第26話 応戦開始
誤字,脱字報告受け付けております。
見つけた際は遠慮なく報告して頂けると幸いです。
感想,レビュー等大歓迎です。
ブックマークも是非お願い致します。
僕の表情が,纏う雰囲気が変わったことに気付いたのか,皇帝が興味を持ったように視線を向けた。
その東雲色の瞳を正面から見つめ返して,僕は笑みを深める。
「僕達の実力を知らない……故に認められない。そう仰っていましたね?」
僕が徐ろにそう告げると,その場にいる全員の視線を感じた。
横と後ろからは期待を,前方からは困惑を,正面からは好奇を向けられる。
これだけで,発言権は僕に渡った。
「なら,証明することは可能ですよね?」
あえて断定すると,皇帝の瞳が細められる。
ついでに,彼の周囲に立つ三人の内の神経質そうな,文官と思われる男性が射抜くように睨んできた。
無礼だと言いたいのだろうが,主である皇帝に何も言われていない以上,口を挟むことが出来ないのだろう。
僕はそれを見越して,少し口角を上げる。
所謂挑発的な笑みを浮かべ,言葉を続けた。
「僕達が,実際に陛下に強さを証明します。そして,実力を認めて頂きましょう」
「……成る程。だが,どうやって?」
愉しげに揺れる瞳を見るに,僕の言葉は彼の想像の範疇を超えていないのかも知れない。
それには気付かなかったふりをして,思わせ振りな態度で視線を巡らせた。
「……あの方,強いですよね?」
唐突にそう口にして,前方を手で示す。
それにつられた視線を受けたその人物は,まだ若いように見える女性だった。
藤色のストレートの髪の一見典雅な淑女は,小さく首を傾げてみせる。
その装束は普通の貴族服に見えるが,明らかに戦闘用に改造されている物だ。
しかも纏う覇気はどう考えても,か弱い令嬢のものではない。
というか,歴戦の戦士のそれだった。
流石に隠し通すのは無理があるし,そもそも隠す気がないだろう。
なのであえて指摘してみせると,彼女と違い,周囲は驚いたような反応を見せる。
「……まず,隠す気がないですよね?」
下手に出ないように気をつけながら,呆れたような声音を作ってそう続けた。
するとその女性は,困惑気味な表情を消す。
そして,口元に笑みを浮かべた。
「隠す気はあったのだけど……。まさかこんな子供に見抜かれるとは」
可笑しそうにそう述べ,その女性は皇帝に一言断ってから,少し高くなっていた段を降りる。
僕達の所に歩み寄り,軽く礼をした。
「私はアスセーラ・カヴァリアンジュ。大陸騎士団の団長を務めています」
(……あ,結構凄い人だった)
思わず内心吹き出しそうになる。
大陸騎士団。
この大陸を知っていれば,それこそアニメを見ているだけでも知っている有名な存在だ。
その名の通り大陸最強の騎士団であり,皇帝直属の組織でもある。
各地に騎士団を持つ国はあるが,その者達とは比にならない。
大陸各地から武に秀でた者や,騎士の家系の者を集め,厳しい基準で選別している。
そして残った者達は豊富な実戦経験と鍛錬を積み,その時代の最強の名を手にするのだ。
しかし,本当に別格なのは,そんな強者揃いの騎士団を束ねる者である。
まだ若いにも関わらず,特殊魔術【暴力】を持つ者が数十人集っている犯罪組織を一人で壊滅させたり,国一つ丸ごと焦土にした魔獣を討伐したりと,かなりレベルが違う武勇伝を残しているらしい。
アニメの方では名前が出てきただけだったが,女性であることは知っていた。
まさかこんな,一見可憐な淑女だとは思わなかったが。
(……個人的に,何でサンクチュアリーの相手をしないのか疑問ではあるけどね)
わざわざ専用の冒険者を探さなくても,強さは彼等だけで十分だと思う。
上の事情はわからないし,わかりたくもないが。
「……簡単ではありますが,私は自分の実力を隠蔽していました。それを見抜いただけで,彼にはそこそこの実力があるでしょう」
アスセーラさんは皇帝の方に振り返って,そう述べた。
その言葉に含まれる意図を悟って,僕は困惑と同時に僅かな憤りを感じる。
「対サンクチュアリー冒険者になることを望んでいるのは僕だけではありません。四人で,貴女に挑ませてください」
僕がすかさずそう割り込むと,皇帝は少し考えるように視線を伏せた。
一瞬アスセーラさんが不満げな表情をしたが,不満なのは此方である。
(……何で僕を見学させようとするかな)
戦闘を望んでいるというわけではないが,僕だってこのパーティーのメンバーだという自覚があるのだ。
あと純粋に,この世界上位の実力を持つ彼女と戦ってみたい。
戦闘を望んでいるというわけではないが。
「……良かろう。其方等が大陸最強の団長に挑むことを許す」
何を思ったのか,皇帝は軽く頷いてそう言った。
「其方等」ということは,僕達四人に権利があるということだろう。
隣でヒロ君が嬉しそうな表情になるのがわかった。
リリー達も明るい表情を浮かべている。
(……大陸最強に挑むっていうのに,楽しそうだね)
苦笑しつつ,そんな事を考えた。
呆れよりも,そんな仲間を持てて嬉しいという気持ちの方が強い。
何もかも,昔の自分とは違うのだ。
「では,闘技場に移動しましょうか」
皇帝の了承を得たことで,主導権を握ったアスセーラさんが扉を示す。
僕達が立ち上がって彼女について行くと,後ろから皇族三人と,その周囲に控えていた人達も着いてきた。
進んできた廊下を戻り,少しした所でアスセーラさんが一つの扉を開ける。
【闘技場】と書かれた扉の先は,何の偽りもない戦闘用の空間だった。
大小様々な傷がついた大理石の広間は,普段は騎士の鍛錬に使われているのかも知れない。
皇族と控えている二人は少し離れた所に下がり,傍観者の位置に着く。
僕達はアスセーラさんと,広間の中央に立った。
「ルールは特に決めません。特殊魔術の使用は可能。私が戦闘不能になれば,必然的に貴方達の勝利です」
この場合,戦闘不能というのは彼女の武器を落とすだけでも良いのだろう。
魔力で生み出したレイピアを構えるアスセーラさんを見て,僕はそう判断する。
「……やれる?」
揃いの杖を構えて並んだリリーとリベ,そして横に立ったヒロ君に問うた。
僕自身は愛用の元木刀,炎剣を構えている。
微塵の隙も感じさせないアスセーラさんの方を見る三人は,当然というように頷いた。
「勝てない勝負はしない主義だから安心して」
「ここで勝たなきゃ,ここまで来た意味がないし」
「とりあえずいつも通り,頑張ろーよ」
三者三様の答えが帰ってきた。
(……ラスボス戦じゃないんだから)
僕は小さく笑って,視線を正面に戻す。
審判の騎士の合図とともに,僕等の行く末を決める試合が始まった。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:凄い……あの光留が主人公してる……。
最近一話から見返したので,それ関連のネタが色々入っています。




