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第19話 3人の帰り道






「みんな、ここまで運んでくれてありがとう!」



 七瀬のお礼の言葉に俺と芹澤さんと月見さんの3人は親指を立てて返す。


 誕生日会の翌日、俺と芹澤さんは月見さんに手伝ってもらいながらも巨大クマのぬいぐるみを1時間かけて七瀬の家まで運ぶことが出来た。


 隣にいる芹澤さんはゼイゼイ言ってて辛そうだけど……


 七瀬に見送られながらも俺たちは自宅へと歩き出す。 



「……入江」


「……ん?」



 芹澤さんに声をかけられ、振り向くと彼女は一歩も動かず、座り込んでいた。



「……おんぶして。もう無理、歩くのだるい、しんどい、めんどくさい」


「えーと……月見さんにおんぶしてもらったら?」


「絶対イヤ」


「だってさ……ん」



 両手を差し出してくる芹澤さん。



「いやいや、ワガママ言ってないで、ほら自分で歩いて。置いていくよ」


「……入江」


「なに?」


「わたし、結構おっぱい大きいよ」


「仕方ないな。今回だけだぞ」


「いえーい」



 月見さんがゴミを見るような目で見てくるが、仕方がないでしょ。だって男はおっぱいが大好きなんだからさ。


 芹澤さんを背負って、再び歩き出す。


 背中に伝わる柔らかな感触…………意外と重いな。



「入江、今失礼なこと考えてない?」


「え? ああ、意外と重いなーってあ、ちょっと、頭をぽこぽこと叩かないで」


「今のはあんたが悪い」



 隣で歩いている月見さんにジト目で怒られる。


 あ、そういえば月見さんにまだ手伝ってもらったお礼言ってないな。



「月見さん。今日は手伝ってくれてありがとう」


「別にいいけど……ていうか、神藤と綾部さんにも手伝って貰えばよかったんじゃないの?」


「いや、関係ない二人は流石に巻き込めないよ」


「そうだよ星乃。こう見えて私たち、ちゃんと気を遣ってるんだから」



 背負っている芹澤さんから援護が入る。



「わたしにも気を遣って欲しかったんだけど……?」


「星乃は文句を言いつつも手伝ってくれるから気なんか遣う必要ない」


「ほっぺ引っ張るわよ」


「って入江が言ってた」


「殺す」



 おい、芹澤。俺を巻き込むな。


 頭は芹澤さんにポカポカと叩かれ、足は月見さんにゲシゲシと蹴られながらも芹澤さんの家まで着いた。



「……入江、背負ってくれてありがとう。今日も楽しかった……二人ともまた月曜日」


「ああ、お疲れさま」


「じゃーね」



 芹澤さんに見送られ、最終的に俺と月見さん二人だけになった。


 ちらりと隣を歩く月見さんの横顔を眺める。

 


 結局、深夜の件は七瀬さんが足がひかかって押し倒してしまったと説明してくれた。月見さんは最後まで怪訝な表情をしていたけど、それ以上の追求はしなかった。



「……なに」


「あ、いえ、別に」



 ……昨夜の件を追求される前にここで解散した方がいいかもしれない。



「……あ、えと。ここで一旦解散します?」


「なに言ってんの。一緒に帰れば良いじゃん。昨夜のことも詳しく聞きたいし」



 デスヨネ。



「幸い、わたしたち近所っぽいし時間はたっぷりあるから」


「はい……」


「……で、なにしてたの?」


「それは……」



 とは言っても、どう説明すればいいのだろう。正直、俺もなんで押し倒されたのかよくわかってないし。



「……なに、言えないようなことしようとしてたわけ?」


「あ、いや……なんていうか、とりあえず状況だけ説明するとー」



 とりあえず、深夜に目が覚めてから月見さんが乱入するまでの流れを説明した。



「なるほどね……押し倒したのがあんただったら話は簡単だったんだけど」



 月見さん、顔が怖いです……



「ひよりは、自分が誰にも取られたくないと思っているものに対して、すごい執着心と独占欲を見せることがあるから……」



 え、なにそれ、知らなかったんだけど……

 少なくとも『てんいち』ではそんな一面見たことがなかった。



「神藤の時は別にそうでもなかったのに……」



 はぁ……と呆れるように彼女は大きくため息を吐いた。そしてジトっとした目で俺を見てくる。



「……な、なんですか」


「………………別に、なんでもない」



 えぇ……絶対なんでもないやつじゃん。



「とりあえず、こっちに飛び火が来ないように気をつけないと……ていうか、いつまで一緒に帰る気? もうわたしの家に着くんだけど」


「俺の家はこのマンションの4階だよ」


 丁度、俺が住んでいるマンションの入口に着いた。その瞬間、月見さんは呆然と足を止めて立ち尽くす。



「……うそでしょ」



「月見さん?」


「……わたし、このマンションの5階なんだけど」



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