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危機回避・未来  作者: 中野翔
私に危機回避能力は必要ない→私の万能は使えなきゃあてにならない
52/59

惨劇



    

  爆破事件のニュースが全国ニュースで流れる中、幸磨・月冴は炎樹の提案で目的地不明のドライブ

 へと出かけていた。

  「炎樹、いい加減教えてくれよ。俺達はいったいどこへ向かってるんだ?」

  出発する前に月冴は炎樹に同じ質問をした。しかし、炎樹は答えてくれず、うやむやにされたまま

 三人は車に乗り込んだのである。

  「まぁまぁ、そう焦んなよ。着いてみたら分かるって」

  「着いてみたらって……お前なぁ…」

  月冴が炎樹の言葉に呆れて頭を抱えた時、ちょうど信号が赤から青に変わる。そして、三人が乗る

 車が交差点内に入ったその時、左から普通車が猛スピードで走行してきた。幸磨は恐怖のあまり、

 目をぎゅっと瞑り、心の中で助けを求めた。すると普通車が接触するかしないかというギリギリの

 ところで三人の車はなぜか交差点からわずか少ししか離れていない場所へと移動していた。

  「うっ、嘘……」

  車ごと瞬間移動したために、幸磨の頭は混乱。状況が全く理解出来ずにいた。

  しかし、幸磨とは裏腹に月冴と炎樹は冷静で、自分達が先程までいた交差点へと戻り、普通車の

 末路をこの目で確かめに向かった。

 

  「ひどかったな…」

  「あぁ…ひどい有様だった」

  衝突しようとした普通車は他の車数台と歩行者を巻き込む惨劇を起こしていた。普通車を運転し

 ていた男性は車の中で死亡しているのを発見。警察が来る前に男性の所持品などを調べるが、自分

 達とは関係ない一般人だということが判明し、二人は普通車の側を離れたのだった。

  「あのまま交差点にいたら、俺達もあそこで死んでたんだろうな」

  「そうだな。けど、こう君のおかげで助かった」

  「宮木…愛美奏か」

  炎樹が愛美奏の名前を口にすると、月冴は足を止める。それと同時に炎樹の足も止まった。

  「あの人なら、一瞬にして解決しちゃうんだろうな。今回のことだって最初から知ってて…」

  「やめろっ!」

  最後まで言い終える前に月冴がそう言って制止させる。

  ここに幸磨がいなくて良かった。もしいたら、きっと炎樹と一悶着あったかもしれない。

  「確かに彼女は俺達よりも強い力を持ってるし、こうなることは予想出来ただろう。けど、俺達

  に彼女を責める資格なんてない」

  「違う、俺はそんなことを言ってるんじゃ…」

  「分かってる。けど、俺達に彼女を責める資格なんてねぇよ」

  「月冴…」

  責める資格はない。それは、とても重たい言葉…。

  正常なことを言っているはずなのに、異常だと思われてしまう彼らの中での常識。

  家という名の組織を離れ、一般人と混じっての生活に慣れ始めた課題に思い切りぶち当たっていた。

  正常と言う名の一般常識を取るか、それとも異常と言う名の家名常識を取るかで…。

  

  「月冴君!」

  静寂化した二人の間に、救世主が訪れる。

  振り返ってみると、幸磨が運転手を引き連れて走って行く姿。月冴と炎樹は驚いた後、すぐに

 彼の元へと駆け寄る。

  「こう君。ダメだよ、外にでちゃ!」

  「そうだよ。危ないよ」

  月冴と炎樹はそう言うと後ろに控えている運転手を睨みつけた。

  彼が外に出ることを止めなかったことへの怒りが湧いていく。

  「ごっ、ごめんね。でも、全然戻ってこないから心配して…僕が無理に頼んだんだよ」

  「「っ!?」」

  事情を聞いた後、二人は睨みつけるのをやめた。そして…。

  「ごめん。俺が余計なこといったせいで、戻るのが遅くなったんだ」

  「いや、俺の方こそ、近くまで戻ったからって気を抜いてた。ごめん」

  自分達のことを心配して来てくれた彼の気持ちを二人は無駄にしたくはなかった。

  幸磨に謝罪した後、三人は運転手と一緒に車に乗り込み、その場を立ち去る。

  普通車が起こした一件は、後に警察の判断により交通事故とされ、被疑者死亡として処理される

 こととなった。

  

  

  

  

    

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