽しそうな目でフレイム達を見ている。
「……気を取り直して。この勝負,君達の価値を認めましょう」
不意に態度と口調を改めて,アスセーラさんが優雅に笑んだ。
そして皇帝一族の方を見る。
視線を受けた皇帝陛下は,視線を下げて沈黙していた。
それから少し経って,軽く頷く。
「正直な所,其方等に騎士団長と渡り合うなど不可能だと思っていた。我の予想を覆しただけ,充分と言えよう」
その言葉を聞いた瞬間,胸の内に溢れんばかりの感情が渦巻いた。
自分が認められた喜びと,ようやく大義名分と共に家族の仇を討てる感動。
自然と笑みが浮かぶのを堪えて,皇帝陛下に感謝の意を伝える。
「なるべく早く,サンクチュアリーについての情報を伝えたい。明日には都合をつけよう。今日は此処に泊まっていくと良い」
ふと思い出したように,皇帝陛下がそう告げた。
この後も忙しいのか,彼はそのまま席を立って広間を出ていく。
後ろに控えていた二人とアスセーラさんもそれに続いて行った。
その場に残っているのはオレ達四人と,皇妃様と皇子殿下のみ。
「改めて,勝利を祝います。私はオーロラ。第二十代皇妃です」
“第二十代皇妃”。
この言葉の本当の意味は,ほんの一部の貴族しか知らない。
オレは一人で旅をしている間に漏れ聞いたので,何となく知っている。
オーロラ皇妃は穏やかそうな笑みを浮かべたまま,静かに続けた。
「その歳であのサンクチュアリーと渡り合うことはきっと困難でしょう。私には応援することしか出来ませんが……」
「皇妃様の応援とは……非常に心強く感じます」
少し微妙な表情になった皇妃様に,フレイムが柔らかく微笑んで答える。
短い間とはいえ貴族の家に生まれたオレには,それが社交的な表面上のものだとわかった。
(……フレイムって社交慣れしてるのか?)
今までそんな印象はあまりなかったが,フレイムはオレより高位の貴族である。
いつもの気さくで朗らかなフレイムの方が,偽りなのかもしれない。
そう思うと,何故か少し怖くなった。
「ところで……一つ,お尋ねしても?」
不意にフレイムがそう言って,視線を皇妃様から隣に立つ皇子殿下に移す。
皇子殿下は,父である皇帝陛下譲りであろう東雲色の瞳に,困惑を浮かべていた。
(……ん?)
その目と雰囲気は,何処か見覚えがある。
どうやら人を覚えるのが得意らしいフレイムが,胡散臭いまでに良い笑顔になっていた。
「……アリーがどうしたの?」
皇妃様がフレイムの笑みを見て,何度か瞬く。
それを聞いて,フレイムは「アリー……じゃああれかな……?」と呟いた。
「……いえ,正直な所,とても驚きまして」
フレイムが胡散臭い笑みのままそう続けると,皇子殿下の表情が僅かに引き攣る。
その表情は,物凄く見覚えがあった。
それを見て,フレイムの笑みが確信を帯びる。
「……初めまして,という事にしておきますね? セアリアス殿下」
脳内に,青いローブを纏った東雲色の瞳の少年が思い浮かんだ。
皇帝直轄領に住んでいるという,嘘でも本当でもない言葉と,自分の身分を隠すような態度。
終始違和感の塊でしかなかったあの人物は,確かに目の前の少年と酷似していた。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:久しく書いていなかった他者視点です!
ヒロ君からするとフレイムも,彼並みに違和感の塊なんですよね。




