25 マカレトロにて
ライト=ツナは大急ぎで主人であるダゴンの元に歩いていた。
そこは他のものであれば近づくことすら躊躇する空気に満たされていたのだが、空気の読めないライトはつかつかとその部屋に近づいた。あるいはその空気は部屋の主人の出していたオーラなのかもしれない。
ライトは御構い無しにその部屋の扉をノックする。
コンコン
「…入れ」
少し間があって入室を許可されるライト。うやうやしく部屋に入ると一礼をしてから音をあまり立てないように部屋の主人、ダゴンの元へ近づく。
非常に作法に則った動作であった。
その動作を忌々しそうに眺めたダゴンは尋ねる。
「本日もいつもとお変わりなく「何があった」」
言葉を中断されたライトは気分を害することもなく、むしろ晴れがましい顔でダゴンに報告する。むしろ、中断するから喜んでいるのではないかと思える動作だった。ライトはきっと「見た目の形よりも実を取るダゴン様はやはり素晴らしい」とかでも思っているのだろう。
「はい、カララト海域に侵攻したアーラウトのタコス様が、コノワタ様を殺害し支配地域を増やしました」
「ほう?」
なかなかどうして、ダゴンは予想外の行動に喜んでいた。
タコスがアーラウト海域を支配して一月とちょっとである。内政に穴ができるかもしれないがそれでも侵攻ペースはなかなかに早いものがあった。よほど優秀な頭脳を持った将軍がいるのか、運が良かったのか、その両方か。
なんにしてもダゴンんとしては嬉しい情報であった。
「このまま侵攻を行ったとしてもタコス様がダゴン様に反旗をひるがえすとは思いませんが。しかし、万一ということもあります。特にダゴン様のご一族でもありますコノワタ様を殺害されたことは決して看過できることではございません」
「ふん。タコスも私の一族だが?」
嫌味を言うダゴンにライトは恐縮をする。
「差し出がましいことを言いました」
ダゴンにとっては本当に差し出がましいことで煩わしいことであった。
普通であれば同族殺しをおこなったタコスは裁判にかけられ良くて追放、悪ければ死罪だろう。だが、ダゴンはそういったことをするつもりなどもちろんなかった。
「重ねて言うが、あれには手出し無用だ。わかったら下がれ」
「はっ。失礼いたします」
ライトは頭を下げて退室していった。
しかし、ライトは退室後、違和感を感じていた。
(タコス様はいずれダゴン様を害しようとするだろう)
それはライトにとって絶対に見逃せない事態であった。
(ダゴン様はお優しい方であらせられる。ならばダゴン様に気づかれぬように手を打つのが私の役目)
ライトは人知れずマカレトロを後にし、カララトに隣接するタロス、サイガンドへと向かうのであった。
読んでいただきありがとうございました。
2作目はひとまずここまでとなります。




