七話 遠矢 三人と意見交換する
遅くなりました<(_ _)>
一応二話分の長さです。
スマホの振動で目が覚める。
午前五時半。
六月に入ったばかりなので日はもう昇ってる。
隣りに響かない様に静かに行動する。
風呂場に入りタオルを濡らし寝汗を拭う。
全身を丁寧に拭き着替え朝飯を食べる。
食べ終わって片付けをして冷たい麦茶を飲みながら今後の行動方針を決める。
細かい取り決めは三人娘が起きてからにするとして、昨日の行動や言った事の説明もしないとなぁ…
地図を広げ色々と考え込む。
政府や自衛隊とかの助けが期待出来ないのなら自給自足を考えなければならない。
時間は一年以内か?
その間に畑で作物が作れる状態の安全場所を探さないと…
やっぱり一年以内か…
伯父の言葉があってるなら二年以内にガソリン車は使えなくなるらしいし…
ゾンビ映画を一緒に見て、伯父が語った事を思い出す。
「もしこんな状況になれば自給自足を考えなければならない。この映画もそうだが閉じこもってて安全は確保出来るが物資は無限に沸いて来る訳じゃない。これは結局ゾンビに押し切られ逃げ出したが、映画の中の時間でもよくて半年しかたってない。これが三年ほど暮らしていてラストシーンの状況になっていたらヘリは動かず全滅していたな。」
「えっなんで?」
「ディーゼル系の軽油や灯油ならもっと持つんだがガソリン自体は劣化が早いんだ。へりはガソリン系のエンジンだ。だから物資を集めて拠点確保、自給自足までの時間は一年以内に済ませるってのが俺の持論。エンヤにも言っておくが、一番の拠点は瀬戸内海の無人島だ。人の少ない有人の島でも良いが、全員始末する覚悟と武装が前提だからな。無論、畑が出来る土地と水が湧き出ているのが絶対の条件でな。」
「ふ~ん。」
ここでパソコンを弄ってネットを見てた伯父が声を上げた。
「あっ!参ったな…。エンヤ、さっき言ったヘリの話は俺の間違いだ。ヘリの燃料はヘリの種類に因って変わる。俺はガソリン系のヘリしかないと思ってたのだが、ケロシン系もあるんだな…」
そう言ってブツブツ呟きネットを見ながらノートに色々書き込みしだした伯父。
そうなったら満足するまで放置するしかなかったので一人で別の映画を見てた。
伯父の話が全部正しい訳ではないのが分かったエピソードだが、だからと言って無視できる類いの話でもないのでそれも念頭に行動しないとな…
@@@@@@
色々考えてどう行動するのが良いのかと悩んでネットを見ていると隣りの部屋に人が動いている気配がしだした。
時計を見ると七時になってた。
そんなに悩んでいたのかと頭を掻く。
そもそも俺一人なら悩む必要はない。
仲間の事を考えてたのが悩みの種だ。
それなのに仲間の意見も聞かずに勝手に決めようとしていたのでは決まるものも決めれないし決めて良いものでもない。
冷静さを保てていると思っていたがやっぱりちとテンパってたのかと苦笑を浮かべる。
今日はゆっくりすると決めてたので皆と意見交換して一つ一つ決めて進もうと決心する。
@@@@@
微かに壁を叩く音が聞こえて来た。
コンコン・コンコン
返事の合図を返す。
ココン・ココン・ココン
叩き終わるとベランダ側に行き鍵を開ける。
少し離れて見ていると腰を屈めて三人娘が室内に入って来た。
「皆おはよう。」
「トウヤおはよ。」「おはようございます」「おはよう。」
メイ、海島さん、川田さんの順番で返事がくる。
そのままリビングに行き全員が座ったのを見てからコップを並べ、冷蔵庫から新たに冷えた麦茶を出し机に置く。
「皆、朝飯は食ったのか?」
俺は自分のコップに麦茶を注ぎながら聞く。
「うん。皆食べたよ。」
俺から受け取った麦茶のペットボトルから、自分のコップに注ぎ隣りの海島さんに渡しながら答えてくるメイ。
「そっか。じゃあ昨日言ったように意見交換をするか。」
俺はノートパソコンをモニターに繋ぎ皆に見える様にしてから話を始める。
「先ず、昨日の単独行動の話。昨日も言ったけど偵察に行くのは基本一人か二人で。理由も昨日言った通り撤退時の手間がかからないように。その件で他に質問ある?」
皆は首を横に振り否定する。
「じゃあ俺が単独行動する事について。
少なくとも、もう一台車が欲しい。四人分の食料や飲料水を運ぶには大きい車がいるのは理解できるだろ?しかし俺を含めて大型免許を持っている者はいない。だから二台で行動したい。本音では一人一台で行動したいんだが。でも流石に女性一人で運転は辛いと思うので二台での行動とする。だからもう一台の車を探しに俺一人で行く。」
「だから、なんで、それで一人で行くって事になるのよ。」
メイが頬を膨らまして文句を言ってくる。
「足手纏いだから。俺一人での行動と誰かを連れての行動では動きの速さが違う。見捨てるのを前提とした行動でもね。だから数日、この拠点で俺の考え方や行動原理、ゾンビの対応の仕方とかを覚えてもらう。同時にアーチェリーの組み方撃ち方も学んでね。勿論教師はメイがするんだから俺の単独行動になる。何か質問は?」
「うん。取り敢えず、うちらのする事は理解できた。でも出来れば長期の目標とか目指すものってのを教えて欲しいな。」「そうだね。」「そうよトウヤ!」
「逆に質問。君達が先ずやりたい事はない?調べたい事とか。」
「…うちらの家族の事か?」「あっ…」「うん…」
「そう。君達が許可するなら俺は君達の家を一通り周り調べてくるよ。出来れば連れて行ってあげたいけど、今は絶対に無理だ。下見も無しに、いきなり君達を連れて探索しながら連れて行くのは出来ない。」
「つまりある程度、結果が先に判ってたら、うちらが動揺して狼狽えている時間が少なくすむ。危険度が下がると云う事か…」
「そう。先に言っておくが俺の家族は多分全滅している。俺の親族で言えば伯父、母の兄しか生き残っていないだろう。取り敢えず俺が合流して生きていく指導してもらいたいのが伯父なんだ。それに伯父のメインハウスに行けば電気と水の心配はしなくて過ごせる。もっともこれは俺の願望だから無理に付き合わせるつもりはない。自衛隊基地や安全なコミュニティを見つけ次第、君達をそこに届けるつもりだけど。」
「そんな事言わないでよトウヤ!」
「そうだ皇!」
「皇君。私は足手纏いなのは自覚していて迷惑と思われてるだろうけど、囮でも良いので皆と一緒に居てよ。」
メイと川田さんは怒ったように言い、海島さんは目に涙を浮かべて言ってくる。
「取り敢えず二人は置いといて、海島さん。俺は迷惑に思っていないし君は足手纏いなんかじゃない。それに折角助け出した人を囮なんかに使いたくない。俺も皆と一緒にいたい。」
「なんだよ。うちらはお邪魔か?」
「トウヤ浮気すんな!」
「なんだよ浮気って!俺達べつに付き合ってもいないだろ!正直、付き合ってあれこれしたいとは思ってたがな!」
俺が思わず本音をぶちまけると、川田さんが笑い出した。
「あははははっ」
その笑いで空気が弛緩して和やかな雰囲気になる。
本当、川田さんは空気を変えるのがうまい。って言うか空気読んで調整してくれているよな。
この借りは絶対に返して行こうと誓う。
「ちょっと話が逸れたけど先に最終目標を教えておく。自給自足の原始生活を送れるようにする事。その前の段階で場所の確保。それで場所の候補地は瀬戸内海の島だ。」
俺が説明すると皆が凄く驚いた顔をする。
ネットで航空写真の地図を出し何処が良いとかの説明を詳しくする。
「先ず、候補地の一番は小豆島の西方面から岡山玉野市東にある島だ。ただし人が多い島は外す。無人島も出来るだけ外す。今の俺達では住む場所を作れないのが理由だ。だからある程度の建物がある島を狙いたい。」
「どうしてその辺の候補地を選んだの?」
メイが不思議そうに首を傾げて問うてくる。
他の二人も頷いてメイの質問の答えを待っている。
「この話は全部伯父の受け売りなんだ。俺の出来る事での範囲で一番安全な場所らしい。危険場所で便利な所もあるがそこはリスクが多い。それと今一番危険な脅威は何か分かる?」
皆、首を傾げながら「ゾンビじゃないの?」と言う。
俺は首を振り答える。
「一番の脅威は人間だよ。昨日少し言ったけど、こんな世界に普通は先が見えない。どうせ死ぬなら好き勝手やろうと云う奴は必ずいる。食料の奪い合いはすでにあちこちで始まっている。この世界には有名な七つの傷を持つ世紀末救世主はいないだろうし。だからこの先、人を助けるどころか殺し合いをしたり巻き込まれたりするかも知れない。いい?俺はこれから人は絶対信じない。君達三人と伯父以外は。だから君達も他人を信じるな。表面上は友好的な行動してても絶対に隙を見せない様に。」
ここまで言うと流石に絶句して皆顔色が悪くなった。
だが続けて言う。
「基本的にアーチェリーで倒すのはゾンビなんだが、人を倒すのは銃でやりたい。だから銃の探索も最優先でやらないといけない。君達には過酷だと思うけど生き残って行く為にはやるしかないんだ。」
俺の言葉で顔色を悪くしていた三人娘は皆、口を噛み締め顔色は悪いまま真剣な目を俺に向ける。
「ここまでの話で俺が何故、夜に電気やベランダからの出入りに姿を見せない様に行動してくれと言ったのか理解してくれたと思う。だからそれらをこれからも徹底してくれ。」
「「「はい!」」」
皆、はっきりと返事してくれた。
「じゃあこれから、メイに教師をしてもらってアーチェリーの組み方と撃ち方を学んでもらう。先ず部屋の中で本体の組み方と矢を飛ばす練習をして、仕組みが分かったら廊下で命中率を上げる練習。このマンションの廊下の距離で15センチ内の円に確実に命中させるのを目標にしてくれ。俺が出かける前にエレベーター前に畳で的を用意しておくから。それと射撃姿勢は片膝立ちで頼む。あと一人で使う矢は5本だけで。手間暇掛かるけどそれを徹底してくれ。矢を抜きに行くときも本体は玄関前に置き一人で抜きに行く。二人とも射てからじゃなく一人ずつで。メイは念の為10本を予備に持ってる事。いいか?矢を抜きに行くときに襲われるかも知れない。それを忘れない様に。」
俺の最後の言葉で全員の顔がまた強張った。
だが先程より顔色は悪くなく頷いている。
少なくとも数日俺が居なくても大丈夫だろう。
「では最後に、もし俺に何かあった時はこのノートやファイルを参考にして生き残ってくれ。それと撃ち方の練習は午後3時まで。あとは陽が落ちるまでノートとファイルの暗記。俺がいない間、この拠点の事は頼む。相手が女子供でも油断するなよ!」
俺に何かあった時はと言った瞬間、皆は微妙な顔をしたが最後は真剣な顔をしてハッキリ頷いた。
これで俺は出かける事にする。
ここまで言って聞かせ、何かが起こったとしてもそこまで面倒は見きれない。
俺は出かける準備に取り掛かった。
次の予定は裏を月末までに。
この続きは未定でお願いします<(_ _)>
今回遅くなった言い訳はチート優先しすぎて頭の中がファンタジーに染まり過ぎたのが原因です。
徹夜でハイになってた時、魔法でゾンビを蹴散らしているメイたち三人娘。
呆然と呆けているトウヤの文を書いてたりしてました。
では次の話を早めに投稿できますように頑張ります<(_ _)>