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[k]night [silent - k - 黙示]  作者: 成橋 阿樹
第一章 使命
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第23話 merchant of death

 |Rufus・Knightleyルーファス・ナイトレイ

 気安く、人当たりはいいが、極めて狡猾な男だ。


 奴は剣は苦手だと、接近戦とはいえ長柄の分、距離を取れる長槍、パルチザンを使っていた。

 パルチザンは幅広の三角形の刃の根元に、小さな翼のついた武器だ。

 槍を刺されてもそのまま突き進んで来る奴もいる。その為、敵を刺しても翼部分で止まり、それ以上近づけさせない。

 敵が刺さったまま柄を取れば、武器を捨てるしかなくなる。それを避ける為でもある。


 まあ……ルーファスの場合、それも騎乗での戦闘だ。武器を捨てたとしても逃げ切るだろうが。

 逃げて行く敵を追い、パルチザンを投げつけて倒していた事があった。

 それからか、あいつは次第に投擲(とうてき)を好むようになった。

 馬の走る速度を利用し、武器を投げつける。

 そのやり方は戦闘というより、まるで狩りだ。

 その戦い方はknightとしての品位に欠けると批判する者もいたが、資金的にも余裕のあるルーファスは、資金不足で装備が不十分な者に防具や武器を与えていた。特に一人のknightを主とし、従騎士として仕えるesquire(エクスワイヤ)、knightの志願者にだ。

 それを目当てにか、ルーファスの周りには人が集まった。だからといって従騎士からの信頼とか忠誠がルーファスに向けられていたかどうかは微妙なところだが、それはルーファス自身、どうでもよかったようだ。

 領主である主に忠誠を誓ったknightであっても、本当のところは分からないのが正直なところだが。

 所詮、表向きであっても、敬意を示されれば自身にとっての誇りになるのだろう。


 そもそもルーファスは、領主が援軍として迎えた|knightlyナイトリー orderオーダーの一人だった。

 だが、ルーファスが仕えていた領主が病に倒れ、僕たちが仕えていた主が行く場を無くした彼らを受け入れた。

 結果的に勢力は拡大する事にはなったが、仲間になったとはいえ皆が皆、互いを信頼出来る訳でもない。

 それでも戦場に立てば、目的は同じだ。

 |coat of armsコートオブアームズが敵か味方かをはっきりさせるだけあって、敵意を向けて来る兵士を迎え撃たない者はいないからだ。


 戦闘が繰り返されるごとに、防具の性能が上がり、防具の性能が上がれば武器の性能も上がる。それに従って戦術も変わっていく。

 剣はプレートアーマーを突き刺せる程の丈夫さと鋭さを持ち、レイフが持つようなポールアックスにしても打撃と斬撃でプレートアーマーを打ち破れるように作られたものだ。

 そんな中でルーファスは新たな武器を手に入れる。それが銃だ。

 威力は絶大だがその銃は重く、命中率が低い。とても性能がいいとは言えないものだったが、銃声は威嚇には最適で相手側の突撃兵を混乱させる。銃声が聞こえた方向を警戒し、足が止まる。その隙を狙って攻撃するといった具合だ。

 だが、火薬を使うその銃は撃った後、リロードに時間が掛かるのが難点で、剣や長柄武器で戦う者が殆どであった中、銃の使い方はその程度のものだった。

 新たな武器を手に入れて、それだけでルーファスが治まるはずもない。

 いち早く入手した銃を広め、売り込む……それによってまた戦術が変わる。

 奴が様々な武器を手に入れる事が可能だったのは、武器商人と繋がっている……その互いの存在は利潤獲得の手段として成り立っている。

 そしてそれは敵味方を問わない中立の立場だ。


 戦いの勝敗は武器によっても決まるが、同様の武器を手にしても上手く扱えなければ勝機は見えない。

 今もオーバーワールドで繰り広げられている戦いに、武器の売り込みは大きく動いた事だろう。

 なにせ、この戦いの目的も目的だ。

 それは……とても大きく。僕の想像を遥かに超えている事だろう。


 ……ルーファス。



(サー……サー……どうなさいましたか)


「あ……ああ」

 考え込んでいた僕を、レミュはずっと呼び続けていたのだろう。

「思い出していたんだ。何が起きていたのかを……そしてこれから何が起きるのかを考えていた」


(……そうですか)


 レミュは、心配そうな顔で僕を見上げている。

 僕はレミュを抱き上げると膝に乗せ、そっと撫でた。

 

(サー……)


 心配そうな顔が変わらないレミュに、僕は笑みを見せたが、それは苦笑になった。


(サー……わたしではサーのお力になれませんか?)


「そんな事はないよ。今までキミには随分と助けられた。今、ここに僕がこうしている事が出来るのもレミュ……キミのお陰だよ」


(でも……)


「キミはこれからだって、力になろうと僕を思ってくれるんだろう?」


(もちろんです、サー)


「その思いがもう……僕には十分、力になってるよ」


 僕は、レミュを肩に乗せると部屋を出た。


(サー、どちらへ行かれるのですか? 少しはお休みになられた方が……)


「ああ。今はこの邸宅から出たりはしない。どうやら……」

 部屋を出た僕は、左方向へと目を向ける。


「……カイ」


 同様に部屋を出て来たのはレイフだ。

 その表情は強張っている。


「気づいた事は互いに同じという訳か、レイフ」

「……ああ。来てくれ、カイ」

 レイフが自分の部屋へと僕を招き入れた。


 レイフにしても自分が受けた傷を調べたのだろう。

 ベッドに眠るレイフの肉体には、僕の肉体と同じに銃創があった。


「カイ……俺は確かにラドルと戦ったんだ。それなのに、この体には剣で受けた傷がない。あの時……ラドルは急に俺の方へと方向を変えたんだ。dual swordでね……あいつがdual swordで戦おうとしたって事は、本気だって事だろ。だから……」

「ラドと戦う事になったという訳か……」

「ああ。あいつにしてみれば、行く手を塞がれたって事だったんだろう。俺を倒さなければ、向かう先にも向かえないからな……剣で受けた傷がないって事は……今になって思えば気絶でもさせようとしていたのかもしれないな」

「バックソードは片刃で刃の背が厚いからな。レイフもプレートアーマーつけてたんだろ?」

「ああ、ハーフだけどな。それでその後に俺は倒れ、気づくとアンダーワールドって訳」

「ラドに殺されたと思ったのも……そういう事か」


 レイフは、気持ちを入れ替えるようにもふうっと深い息をつくと、真剣な表情を僕に向けて言った。



「カイ……あいつの目的は、あいつ一人で達せられる事じゃない。ラドルを止めに行かないか」

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