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王の木剣  作者: 蒼空


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第七話  入隊試験

第七話です。

広場には人が溢れていた。


若者。


農民。


傭兵崩れ。


盗賊のような男までいる。


皆、兵になるために集まっていた。


 


レンは人混みの後ろから眺めていた。


 


思っていたより多い。


 


「びびったか?」


 


後ろから声がした。


 


振り返る。


 


同じくらいの年齢の少年だった。


 


栗色の髪。


人懐っこい顔。


 


「別に」


 


レンが答えると少年は笑った。


 


「俺はちょっとびびってる」


 


緊張感の欠片もない。


 


「名前は?」


 


「レン」


 


「俺はカイル」


 


勝手に隣へ並ぶ。


 


レンは少し面倒になった。


 


だがカイルは気にしない。


 


「お前、その木剣で受けるのか?」


 


視線は木剣へ向いていた。


 


「悪いか」


 


「いや」


 


カイルは苦笑する。


 


「変な奴だなと思って」


 


その時。


 


太鼓が鳴った。


 


広場が静まる。


 


壇上へ一人の男が現れた。


 


大柄だった。


 


顔には古傷。


 


片目には眼帯。


 


一目で強者と分かる。


 


「静まれ」


 


低い声が響く。


 


一瞬で全員が黙った。


 


男は広場を見渡す。


 


「俺は千人長のガルドだ」


 


「今日ここにいるのは兵になりたい連中だろう」


 


誰も答えない。


 


ガルドは鼻を鳴らした。


 


「結構」


 


「だが勘違いするな」


 


次の瞬間。


 


ガルドが近くにいた男を蹴り飛ばした。


 


「ぐぁっ!?」


 


突然のことだった。


 


広場がざわめく。


 


吹き飛ばされた男は動かない。


 


「兵は遊びじゃねぇ」


 


ガルドの目は冷たかった。


 


「弱い奴は死ぬ」


 


「運が悪くても死ぬ」


 


「仲間が馬鹿でも死ぬ」


 


「戦場はそういう場所だ」


 


静まり返る。


 


レンも黙って聞いていた。


 


ガルドは続ける。


 


「それでも兵になりたい奴だけ残れ」


 


誰も動かない。


 


逃げる者はいなかった。


 


ガルドは少しだけ笑った。


 


「よし」


 


「なら試験だ」


 


広場がざわめく。


 


試験。


 


レンは木剣を握る。


 


ガルドが指を差した。


 


広場の端。


 


大きな岩が置かれている。


 


人の腰ほどもある。


 


「持ち上げろ」


 


一同が固まった。


 


「持ち上げられた奴だけ残れ」


 


悲鳴が上がる。


 


「無茶だ!」


 


「できるかそんなもん!」


 


ガルドは笑った。


 


「戦場はもっと無茶だ」


 


誰も反論できなかった。


 


試験が始まる。


 


次々と挑戦者が前へ出る。


 


だが上がらない。


 


持ち上がっても少しだけ。


 


失敗。


 


失敗。


 


失敗。


 


カイルも挑んだ。


 


結果は失敗。


 


「無理だろあれ……」


 


肩で息をしている。


 


やがて。


 


「次」


 


レンの番が来た。


 


視線が集まる。


 


木剣を背負った痩せた少年。


 


誰も期待していない。


 


レンは岩の前へ立つ。


 


しゃがむ。


 


掴む。


 


重い。


 


だが。


 


毎日振っていた。


 


あの木剣を。


 


何百回も。


 


何千回も。


 


腕に力を込める。


 


「おおおおっ!」


 


岩が浮く。


 


広場が静まり返った。


 


ほんの少し。


 


だが確かに浮いた。


 


ガルドの目が細くなる。


 


レンは岩を下ろした。


 


息が荒い。


 


腕も痛い。


 


だが立っていた。


 


周囲がざわつく。


 


「今のガキが?」


 


「嘘だろ……」


 


カイルが目を丸くしている。


 


レンは気にしなかった。


 


ただ一つ。


 


木剣を握る。


 


もしあの日。


 


王に会わなければ。


 


自分は今ここにいない。


 


そんな気がした。


 


遠くでガルドが笑った。


 


「面白ぇ」


 


その言葉をレンは聞いていなかった。

第七話でした。


今回は入隊試験の始まりです。


木剣を振り続けてきた成果が少しだけ見え始めました。


また、新キャラのカイルや千人長ガルドも登場しました。


次回は試験の続きと、レンが軍の世界へ本格的に入っていく流れになる予定です。


読んでいただきありがとうございました。


次回もよろしくお願いします。

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