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第37話 浮気②




 日曜日の夜。


 俺はテーブルにお菓子とコーラを並べていた。


 時間は9時。ご飯も食べたし、お風呂も入ったし、学校に行く準備も万全。


 つまり、寝る前のゴールデンタイムだ。


 さてさて、ここはゲームをするか、だらだらとゲーム実況とかの動画を見るか。


 いや、ここはやはり以前から気になっていた『一緒マンションに住んでる上の階のクラスの同級生、頼み込んだら意外とえっちなことをやらせてくれる件』の一気見をー



 ピーンポーン



 オープニングのタイトル画面で玄関のチャイムが鳴った。


 え、こんな時間に誰だろう。俺のゴールデンタイムが……



 ピンポン


 ピンポン


 ピンポン


 ピポピポピンポン。



 ……このピンポン連打は月見さんだな。


 仕方ない。とりあえず出るか。


 なんの用事だろうと扉を開けると、そこにはいつもの自宅モードの月見さんの姿が。



「……どーも」


「どうしたの月見さん。何か用事?」



 月見さんは微妙に気まずそうと言うか、困ったような顔をしている。



「これ、返さないといけないなと思って……」



 目を逸らし、パーカのポケットからハンカチを取り出した。畳んでいたハンカチを開くと俺の部屋のスペアキーが姿を見せる。



「え? なんで? 別に返さなくてもいいけど……」



 だって、最近土日ほぼ確実に来るんだし……



「そういうわけにはいかないでしょ……あんたには美鈴っていう彼女が居るんだし」


「え? 芹澤さんから聞いてないの?」


「え?」



 あれ? 


 この反応、まさか月見さんは『なんちゃって恋人』の事情を知らないのか?


 しまった。てっきり、ひよりと月見さんには事情を説明してるものだと思っていた。


 まさか、なにも説明していなかったなんて……!!



「……なに? 何かあるの?」


「えっ、いや……その……別になにもないよ? 俺と美鈴さんは付き合ってる。それだけだよ。あ、鍵、受け取るね!」



 そそくさと月見さんからスペアキーを回収する。



「……入江、嘘つく時に視線をそらす癖、直した方がいいわよ」


「えっ、うそっ、しまっ」


「うそ」



 呆れながら、ジト目でこちらをじっと見つめる月見さん。


 …………カマをかけられた。



「………………」


「………………」


「説明、よろしく」


「はい……」



 芹澤さんにお見合いの話がきて、隠れ蓑をして『なんちゃって恋人』になったことを月見さんに説明した。

 


「なるほど、そういうことね……ん」



 月見さんは納得したように頷き、再び俺に右手を差し出してきた。


「えと……?」


「やっぱ返して、その鍵。私のだし」


「え、あ、はい……」



 俺の鍵なんだけど……いや、譲渡したから月見さんのものなのか?


 再び、俺の家のスペアキーが月見さんの手に渡る。


 月見さんはハンカチ越しに鍵を受け取ると満足そうに頷き、パーカーのポケットへ仕舞った。



「ちょっと、どいてよ。中に入れないじゃん」


「あ、ごめん……って、え? なんでうちに入って来てるの!?」


「そういえば、この前やったゲームのボスが倒しきれなかったなって」


「や、これはまずいって……!! 浮気だって!! 俺殺されちゃうよ!!」


「いいじゃん。殺されたら。女たらしはこの世から消えるべきよ」



 ひどい……誰一人たらし込んでなんかないのに。



「それともなに……? 私と浮気するの? きも」


「え、いや、そんなつもりは」


「ならいいじゃん。別にバレないって」



 月見さんに言い負かされて、つい入ることを許してしまった。


 あれ? 何か忘れているような……



「…………………………」



 月見さんを追いかけるようにリビングに向かうと、そこにはTVの大画面に映し出されている『一緒のマンションに住む上の階のクラスの同級生、頼み込んだら意外とえっちなことをやらせてくれる件』のタイトル画面。


 そしてタイトル画面を見つめる月見さん。


 し、しまった。一時停止をしていたの完全に忘れてた!!


 止まらない冷や汗、緊張感に包まれる空気。まるでエッチな本が見つかったような、そんな緊迫感がある。


 ヘンタイや死ねなど様々な罵詈雑言を覚悟していた俺に思いがけない言葉が飛んできた。



「なに突っ立てんの? 隣座ったら?」


「え? あ、はい」



 あれ? なんだ? 普通だぞ?


 月見さんは特に『一緒のマンションに住んでいる上の階のクラスの同級生、頼み込んだら意外とえっちなことをやらせてくれる件』というタイトルにツッコミを入れることなく、ゲームに切り替える。



「お菓子とコーラあるじゃん。もらっていい?」


「あ、うん。別にいいんだけど……」


「なに……?」


「あ、いや……さっきの、スルーしてくれるんだと思って」


「あれ、ちょっとえっちなアニメでしょ? 今更これくらいで引かないけど。これ以上にヤバイやつを見てるの知ってるし」


「そっか……それはよかった……ん?」



 ちょっと待ってほしい。これ以上にヤバいやつって? 


 も、もしかしてアレの存在がバレてるのか?



「カーペットの裏、パスワードは最近見てるアニメの推しキャラの誕生日」



 ヤバい、全部バレてるやつっ……!! 



「なんで知って……!?」


「ここ最近、この部屋を掃除してるの私なんですけど」


「……………………」


「なんなら、最近のあんたの好みも言ってあげようか?」


「……やめてください。お願いします」



 俺はもう、一生月見さんには頭が上がらないかもしれない。





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― 新着の感想 ―
ここまで見させて頂いたんですけど普通にめっちゃ面白い。 それぞれのヒロイン像も想像出来るし感情移入も出来てたので素晴らしい作品だなと思いました。 文もこれといって違和感はそこまで感じませんでしたしクオ…
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