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第25話 上に立つ者

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感想,レビュー等大歓迎です。

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「あー……。お二人はあの『イレックス』に遭遇したんですね」


 ヒロ君が愚痴混じりにリアスさんを探していたことを述べると,彼は困ったように苦笑を浮かべる。

「……まぁ,彼等も根は良い人ですし,大丈夫ですよ。多分」

 何処からそんな言葉が出てくるのかよくわからないが,この人に関しては考えない方が良い。

 何度も同じ結論を出しながら,僕は話を聞いていた。


「……ところで,リアスさんはこれからどうするんです?」

 不意に思い出したように,リベがそう言って首を傾げる。

「そうですね。もう用事は終わりましたし……時間も時間ですから,帰ったほうが良さそうです」

 まだ日は高く登っているが,これからすぐに落ちていくだろう。

 夜に予定があるのかも知れないし,軽く頷いて僕達は別れた。


「……僕等もあんまり遅いと怒られそうだよね」

「マリア様にな」

 もう華国ジャルディーノを出てから何日か経っているし,ここで長く時間を使う必要もない。

 今日か明日には宮殿につきたいが,ここからの距離はだいぶ遠く,皇帝直轄領インペラーゼの広さを実感する。

(……一本道を歩いていくだけなのが,こんなに大変だとはね)

 前世でもこんな道はなかなか見なかった。

 純粋に行ったことがないだけかも知れないが。


 その日はだいぶ宮殿に近づいたが,夜遅くに押しかけるのもあれなので,近くの宿に泊まった。


 翌日。

 今日の天気は少し悪い。

「雨……降りそうだね」

「降る前につけるといいな……」

 雲が覆う暗い空を眺めながら,リベとリリーが呟く。

 幸運にも,宮殿まではそう遠くない。

(……幸運っていうか,昨日の自分に感謝だね。休み無しで歩いたから)

 元々強くて旅にも慣れているこの身体だから良かったものの,光留だったら危なかった。

 多分過度な疲労と筋肉痛で泣いていたと思う。

 ヒロ君は筋肉痛なんて ナニソレオイシイノ? だろうし,リベとリリーもなんやかんや長旅は慣れているから強い。


「……何かあったのかな?」

 曇天の下を歩いていると,リリーが小さく呟く。

 昨日よりも人通りが少なく,何処か張り詰めていた。

「……『イレックス』関連じゃないかな?」

 かなり弱かっ……強敵ではなかったが,皇帝直轄領インペラーゼではそこそこ有名だという。

 僕達が倒したのは三人だから,まだ残っている奴等が何かしてもおかしくはない。

 警戒だけは怠らず,僕達は無関係を装いながら進んだ。


「……着いたね,宮殿」

 歩き始めてからそれほど経たない内に,宮殿に辿り着く。

 遠目ではわからなかったが,とにかく大きい上に彫刻のような装飾が凝っていて,迫力が凄い。

(……まぁ,この大陸を治める皇帝一族の住まいだからね。その辺の国の城とはレベルが違うんだろうな)

 華国ジャルディーノもなかなか絢爛豪華だったが,正直比べ物にならなかった。

 お金かかってるな……とか思いつつ,僕達は門に立っていた騎士に声をかける。

 既にポルタール門の方から連絡が来ていたのか,騎士は僕達のことを「エミリー様の代理御一行」と呼んだ。

 一応マリア様の使いです。と訂正しつつ,門を開けて進みだした騎士についていく。


 宮殿の門の先は,赤い高級そうなカーペットが敷かれた長い廊下になっていた。

 僕達四人が広がってもまだ余裕がある幅の廊下に,等間隔で扉が並んでいる。

 扉の上に文字が書かれており,どうやら国の機関の名であるようだった。

 この宮殿の正確な面積がわからないので推測だが,流石にこの扉の先にその機関があるのではなく,そこに繋がる転移魔法陣的なものがあるのだと思う。


「__此方が,謁見の間になります」

 歩いていると,廊下が二つに分かれる所に着いた。

 片方は更に奥に続いているが,僕達が進んだ方は一際豪華な扉が道を阻んでいる。

 隣を見れば,ヒロ君達が緊張しているのがわかった。

(……まぁ,この国で最も偉い,雲の上の人に会うからね。そりゃ緊張するか)

 むしろここで緊張しないのはあれだろう。

 僕としては,まだアニメの感覚が抜けないこの世界の権力者に,特にこれと行った感情を浮かべられないのが現状だ。


 僕達を見て,控えていた騎士が重そうな扉を開ける。

 一人で開けられるということは,かなりの実力の持ち主かもしれない。

 そんな事を考えながら,扉が完全に開くのを待ってから騎士に合図されて中に入る。


(……この人が皇帝か)

 とりあえずヒロ君達と同じようにその場に跪きつつ,気付かれない程度に視線を上げた。

 正面の一際高いところに置かれた玉座に,如何いかにもという感じの人物が座っている。

 その両隣には妃らしき女性と,皇子おうじと思われる少年が座っており,周囲には服装の違う三人の男女が立っていた。


「____其方(そなた)等が華国ジャルディーノより遣わされた,カリエールの子息一行か?」

 深くて重く,それでいて何処か澄んだ威厳のある声が響いた。

(……カリエールの子息一行……? あ,カリエールの子息って僕か)

 僕はリーダーじゃないんだけどな,と内心不満を述べつつ,代表して挨拶する。

「はい。女王マリア様より,悪しき組織に対抗するため,この地に遣わされました」

 前世の記憶を振り絞ってそれらしいことを述べると,皇帝は小さく頷いた。

「既に連絡は来ている。確かに華国ジャルディーノの承認のみでは,足りない」

 若干何を言っているのかわからないが,それは流して次の言葉を待つ。


「……我は,其方等の実力を知らぬ。故に,そう易易と認めることは出来ん」

 皇帝の言葉に,ヒロ君が悔しげに伏せられた表情を歪めるのがわかった。

(……まぁ,そうだよね)

 国どころか大陸全土を治める者が,実力のわからない子供達を信頼したりはしないだろう。

 何より相手は巨大な極悪組織(サンクチュアリー)なのだ。

 それに,マリア様の話からも公認の対冒険者選びには,かなり慎重になっていることがわかる。


「……どうする? ヒロ君」

 出来るだけ小さな声で,隣に跪くヒロ君に声をかけた。

 すると,ヒロ君の強張っていた表情が僅かに綻ぶ。

「……諦めないから」

 小さくそう呟き,青い瞳に強い光が宿った。


(……本当にヒロ君って主人公だね。……あれ? 主人公って僕か)

 一人のアニメヲタクとして内心盛り上がりかけた所で,ハッと我に返る。

 そういえばこのアニメは,炎を扱う少年フレイムが主人公だった。

(……主人公なら,どうするかな)

 アニメでもそれらしい話は出たことがある。

 その時,主人公フレイムはどうしていたか。


(……あ,わかった)

 こういう時は,本当にアニヲタで良かったと思う。

 この手のアニメにおいて,答えは明白だった。

「ヒロ君,ちょっと任せてくれる?」

 僕が小さく呟くと,ヒロ君は期待に満ちた目を向ける。

 諦めないと誓っていても,打開策はそう簡単に思い浮かばないのだろう。


 このパーティーの行く先を背負ったからには,主導権を握らなくてはいけない。

 だが運の良いことに,僕は光留(前世)の記憶というものがある。

 決して弱みを見せられない,裏社会トップの子息としての軌跡が。


 僕は顔を上げて,僅かに笑みを浮かべる。

 長年仕込まれてきた,見る者を怯ませる,明るく底の知れない笑みを。


(……ここからは主人公フレイムの,光留()のターンだ)



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:何か怒涛の勢いで前世の話が……。

   今まで出てこなかった反動ですね。多分。

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― 新着の感想 ―
ついに皇帝登場!? 待ってましたー! やっぱりサンクチュアリーってヤバいんですね・・・? フレイム君本領(?)発揮!? 続きも楽しみです
2026/04/19 14:31 マリアンネ
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