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第25話 ヒロインだけのパジャマパーティ





「いえーい。今からパジャマパーティ始めますーかんぱーい」


「「かんぱーい」」



 土曜日の夜。



 美鈴の別荘でひよりと星乃と美鈴はお泊まり会をしていた。パジャマパーティの名の通り、全員がパジャマ姿となっている。



「……何で急にパジャマパーティ?」



 ベッドの上に乱雑されたお菓子たちをつまみながら星乃が呟く。

 


「この前、ドタキャンして星乃に寂しい思いをさせちゃったから、その埋め合わせ」


「……別に、寂しくなかったし」



 照れ隠しと言わんばかりに星乃はぷいとそっぽを向いた。


 実際、星乃はあの日は朝から晩まで文学の家で過ごしており、二人でのアニメ鑑賞や買い出し、たまたま二人で見た料理動画に感化されて挑戦したパエリア作りなど、悔しいくらい楽しい1日だった。


 まぁ、文学本人には絶対に言うことはないが。


 もちろん、ひよりと美鈴にも絶対に話さない。めんどうなことになりそうなので。


「………………」


「………………」


「………………」



 会話が途切れ、黙々とお菓子を食べ始める3人。



「……星乃、パジャマパーティーってなにすればいいの?」


「私に振らないでよ…………まぁ、定番なのは恋バナとか?」


「いいね恋バナ。恋バナしよう」



 そういった直後、美鈴ははっとした表情を浮かべ、ひよりの方を見た。



「大丈夫だよ。みんなのおかげで天馬のことはちゃんと吹っ切れたし。しようよ。恋バナ」



 美鈴の意図を汲んだ上でひよりは二人に笑いかける。彼女の笑顔は無理をしている様子は一切なかった。



「それじゃ、まず言い出しっぺの星乃から」


「え、わたし?」


「ほしのんもよく告白されてるよね?」


「……まぁ、たまに」


「たまにどころか、星乃も私とひよりに負けず劣らず告白されている回数は多い……でも、一蹴してるよね。いつも」


「彼氏とかいらないし。はい、私の恋バナ完」


「ほしのん早すぎるよ……」


「そういえば星乃って、入江には結構気を許してるよね」


「ッ!?」



 唐突に出た入江文学の名前に星乃は思わずお菓子を喉をつまらせる。



「い、いきなりなに?」


「いや、ふと思って。最初は入江のこと他の男子と同じくらいの距離感だったのに、最近は星乃からよく話かけてる。なにかあったの?」


「まぁ、確かに……気は許してるかもしんないけど、それはあいつはあいつなりにちゃんとひよりのことを考えてたりしてたから……まぁ、悪いやつじゃないのかなって」



 でなければ、いくら星乃であっても異性の家に一人で入ったりはしない。彼女は彼女なりにこれまでの入江を見て、彼の人柄を信頼していた。


 最近になってよく話しかけるよいになったのは、家に遊びに行くことが多くなったから。


 これも絶対言わないことだが。



「みーちゃんは好きな人とかいるの?」


「私は好きとかイマイチ分からないから……」



 美鈴はそう言いながら足をパタパタとさせる。


 二人は彼女らしい答えだなと思った。しかし、同時にこのタイミングで足をパタパタとさせるのは『らしく』ない。



「美鈴も良く告白されてるけど、その中でいいなぁとか気になる男子とか居ないの?」


「それは…………」



 足をパタパタし続ける美鈴に、ひよりと星乃が期待の眼差しを向けてくる。



『恋愛観なんて人それぞれだし。一番大切なのは芹澤さんが恋を楽しむことでしょ?』



 星乃からの質問を聞いて、思い浮かんだのは入江文学の顔だった。



「………………いないかな」



 なんだー……と、あからさまにがっかりするひよりと星乃。


 そんな二人を見ながら、美鈴は自分自身に驚いていた。



(……あれ? 今、どうして嘘をついたんだろう?)



 理由は分からない。ただ、美鈴はここで入江っていうのは何だか恥ずかしかった。



(……なんかごめん入江)




「うーん。それじゃ、生徒会の木村くんとかは?」


「……誰だっけ?」


「生徒会副会長で天馬の親友だよ。スポーツ万能だし、モデルもやってるんだ〜」


「そういえば、この前、木村が授業でサッカーのゴールシュート決めてる姿を見て女子たちがキャーキャー言ってたわ」


「アイドルかな……?」


「それくらい人気なんじゃないの? 女たらしらしいけど……」


「へー、そう……」


「みーちゃん、全然興味なさそう」


「……うん。イケメンとか、全然興味ない」


「あ、そういえば……今日の放課後、文くんが生徒会に呼び出されてたよ」


「ひより、その話。詳しく」


「い、いきなり食いついてきたね。えっと……」



 先ほどとは違い、かなり前のめりに喰いついてきた美鈴にひよりは困惑しながら答える。



「なんか、変な噂がたってるからその対応のためだって」


「どんな噂?」


「文くんが誰かを騙したとか、万引き常習犯とか……良くない噂」



 ひより、美鈴、星乃、一花。


 この4人は学園内でも男子から屈指の人気を誇る。そんな美女に囲まれている入江文学を妬む男子生徒が最近増えていた。


 おそらく、そんな男子生徒が入江を陥れるために流した噂なのだろう。



「天馬が動いてくれてるから、大丈夫だとは思うけど……」


「なるほど……つまり、入江は生徒会メンバーと関わってしまったということか……うん、ちょっとまずいかも」



 そう言いながら腕を組み、真剣な表情で考えこむ美鈴。そんな彼女を不思議に思いながらひよりと星乃は見つめる。



「……実は、二人と話し合いをしたかったことがある」


「話し合い?」



 首を傾げながらオウム返しをするひよりに美鈴はこくりを頷いた。



「どうすれば私たちでずっと入江文学を独り占め出来るのか」



「「え?」」



 美鈴の発言に二人は面を喰らってぽかんとした。



「独占って……あいつ、別に人気者じゃないでしょ」



 ため息をつく星乃に対し、美鈴は同意する様に頷く。



「そうだね。入江はぼっちだし、おどおどしてるし……人気者どころかちょっと浮いてるところもある」



 「さすがに言い過ぎでは……?」とひよりと美鈴は内心ハモったが表には出さなかった。



「でも、入江はかなりの人たらし」


「確かに!! みーちゃんのいう通りだよ」


「ひよりまで…………」


「ほしのん。天馬とはなちゃんを見てて同じことが言える?」


「………………」



 ひよりの指摘に思わず黙る星乃。


 確かに、天馬も一花も入江文学に対して随分入れ込んでいる節がある。



「それに、入江は用務員のおじさんと隠れてお菓子を貰うくらい仲が良い。本物の人たらしは、老若男女関係ない」



 ドヤ顔で語る美鈴に対し、ひよりは深く頷いた。



「このままでは入江はいろんな人をたらし込んでいき、いずれは私たちと遊ぶ機会も減って……私たちだけの入江ではなくなってしまう」


「そうならない様に、放課後や休日は全部私たちとの予定で埋めたりしてクラスで浮いているぼっちの文くんを私たちで囲い込んだら良いんだね」


「さすがひより、話が早くて助かる。そう、ぼっちで遊び相手が誰ひとり居ない今しかない」


「あんたたち……あいつに対してなかなか失礼なこと言ってるの自覚してる?」



 ひよりと美鈴が話し合い、それを呆れながら見つめる星乃。3人パーティは夜明けまで続いた。



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