鳶影と彼女
清合町には超能力・能力に関する研究を行っている能力科研究所がある。そこではある人物の
個人的な依頼により遺伝子の分析と研究が進められ、本日も一部の研究者が夜中まで作業をして
いたのだが…そこへ音を立てることなく部屋へ忍び込む男達の姿が。しかし、研究者には目もくれ
ずに男達は手分けしてあるものを探した。そして、彼らは目的の物を見つけ出すと、それを奪って
脱出。その後、用意していた爆弾を使って、研究所を爆破して暗闇の中へと姿を消した。
この爆破事件は翌朝のニュースに取り上げられ、特殊部隊保護棟にいる柊瑞生と愛咲実。そし
て…研究所に依頼した人物とその関係者の耳に届くことになるのだった。
幸磨と月冴がいない菊馬家で、鳶影鉄心は研究所爆破事件のニュースを一人で見ていた。
愛美奏と十六夜は部屋におり、轟鬼は近辺警護に行っていてリビングには彼しかいなかった。
「あそこにはあいつの………があったはず。だが、なぜその情報を奴等が知って……まさか内通者
が中に…………」
誰もいないことを良いことに鳶影はぶつぶつと独り言を呟いている。しかし、その独り言を本人
の近くで堂々と聞いている者がいた。それは…。
「ねぇ、ちょっと」
「あっ?」
真剣に考えているところを邪魔されて、鳶影は声をかけてきた人物をギラッと睨みつける。
だが、その人物の姿を見て鳶影の怒りは静まってしまう。
「あんた、私がいること忘れてたでしょ?ニュース見るなり一人でぶつぶつ言いだして」
突如現れた一人の女性は、鳶影に対して怒りを露わにする。どうやら、無視されたことに相当
お怒りのようである。
「はぁ?別に忘れてたわけじゃねぇーし。それより、なんでお前…」
最後まで言い終える前に、彼女の右手人差し指が鳶影の口を塞ぐ。
「いいじゃない、今は二人だけなんだし。それに…今回の事件は、私達が原因だから」
「…」
先程の無視された怒りはどこかへと消えて、彼女は次のように語り始めた。
「あそこには…菊馬美月の遺伝子が保管されてた。菊馬家・鳶影家、そして…鬼丸家を救う
ために彼女が生前に自らの遺伝子を提供した。今じゃなくても、子孫達が自分よりも長く
生きられるようにという願いをこめて。ただ……きっかけがあれなのよね。思い出したくな
いけど」
彼女の目つきが急に変わるのを鳶影は見逃さなかった。その理由は彼も知っている。
あれは鳶影にとっても忘れられない出来事だったから……。
「あれは獣の欲望が引き起こした争い事だ。お前が責任を感じることはない」
「分かってる。でも…あれは、っン!?」
彼女の口を今度は鳶影が塞いだ。数秒間の沈黙後、鳶影が彼女の側を離れる。
「安心しろ。この俺が最後までお前を守ってやるよ。例え死んでもな」
「…」
「だから、さっさと戻れ。いつまでもそんなだと調子が狂うからよ」
鳶影は照れくさくそう言うと、リビングを出て行った。
その後、残された彼女の姿はなく…代わりに子機03の姿があった。




