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危機回避・未来  作者: 中野翔
私に危機回避能力は必要ない→私の万能は使えなきゃあてにならない
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夜中のお喋り




    午前1時過ぎ。幸磨はふと目を覚ますと、二人を起こさないようにそっと寝室を出た。

    向かった先はお手洗い。自分の家と勝手が違ったため、最初は戸惑っていたが、5分後には

   寝室へ戻り襖を開けると…。

    「どこ行ってたの?」

    開けた途端、月冴が目の前にいて幸磨は「うわっ!?」と思わず声を上げる。

    「月冴君…脅かさないでよ」

    「それはこっちのセリフだよ。起きたらこう君がいないんだもん」

    月冴が目を覚ましたのは、幸磨がお手洗いへ行った後。隣で寝ているはずの彼がないことに

   月冴は一瞬戸惑うも、幸磨の足音を聞いて彼が戻ってくるのを待ち構えていたのである。

    「ごめん。トイレに行ってたんだよ」

    「もう~なんで起こしてくれなかったの?」

    いくら炎樹の家だからと言って油断ならない。もし敵が住宅街に侵入し、一人でいる幸磨と

   遭遇したら彼の命が危険に晒される。肝心な時に彼の側にいなければ、守れるものも守れない。

    「起こしてくれたら、俺も一緒に行ったのに」

    「うーんー……それだけで起こすの悪いかなって思っちゃって」

    月冴の心配とは裏腹に彼が自分を子ども扱いしていることに幸磨は若干うざったく感じていた。

    「今度からちゃんと起こしてよ?」

    「あぁ…うん。分かったよ」

    事情を知らない幸磨は後々めんどうになるのを恐れて、仕方なく承諾する。

    これで話は終わり…かと思っていたが。

    「ねぇ、まだ少しだけ起きてない?」

    「えっ?」

    「ほらっ、明日学校休みだし。それにこんな時間に起きてることなんて滅多にないでしょ?」

    「そうだけど…何するの?」

    起きているのは構わないけど、その時間いったい何をするのか。幸磨は月冴に尋ねてみる。

    「大丈夫。ただのお喋りだから」

    「お喋り?」

    「そっ。家から出ないし、安全でしょ?」

    「…うん」

    炎樹が寝ている中、幸磨と月冴は夜中のお喋りを始めた。

    「こう君ってさ。小さい頃のことって覚えてたりする?」

    「小さい頃?」

    「そっ」

    「…あまり覚えてないけど…お母さんが亡くなった時のことはよく覚えてるよ」

    「そっか」

    幼い頃に母親を亡くした幸磨にとって、それは悲しい記憶。今でもその記憶を思い出すこと

   があり、自分の父親のことが許せないでいる。

    「けど、こういうの不謹慎かもだけど。俺はこう君が羨ましいよ」

    「羨ましい?なんで?」

    幸磨は月冴にそう尋ねる。

    「俺、父親は知ってるけど、母親のこと何にも知らないから。物心ついた頃にはもういなく

   てさ」

    「月冴君のお父さんって…だいぶ前に家で喧嘩してた人…だよね?」

    「そうだよ」

    「月冴君もお父さんのこと嫌いなの?」

    「うーんー……嫌いというより、父親として見たことないからね。生みの親だけど、育てて

   もらったのは別の人だから。親って言うより…喧嘩仲間って感じ?」

    それはそれで父親として悲しい気がする。

    「お母さんのこと聞いたりしなかったの?」

    「うーんー…何度か聞く機会あったけど、俺も家の仕事とかして忙しかったから。結局、

   聞けなかった」

    「そうなんだ」

    「親父のことだから、きっと仕事で見つけてきた若い女に俺を産ませたんじゃないかって

   思ってるんだ」

    「えっ、それって…「計画的犯行だよ」

    幸磨がその先を言う前に月冴がセリフを被せる。

    あくまでも推測なので、それが事実かどうかは月冴の父親に聞いてみないと分からない。

    だが、月冴は自分の父親の仕事をある程度知っているため、その可能性もあると本気で思

   っていた。

    「まぁ、俺の出生なんて別に今更知りたくもないけどね。知ったところで何も変わらない 

   し」

    「そうだね…でも、月冴君が言ってるように計画的じゃなきゃいいなって僕は思うよ。

   僕は月冴君のお父さんのこと良く知らないけど…そんなことするような人には見えなかった

   から」

    「…そう」

    月冴は口にはしなかったが、自分とその父親のことを知らない彼に『甘い』とは言えなかった。

    人は見かけによらないという言葉があるように、いい人悪い人を外見だけで判断することは

   出来ないのだ。それをこの子はまだ知らない…でも、知ってほしくない。


    もし、知ってしまうと……関係が崩れてしまうかも。

    もう元に戻れないかもと言う恐怖が月冴の心を襲う。

    けれど、いづれは知られるだろう。それならばいっそのこと、この場で打ち明けてしまえば

   良いんじゃないかと考える。だが、この純粋な少年の顔を見ると、でかかった言葉が引っ込ん

   でしまう。

    大切なものだからこそ、真実を告げる勇気が出ない。

    いざ言おうとすると、タイミング悪く邪魔者が来たり、やっぱり言えないと別の話を持ち

   出したり…告白はいつの時代でも難しいようだ。

    

   

    

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