表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[k]night [silent - k - 黙示]  作者: 成橋 阿樹
第一章 使命
26/33

第25話 cunning approach - sly fox trap

 ルーファスと共に来ていたknightの一人が、外で武器の手入れをしていた僕とラドの前に来た事があった。


 ルーファスのいたknightly orderを領主が迎え入れたとはいっても、全てが残った訳じゃない。

 領主にしてもknightly orderを二つに分けてしまうのは、派閥的なものが出来てしまう事も避けたかったのもあり、当然、一つの部隊として成り立たせた。

 そこに入りたい者は入ったが、他へ移った者もいた。

 僕たちの領主はknightはknightとして迎え入れたが、他に移ったとはいえ、そこではknightとして迎え入れられるかは分からない。

 mercenaryとしてFree companyに属した者もいるだろう。



『ウィットフォードとグレンフィルだっけ。あんたたちは従者を持たないんだな。馬だって武器だって、装備を見たって分かるが、何人か引き連れていてもいいくらいだ。だってあんたたち、knightの中でもトップクラスだろ』

 彼の言葉に僕とラドは顔を見合わせた。

 呆れる僕は答える気になれず、ラドは、ふうっと息をつき、仕方なしにと彼に答えた。


『馬の世話には専門の『marshall(マーシャル)』がいる。防具と武器の定期的なメンテナンスはそれ専門の『blacksmith(ブラックスミス)』に任せている。俺たちが『knight』であるように、それが彼らの仕事だからな、それ以外の事は自分たちでやるよ。従者は必要ない』

『まあ、ここには大きな厩舎もあるし、俺たちにしてもmarshallやblacksmithにやっては貰うが、今あんたたちがやっているような事は従者がやるような事だろ。じゃあ、メンテナンスする時も、自分で頼みに行くのか?』

『当たり前だろ、自分たちの武器なんだから』

『ふうん……珍しいな』

『珍しい? 俺たちにはそう思う方が変わってると思えるが』

『そう言うんだったら、『esquire(エクスワイヤ)』だってそういったもんだろ? そういった役割がいなければ、自分の時間なんか出来ないしね。こうやってふらふら歩けないだろ? ああ、そうだ、今から飲みに行くんだが、一緒に行かないか? 手入れが終わらないって言うんなら、俺の従者にでも』


 僕とラドは考える事もなく即座に答えた。


『『断る』』


 同時に答えた僕たちに彼は顔を引き攣らせたが、離れたところから彼を呼ぶ声に振り向き、去って行った。

 彼を呼んだ男の目線が僕たちに動き、ニヤリと見せた笑みに苛立ったのを覚えている。

 そいつがルーファスだと知ったのは、その数日後に奴が僕たちの元に直接来たからだ。



 領主に呼ばれていた僕とラドは、領主の話を聞き終えた後、邸宅を出ようとしていた。


『なんだか連れが失礼な事を言ったみたいだね』


 そう言ってルーファスは僕たちに近づいてきた。

 別に、とラドが呟きながら、奴の脇を擦り抜ける。僕はラドと共に歩を進めた。


『領主との話ってさ、mercenaryの事だろう?』

 僕たちを引き止めるようにルーファスはそう言った。

 振り向く僕たちに、奴は言葉を続けた。


『Free company。俺たちがここに来る前、俺たちの領主が健在だった頃だけどさ、その頃から抜けていく奴はそこそこいたんだよ? 一人抜け、二人抜け……それは他のところからもあってね、そうして集団となって出来たのがFree companyって訳』

 奴を振り向き、足を止めた僕たちへと歩を進めて来る。

『統合される事になって、残った者と移った者がいるだろう? 移った者の大半はFree companyに属している。知り合いがいるからね、入るにも入り易いってもんだろう?』

 僕たちはルーファスと向かい合ったが、言葉を返さなかった。


『そのFree companyが勢力を増している……誰彼構わず襲い、奪っていくしね? 領地はあれど、気を引くまでもない小規模な地でも、主を持たないmercenaryには魅力的なんだよ? 直属軍もなく、いたとしても少人数……まあそれも、門番的なもんで戦力は無いに等しいしね? それに……』

 ルーファスは、意味ありげに口元に笑みを浮かべ、言葉を続けた。


『そういった領主を引き込み、操るも容易いって訳』


 僕は、ルーファスをじっと見ると素っ気なくも言う。

『Free companyに興味があるようだな』

『そんな事はないよ? だってさ……』


 ルーファスが話す内容は角が立つような事でもなかったが、特に興味を引く事でもない。

 気の向かない相手の話が印象に残る事はなく、こっちから深く会話を広げる事もなかった。

 戦場に向かえば目的は一つであり、戦闘で人とぶつかり合っているのが多いだけに、内部での揉め事は避けたいのも本音だ。

 奴が口にする言葉は真っ当にも思えるが、その言葉の節々には同意を求める疑問符がある。


 やっぱり……この目は嫌いだ。

 探るように僕の目の奥を見る目つき。それを笑顔で隠している。まるで仮面だ。


 言葉を向ける相手の反応を窺っているのか、それで互いの距離感を計っているのだろう。



『knightにはknightの誇りがあるだろ?』



 その言葉を言う事で、相手との距離感を近づけようとするように。


 話し掛けられたら話す程度、それだけでいい相手だった。

 だが、ルーファスは、僕とラドの姿が見えると直ぐに近づいてきた。

 周りからすれば、僕たちは仲がいいと思った事だろう。

 本音で話す事など、互いにはなかったが。


 そんな過去をぼんやりとも思い返しながら、レイフの言葉を聞く。

 今思えば、あの時から奴はトラップを仕掛けていたのだろう。


「殺されているknightは、奴の企みに気づいたknightだ」


 レイフの言葉に 僕は笑わずにいられなかった。

「ははっ。あははははっ。これは愉快だ」

「おい、カイ……」

 突然笑い出した僕を、どうしたんだと心配そうにも見るレイフだったが、怪訝にも眉を顰めた。

 僕は、笑みを浮かべた表情でレイフを見ると口を開く。

「ああ、重なったんだよ」

「重なった? 何が?」

「僕が誰に殺されたのかって話だ」

「ああ……」

 僕の表情とは反対に、レイフの表情が翳りを見せた。

 レイフの目が真っ直ぐに僕を見る。僕が何を思って笑ったのかを察したようだ。


「僕を殺したのは仲間なんかじゃない……」


 僕はあの時、レイフに言われた言葉の答えを。


 今、はっきりと返した。



「敵だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ