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第18話 推しヒロインの独占欲


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 喉の渇きで目が覚めた。


 暗がりにうっすらと見える時計で時間を確認すると深夜の2時だった。日付なんかとっくに変わっているような時間帯だ。

 

 すぅすぅとみんなの寝息が聞こえる。


 結局、七瀬の誕生日会は盛り上がり、そのままゲーム大会へ突入、その場のノリと勢いで最終的にお泊まり会へとなった。


 リビングで寝落ちしたみんなを起こさないよう細心の注意を払って冷蔵庫からミネラルウォーターを飲んでいるとリビングの扉が開く。



「七瀬さん……?」


「あれ……? 文くん? 起きてたの?」


「ちょっと喉が渇いて……」



 七瀬は……おそらくお手洗いにでも行っていたのだろう。


 水を飲み干し、再び寝ようとしていたが、七瀬がこちらを見つめながらリビングのソファーに腰をかけて隣をぽんぽんと叩いた。



 少し迷ってから、七瀬の隣に座る。



「……今日は本当に楽しかった。流石にあの大きなクマのぬいぐるみにはびっくりしたけどね」


 

 思い出すかのように楽しく語る七瀬。


 なお、無事に俺と芹沢さんは「は? こんなのどうやってひよりの家に運ぶ気?」と月見さんに怒られました。


 文句を言いつつ明日のぬいぐるみ運びの手伝いを承諾してくれた月見さんは優しい。



「文くん、ありがとね……私一人じゃ、絶対逃げてた」



 今日は……いや、昨日と引き続き、よくお礼を言われるな。



「これは、七瀬さんが頑張った結果だよ」


「頑張った……か」


「……七瀬さん?」


「私さ、今日けっこう頑張ったよ?」


「……え?」



 今日? 頑張った? 

 あ、もしかして……天馬と一花がイチャイチャして辛かったけど、頑張りましたってことかな?



「文くんが天馬や花ちゃんと話していてもぐっと堪えたし、みーちゃんとイチャイチャしてても我慢して二人の話が終わってから声かけたし」


「え? う、うん……?」


「だから、頑張ったねって私を褒めながら、頭を撫でて」


「……へ?」



 思いがけない要求に言葉を失う。



「なーでーてー」



 固まった俺に構うことなく、催促してくる七瀬。


 ちょ、なんでそんな猛プッシュしてくるんだ? も、もしかして……甘えてくれている。のだろうか?


 頭を肩に押し付けてくる七瀬に観念し、彼女の頭を優しく撫でる。


 あ、すごい……七瀬の髪すごいサラサラだ。しかもいい匂い……



「……♪」



 なぜだかよく分からないが、七瀬は上機嫌のようだ。


 えと、あとは褒めたらいいんだっけ?



「えと、七瀬ー」


「ひよりって、呼んで」


「え、いや流石にそれは……」


「花さん」


「ひより、今日もよくがんばりました」


「えへへっ……」



 頭を撫でつつ名前を呼び褒める。


 なんか、特殊なプレイをしている気分になる。背徳感がやばい。



「……ねぇ、これさ……私達だけの日課にしない?」


「え、俺、これから毎日七瀬さんの頭を撫でるの?」


「私も文くんの頭撫でてあげるから……! 学校来られて偉い! って」


「俺の褒めポイント適当すぎない?」



 しかし、推しヒロインの頭なでなでか。


 ……ありかもな。特殊プレイさに拍車がかかってるけど。


 それに……



「こんなことが出来るのも今だけだし」


「……え? ど、どういうこと?」



 不意に放った俺の言葉に七瀬さんは過剰に反応した。



「多分だけど、七瀬さんは天馬への恋心に一区切り付けられたと思うんだ。だからこれからは新しい恋へと目を向けると思う」


「……それは、確かにそうだけど」


「きっと、気になる男子が出来て、勇気を出して告白して、俺の知らない誰かと結ばれて……」



 そうして、新たな恋の物語を紡いでいくのだろう。



「だから、こうして一緒にいられるのも時間の問題かなって。きっと、近いうちに恋人が出来て、七瀬さんは俺から離れていくだろうから」



 なんせ、七瀬はモテるから引くて数多だろうし……近い将来、休み場としての俺の役目も終わるだろう。


 だから。もし、七瀬に好きな人が出来たら



「俺も好きな人を見つけなくちゃな……」


「……は?」



 芹澤さんが言っていたように、誰かを本気で好きになって、真剣に恋をして。そんな七瀬を見ていたら、また恋をしたいと思った。



「もし俺が振られたらさ、その時は七瀬さんが慰めてよ。あ、告白が成功したら1番最初に報告するから」


「………………」


「そうだ。二人でファミレスとかに集まって、お互いの好きな人へのアプローチ方法とか、どうやって告白するかーとか、作戦会議とか開いてー」


「……いやだよ」


「……え?」



 両肩を掴まれ、体重をかけられてソファーに押し倒される。



「ち、ちょっと!? 七瀬さー」


「しっー……そんな大きな声を出したらみんなが起きちゃうよ? いいの?」



 人差し指を唇に当てながら、七瀬は微笑む。


 俺は思わず黙り込んでしまった。だってこんなところ、みんなに見られたら……



「……わたしは、構わないけど」



 俺の心を読んだかのような言葉を放つ七瀬。その頬はどこか赤くなっていた。



「ど、どうしてこんなことを……?」


「文くんはなにもわかってないよ」


「……え?」


「私、文くんが居ないと……もう」


「え、えと……な、七瀬さん?」


「ねぇ」


「は、はいッ」


「どうすれば……私のことだけを見てくれるの?」



 俺のことを見つめる七瀬の目はとても綺麗で、澄んでいて、だけどもどこか陰があった。



「私の……私の文くんなの。絶対に渡したくない。誰にも。だから、誰かに取られるくらいなら……いっそのこと、今」



 七瀬の顔が近づいてくる……このままじゃ唇が……



「……あんた達、なにしてるの?」




 はっと声のした方向へ目線を向けるとそこには不審そうに俺たちを見つめる月見さんがいた。










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