第八話 落ちこぼれの隊
第八話です。
「合格だ」
ガルドの一言で広場がざわついた。
岩を持ち上げられた者。
持ち上げられなくても、何か光るものを見せた者。
その数は思っていたより少ない。
百人近くいたはずなのに。
残ったのは二十人ほどだった。
カイルもその中にいた。
「助かったぁ……」
その場に座り込む。
「俺、もう駄目かと思った」
レンは何も言わない。
木剣を握ったまま前を見ていた。
ガルドが歩き出す。
「ついて来い」
二十人は王都の外れまで連れていかれた。
そこには古びた兵舎があった。
壁はひび割れ。
屋根も欠けている。
周囲の訓練場も草だらけだった。
「ここがお前らの寝床だ」
何人かが顔をしかめた。
「汚ねえ……」
「本当に軍か?」
その時だった。
別の兵士たちが横を通る。
綺麗な鎧。
立派な剣。
整った隊列。
皆、自信に満ちた顔をしていた。
二十人は自然と目を奪われる。
「あれが本隊だ」
ガルドが言う。
「じゃあ俺たちは?」
誰かが尋ねた。
ガルドは笑った。
「落ちこぼれだ」
その場が静まり返る。
「貴族に金を積まれた奴」
「行き場をなくした奴」
「孤児」
「農民」
「問題児」
ガルドは二十人を見回した。
「まともな隊には入れん」
レンは黙って聞いていた。
不思議と腹は立たない。
昔からそうだった。
誰からも期待されない。
見向きもされない。
慣れていた。
「だが」
ガルドが口元を歪める。
「俺は嫌いじゃねぇ」
兵士たちが顔を上げる。
「最初から何も持ってねぇ奴は」
「失うものもねぇ」
「だから時々、とんでもない馬鹿が生まれる」
ガルドの目がレンを見た。
「お前みたいにな」
レンは目を逸らした。
その夜。
兵舎では皆が騒いでいた。
「俺は元鍛冶屋だ」
「俺は村で猪を狩ってた」
「戦が終わったら金持ちになる」
それぞれが夢を語る。
カイルも笑っていた。
「レンは?」
突然聞かれる。
「夢とかあるのか?」
レンは少し考えた。
夢。
今まで考えたこともなかった。
視線は自然と壁に立てかけた木剣へ向く。
傷だらけの木剣。
先王が残したもの。
「あの人が」
言いかけて止まる。
誰にも話したことがない。
結局。
レンは小さく答えた。
「強くなる」
カイルは笑った。
「いいな、それ」
「俺も負けねぇ」
夜は更けていく。
兵舎の外。
月明かりの下。
一人の男が立っていた。
白髪の老人。
レンに兵になるよう勧めた男だった。
老人は兵舎を見つめる。
そして小さく呟いた。
「ようやく一歩か」
風が吹く。
老人は懐から一枚の古い布を取り出した。
そこには王家の紋章が刺繍されていた。
「陛下」
老人は誰もいない夜空を見上げる。
「あの木剣は、ちゃんと届きましたぞ」
第八話でした。
今回はレンたちが所属する隊と、軍での立場を書いてみました。
また、これまで謎だった老人にも少しだけ秘密を持たせています。
次回からは兵舎での訓練や仲間たちとの関係も描いていく予定です。
読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。




