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危機回避・未来  作者: 中野翔
私に危機回避能力は必要ない→私の万能は使えなきゃあてにならない
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高級住宅街




 ●●市は、清合町含む市町村の県庁所在地であり、炎樹は●●市にある高級住宅街で

  今年の春から一人で暮らしている。本来なら希愛中学校近辺でアパートを借りるはずだったが、

  炎樹は父親の命令により、仕方なく●●市の家に移り住むことになる。しかし、その高級住宅街

  には一般市民の侵入は許されず、新聞購読に保険セールスといった勧誘も受け付けない。そして

  何より不気味で本当に人が住んでいるのかすらも怪しいと、夏になると好奇心旺盛な若者が面白

  半分で肝試しに行くと、雨が降ってもないのに水滴が落ちてきたり、頬が急にひんやりしてなぜか

  濡れたり、段差もない所だったのに突然つまずいてこけたり、どこからか不気味な声が聞こえて 

  きたりして、肝試しに来たと思われる若者達をそうやって追い返しているという。これは、●●

  市の非公式七不思議とされ、現在も市民達の間で噂されている。


  

   「●●市に住む人達には内緒なんだけど、ここの土地や建物は全部俺の父が購入して建てた

  ものなんだ。本来ならそこに別邸を建てる予定だったらしいけど、突然父が計画を変えて今の住宅

  街を作ったらしい」

    住宅街に入り、三人は車を降りて周囲の家を周っていた。炎樹の説明を受けて、幸磨は驚いて

   いたが、月冴はあまり驚かなかった。それよりも月冴は幸磨をもっと驚かせる。

   「炎樹の実家は、こう君と俺が初めて会った場所なんだよ?覚えてる?」

   「えっ!?あの家がそうだったの?」

   「そうだよ。炎樹のご先祖様は代々あの家に住んでるんだ」

   「先祖代々……すごいね」

   「そんなことないよ。かなりのボロ屋敷だし」

   「おいおい、そんなこと言っていいのか?怒られるぞ」

   「父はいないから問題ないだろ。それに……俺、父親のことそんなに好きじゃないから」

   

   炎樹が父親のことを好いていない理由、その一つは自分の母親のこと。彼は自分を産んでくれ

  た母親の顔・名前も一切知らずに育てられた。物心ついた頃には既におらず、父親に尋ねても

  『お前の母親は死んだ』としか教えてもらえなかった。そしてもう一つの理由は、結婚のことだ。

   まだ中学生、未成年である炎樹に父親は本人の意思に関係なく将来の結婚相手を決めており、

  彼が成人する頃には結婚しろと命じられる。まだ婚約者の素性は明かされていないが、炎樹は

  父親の決めた相手との結婚には応じないと決めている。それに、彼の父は当時16歳の頃に親

  が決めた婚約者との関係を解消。その後、別の女性との間に炎樹を儲けたという話を聞いていて、

  自分も親が決めた相手ではなく、自分で決めた相手と結婚したいと望んでいる。父親の不満は他

  にもあるが、この二つが炎樹が父を好かない大きな理由となっている。

   

   「すまない。急に変な話をした。今のは忘れてくれ」

   「炎樹…」

   「なに、お前まで暗い顔すんなよ。大丈夫だ」

   『大丈夫』というが、長い付き合いである彼のことを月冴は心配する。

   自分も産んでくれた母親のことを知らずに育ち、父親のことは大嫌い。そういうところが、

  二人の共通点で似ているところがあった。例え就いている立場が違えども、月冴と炎樹はお互い

  大切な存在であり、失いたくないものだと認識している。だから……。

   「別に心配してるわけじゃねぇ…けど」

   「けど?」

   「俺はいつでもお前の味方だから、そのことだけ覚えといてほしい」

   「…あぁ。ありがとう」

   その後、月冴と炎樹はしばらくの間、お互いの目を見て喋ることが気恥ずかしくなったのだった。

   

   

   

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