騒動後、公衆電話にて
不審者騒動により、学校は本日の授業を午前で切り上げ、明日を臨時休校すると生徒に伝えた。
しかし、一部生徒と教員らは授業終了後、警察の事情聴取を受けることとなり、幸磨・月冴・
炎樹の三人と担任の霜月は、自分達の教室で警察官から約一時間ほどの取り調べを受けた後、
ようやく帰ることが許されたのであった。
「あぁ~やっと解放されたぁ~」
「お腹空いちゃった…何か食べたい」
「俺の家行く前にまずは飯食べに行くか」
「その前に家に連絡しないと。お母さん、今日のこと知らないし」
「あぁ~…そうだな。えっと、電話……」
「あそこだよ。学校の電話」
月冴が指差す方向に年季が入った公衆電話があった。炎樹はあれをただの置物かとばかり
思っていたが、実際はまだまだ現役で使用できる立派な電話である。しかし、これを使うには
ある物が必要なのだが………。
「あれ?…おい、うんともすんとも言わないぞ?壊れてるんじゃないのか?」
「炎樹君、それお金かカード使わないと使えないんだよ」
「えっ?」
公衆電話はお金もしくはテレホンカードを使わなければ、通話することが出来ない仕組み。
炎樹はこれまでの人生で公衆電話というものを使う経験がなかったため、公衆電話を無料で
通話できるものだと勘違いしていた。一方の幸磨は祖父・一真に緊急時の際に使えるようにす
るため、実践テストを行っていたため、公衆電話の使い方はマスター済み。そして、月冴の
場合は、たまたま学校の公衆電話を使用している生徒を目撃して、そのやり方を目で見て覚え
ていたために、使い方を知っていた。つまり…知らなかったのは、炎樹一人である。
「お金をここに入れて、電話番号を押したら通話出来るよ」
「人生初の公衆電話だな。炎樹」
「月冴、てめぇ…後で覚えとけよ」
そう言いながらも、炎樹はお金を入れて、菊馬家の電話番号を入力して電話を掛ける。
さて、人生初の公衆電話で菊馬家に繋がるであろうか………数秒待つ。
『はい。もしもし?』
繋がった。
「あっ、もしもし?僕、東炎樹ですが…子機03さんでしょうか?」
『はい、私は子機03ですよ。こんにちは、炎樹君』
おかしいのか子機は笑いを堪えながら炎樹に答える。
「あの…今、幸磨君達と一緒にいるんですけど…今日、僕の家に泊めても大丈夫でしょうか?」
『炎樹君の家に?でも、ご家族の方、ご迷惑じゃないの?』
子機がそう言い終えると、『おい。ちょっと変われ』と男性の声がした。そして…。
『炎樹。どういうつもりだ?』
「…鳶影さん。なぜ貴方が幸磨君の家に?」
相手が鳶影に変わった途端、炎樹の口調は変わった。
『仕事終わりのついでによっただけだ。それより、二人を家に泊めるってどういうこった?
お前等命狙われてること分かってねぇーのかよ』
「分かっているからこそ、二人をこちらで守る手段を取りました。菊馬家で守るより二人を
側に置いていた方が守りやすいですからね」
『…炎樹。俺は知らないからな』
「えぇ、どうぞ。俺も貴方の力を貸してもらおうだなんて考えてもいませんから」
炎樹の言葉に鳶影は舌打ちをすると、黙って電話を切った。
電話が終わった後、月冴が耳打ちで『どうした?』と尋ねてくる。
「いや、心配ない…たぶん」
「たぶん?」
子機と途中まで話は出来ていたが、鳶影の乱入で完全な許可を得ることはできなかった。
しかし、再度電話するとまた彼が出てくることを考えた炎樹は「大丈夫、責任は俺が取る!」
と二人に意地を張って、学校を出たのだった。




