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第36話 浮気





『とまぁ、そんな感じでしょうか?』


「なるほど、なるほど……」




 深夜、俺は桐藤さんに電話で恋愛相談をしていた。


 なんちゃってとはいえ、初めての恋人だ。


 付き合っている女子とどうやって接したらいいのかとか、全然分からなかったので、桐藤さんには女心というものをアドバイスしてもらっていた。


 芹澤さんと付き合ったと報告した時、結構長い沈黙があったのは怖かったけど、桐藤さんはとても親身になってくれた。


 やはり、持つべきものは良い後輩だな。



「……と、もうこんな時間か」



 外を見るとすでに日がのぼりかけている。色々と雑談とかしていたら6時間以上通話していた。



「桐藤さん本当にありがとう。色々と相談に乗ってもらって」


『いいえ。先輩に一番最初に頼っていただけて、嬉しいですよ』


「……まぁ、こんなこと相談できるのは桐藤さんしかいないし」


『……………………ありがとうございます』



 あれ、なんか桐藤さんの様子が変だぞ。 


 俺なにかまずいこと言ったかな。



「そ、そういえば。芹澤さんに浮気したら絶対コロすとか言われちゃってさ! ほんとまいったなぁ。あはは」



 なんとなく、気まずさを感じたので気を紛らわすためにぼやいてみる。



『あの、先輩……これ、浮気ですよ』


「…………………………え?」


『彼女に秘密で女の子と夜明けまで通話は完全にアウトです。浮気です』


「そ、そんな……そんなこと……俺はあくまで恋愛相談を」


『恋愛相談自体は1時間くらいで終わったじゃないですか。5時間以上はただの雑談でしたよ?』


「え、だって、楽しかったし……」


『……先輩、そういうところですよ』



 え、なんか怒られてる?



『まぁ、そう言っていただけるのは嬉しいですが、芹澤先輩にこの通話歴を見せたらそんな反応をされると思いますか?』


「……え」



 芹澤さんにこの6時間以上ある通話歴を見せるとどうなるか……?


 ………………詰められるな。確実に。



『あーあ、これはもう、一緒にコロされるしかないですね♪』


「あの、桐藤さん。今日のことはどうか内密に」


『……さて、どうしましょう?』



 え、桐藤さん……? 嘘だよね?



『そうですね……私の言うことを5つ聞いてくれたら今日のことは黙っててあげます』


「い、5つも? せめて1つに……」


『では3つです。これ以上は譲歩できません』


「……2つ」


『3つです』


「……わかりました」



 桐藤さんのことだから、無茶なことは言わないだろうけど……果たして、俺にできることだろうか。



『交渉成立ですね♪ ではまず一つ目のお願いなんですけど。これから私が質問すること、正直に答えてください』



 あ、なんだ。これなら俺でもできー



『先輩と芹澤先輩はどういった経緯でお付き合いをなされていたのでしょうか?』



「…………………………………」


『先輩?』


「あ、いや……ど、どうしてそんなことを聞くの?」


『え? まぁ、純粋に気になりまして』


「……………………………えと、桐藤さん。これ、僕の答えが嘘だと判明した場合、僕はどうなるのでしょうか?』



『…………さぁ?』



 ひ、芹澤さんと同じことを言ってる。怖い。



「……本当は付き合ってないです。なんちゃって恋人です」



 怖いので、素直に話すことにした。


 芹澤さんにはなんちゃって恋人のことは秘密厳守と言われたけど、しょうがなよね。


 それに芹澤さんだって、ひよりと月見さんには二人の様子を見て本当のことを言うかもしれないって言ってたし。


 きっと芹澤さんだって二人に真実を話しているはず。きっと、多分。おそらく。


 事情を洗いざらい説明すると心の底から嬉しそうな声が聞こえてきた。



『そう言うことだったんですね♪ よかったです。安心しました』



 桐藤さん。そんなに俺に彼女が出来て欲しくないのかな……



『それにしても相変わらず、文学先輩はなんと言いますか。優しいというか……お人好しですね』


「あはは……」


『ですが、そういうところが文学先輩の素敵なところですね……』


「な、なんか。ストレートにそんなことを言われると照れちゃうね」


『ふふ、そうですか。ではこれからはたくさん文学先輩のかっこいいところ伝えるようにしますね……今回の件で危機感を持ちましたから』


「危機感?」


『なんでもありません。もう少し、通話を続けても良いですか? 朝ごはんの準備を文学先輩と話しながらしたくって』


「え、ああ……いいよ。どうせなら俺も準備しようかな」


『ふふ、二人でお揃いの朝食作っちゃいますか?』


「そうだね……冷蔵庫なにがあったかなー」



 結局、朝ごはんを食べ終わるまで桐藤さんとの通話は続いた。










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