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雑貨屋さんを思い起こす

旭日町(あさひまち)高校文化祭、当日。

当日と言うか、一日目。

妹の高校の文化祭に、俺も乗り込むことにした。

本音を言えば迷っていたが、土曜、日曜に開催ならば実家に帰るついでに行けるわけだし。

妹―――。

妹はなんだかんだで俺に文化祭のことを教えた。

とすれば、来て欲しかったのだろうか。

ふうむ。

深い意味はないのか。

俺の通っていた高校とは違うし、まあいいかと言う気はする。

俺の母校に行くならばなんとなく気合を入れる必要があるし。

苦手な教師に見つかると―――現国の佐賀とか。

心臓の回転数が左右されて、煩わしい。

人から見られることでむしろ調子を乱すんだ、ウチの家族は。

うちの家系は―――誰も口にしはしないが、一人のほうがいい。

なれないお祭り騒ぎに家族を呼ぶのは、間違った心配をされる。

などと考えていると。


「こっちおいで、お兄ちゃん」


「お兄ちゃん言うな。校舎内で言うな。ハズいだろ」


俺は挙動不審になる。


「こっちおいで、お兄ちゃ………あまはし。早速見せるから、私たちのお化け屋敷」


手をひかれる。引きずられる―――午前の早い時間に来たため、まだ客はまばらだった。

だからスムーズに廊下を引っ張られる。

生徒がいないタイミングだ―――。




そして、二年四組。

妹の教室らしい。

俺は文化祭委員であるところの高次多々良に連れられ、教室、お化け屋敷に―――入る。

それは、明るいお化け屋敷。

当初の予定からはかけ離れたものだった。

しかし、俺は圧倒されてしまう。





極彩色だった。

天井周りにはだれが持ってきたのだろう、アジアンテイストな色のスカーフが所狭しとぶら下がり、日光を通して淡く色を放って、風に小さく揺れている。

通路は机をびっしり並べていた、S字を構築した簡単なもののようだが、机の上には多くの雑貨が所狭しと並べられていた。

そうだ、以前入った雑貨屋さんを思い起こす、やたらとカラフルなお店。

机の上にはいくつかのものが乗っていた。

ものというか、キャラクターものの筆記用具、目覚まし時計、消しゴム、クリッカー、よくわからない外国の文様の皿、キャラクターもののぬいぐるみ。

部屋を意識しろとは言ったが、なんだこれは。

妹のクラスメイトが持ち寄った謎アイテムがある。

所狭しと並べられている。

これではお化け屋敷というより、フリーマーケットでも開けたんじゃないかと思える程度の、謎の空間。



俺が想定しておいた、やかんやフライパンなどの音を出すアイテムを、やっと見つける。


「これは音が鳴るのか?ちゃんと」


「うん、リハーサルもうまくいったし問題ないよ、今は裏方がいないけれど。集合してる」


「ここが一番難易度高いと思うが」


「ちゃんと、工夫してくれる人がいたの」


「………そうか。あれ、お前だけここにいていいの?」


「私委員会だし、別扱い」


「ん、そうか」


「やかんの音はすごいよ………」


妹が、試しにとばかりに突っつくと、がらんがらん、と変な音がした。


「中に、五円玉を入れてあるの、他にも音を大きくするように、色々」


「俺のアイデアではないな」


「みっちゃんが言ったの」


「………」


思っていたのとは違うものに、妙な感情が沸く。

まあ、普通の人ならこんな場所、お化け屋敷でもなんでもない、と言うのだろうが---。



「いい、友達だな」


「いや、最悪だった。マジでまとまりにくかったよ、みんな」


「それでも―――出来てよかったじゃねえか。今のところ、思ったよりちゃんとしている」


天井から下がっている、多数の布を見る。

窓が開いて風が入り、オーロラのようだ。

………これだけ、天井にあれば、と俺は内心ニヤける。


「すごいじゃないか」


「まだまだあるよ、あの人体模型なんて、ね………自信作だよ」


「人体模型?そうかその手があったか、誰が思いついた―――」



「高次さん」


振り返るとドアが開いていた。

男子生徒が覗き込んでいる。


「駄目だよ、部外者を入れちゃあ。まだ開いていないのに」


「根白坂くん………」


妹は言う。

同じクラスの男子かな?

彼と目が合う、おとなしそうな子だ。

ふふふ、君たち、この文化祭でお化け屋敷を開けるのは、誰がアイデアを出したからだと思う?

ふふふ。

………などと、大人げないことはしてはいけない。


「ああ、俺は―――」


「お兄ちゃんなの、私の。親類だから、大目に見てくれない?」


「………仕組みがわかると、楽しみが減りますよ」


そう言って踵を返し、廊下へ出ていく。

クールな男子だ。


「悪いな多々良、出ていくよ」


「え、まだ全部は―――」


「客としてくるから」


著作権は俺にあるけどな。


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