黒き力再び
昨夜の一件は外部からの侵入者が女子生徒を拉致しようとしたと電子生徒手帳により通達。
内容は間違ってはいないが、この通達を寮部屋で見た愛美奏は読み終えてすぐその通達を
消去すると床へ思い切り叩きつけた。
「くそっ………」
愛美奏はどこかへぶつけたい怒りを床にぶつけた。どうしてこうなってしまったのか、どう
して自分は万能無しではこんなに無力なのかを何度も何度も考えては、怒りと悲しみに溺れて
自分の心を自分で抉る。
今彼女の心はとても脆くなっている。危険を承知で助けに来てくれた姉は、不法侵入で人型
ロボット達にどこかへと連行されて居場所が分からない。そして、何より彼女の心を傷つけた
のはクラスメイトの裏切りだ。笑馬のことを友達とは思ってはいなかったし、好きでもなけれ
ば嫌いでもないが、それでも少しは好感を持っていた。そんな彼が任務により自分を監視して
いたとは思ってもおらず、真実を知った際はとても驚いたし強い怒りを抱いた。だから……。
「やっぱり、目覚めなきゃ良かった…こんなことになるぐらいなら………死んだ方がマシだわ」
もういっそのこと、ここを私の墓場にしましょうかね。
自分で蒔いた種…自分が犯した罪なのだから……そう。私は所詮、世間で言う問題児。
愛美奏は自暴自棄に陥ったところで、彼女の身体から黒い煙が大量に発生。そして、煙は彼女
の部屋を抜け出し、学校の外へと飛び出した。
「あの子の力が残っていたか…。私の怒りに反応したか?…まぁ、そんなこと今はもうどうだって
いいか」
彼女から飛び出した力は、マリアが持っていた『モーニングスター』。
マリアから一度取り出して具現化した時点で、愛美奏はモーニングスターの力を収得している。
だがそれは万能があってこそであり、今の彼女にモーニングスターは使えない。どうやら、
マリアの力がほんの少し残っていて、愛美奏の怒りに反応し融合したと考えられる。
草一本も生えてない真っ白な土地に黒い煙があちこちに散らばり、そこから小さな芽を生やす
と徐々に生長して黒い花を咲かせる。そしてあっという間に黒い花の花畑が作られると、花は次第
には枯れ、その後に地面から人の手が出現した。だがそれは人の形をしたものにすぎず、自我は
ない。ただ彼らにあるのは、人でも物でもとにかく壊せということだけだ。この件に関して、あの
男は何か対策をするのかと思いきや、「さて…どうするか」としばらく傍観する姿勢を取ったの
だった。




