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危機回避・未来  作者: 中野翔
私に危機回避能力は必要ない→私の万能は使えなきゃあてにならない
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時間操作



   夜中の3時に起きて轟鬼俊彦と話をした後、私は自分の部屋に戻って再び眠りにつく。そして

  次に目を覚ました時刻は午前5時。幸磨と月冴の二人と一緒に朝食を取るために起床する。

   「ふぁ~あ……眠い」

   幸磨が大きなあくびをした後、右手で目を擦る。

   それを聞いて月冴が「眠たいねぇ~」と言って、「学校休みになんないかなぁ~」と呟く。

   すると幸磨は少し間を空けて「そうなったら嬉しいけど、たぶん無理でしょ」と正論をぶつけた。

   「だよねぇ~。分かってたけど」

   幸磨は真面目に受け答えたことで月冴はなんだか悪い事をしてしまったと少々反省する。

   そんな二人の仲良しな会話を私は盗聴器を使用せず、自分の耳で聴いていた。

   「おはよう、幸磨。月冴」

   「…おはよう」

   「おはようございます」

   私を見るなり幸磨は顔を強張らせるが、月冴は落ち着いていて自然に挨拶をしてくれる。この違い

  はなんなのかと問われた場合、答えられるのは能力の差だ。この家の中で私のことを一番によく知っ

  ているのは弟の幸磨。年齢が3歳違いとはいえ、本人の記憶がなくとも身体は覚えていて無意識に

  自己防衛の行動を取ってしまうのだ。一方の月冴は幼い頃からの教育から能力にある程度の自信を

  持っていて、その気になれば己の力をフルに使い幸磨を守るため、敵対象を始末する。愛美奏に敵う

  とまでは思ってはいないものの、それでも自身より力が上の彼女の前にして逃げる姿勢は絶対に取ら

  ないとしているが、その時の状況次第で変わってくるだろう。

   『はいはい。二人共、早く食べて準備しなさい』

   子機が朝食を持ってタイミングよくやって来る。そして後ろを十六夜が当然のようについて行く

  のを見て…。

   「十六夜、何してるの?」

   エプロン姿の彼を指摘する私に『あら、見て分からないの?』と子機が私を指摘する。

   『手伝ってもらってるのよ。貴女も少しは見習いなさい』

   はっ?

   みならえ?見習えですって?

   この私に…少しは彼を見習って朝からお手伝いしろと言うの?

   『少しは見習いなさい』。その言葉が私の頭の中でリピートされる。そこに停止ボタンは存在

  しない。だから……。

   「ねっ、姉ちゃん?大丈夫?」

   「…大丈夫よ」

   幸磨が私のことを心配して側に来てくれた。

   私のために…。あぁ……私のために…………。

   「あっ…愛美奏」

   だけど、それとこれとは話が別。

   「用事を思い出したわ。外へ出かけてきます」

   『あら、じゃあついでに買い物お願いしようかしら。夕方までには戻って来なさいよ』

   事情を知ってか、子機はその後買い物メモと袋・財布を私に託してさっさと消えて行く。

   「愛美奏、僕も一緒に…「私一人で行きます。あんたは子機の手伝いでもしてなさい」

   「そっ、そんな…」

   肩を落として落ち込んでいる姿を私は見て見ぬふりをして、一人玄関へと向かう。私の姿が見え

  なくなった後、幸磨と月冴が十六夜をかわいそうだと家を出るぎりぎりの時間まで励ましていた。

  リアルタイムで視聴したところで、家の外へと出た私に後ろから声を掛けられる。

   

   「愛美奏様」

   私は振り向かない。だが、無視することも出来ない。

   だから、振り向かずに目的だけ伝えることにした。

   「買い物へ出かけてきます。付いて行きたいのなら勝手にどうぞ」

   「かしこまりました」

   勝手にしろと言っても、専属護衛なのだから付いて行かざるを得ないだろう。

   これで付いてこなかったら護衛の何もない。

   「では、行って参ります」

   だから…私は彼にちょっとした意地悪をした。

   瞬間移動を使って、スーパーまでひとっ飛び。いくら護衛でも瞬間移動という名の超能力には

  敵うま……。

   「あっ」

   私は瞬間移動した後、あることに気がついた。けれど、時はすでに遅し。気が付けば目の前に

  は目的のスーパーに到着するも…まだ開店しておらず。

   「しまった。私としたことが……」

   いくら万能とはいえ、所詮は人間。早とちりに天然ボケ、おっちょこちょいといった部分も存在

  する。

   「まぁ、いいや。あれを使おう」

   そう言って私は右手親指と中指を使い、パチン!と指を鳴らした。

   『全ての時間よ、早くなれ』と心の中で祈る。するとどうだろうか。先程まで閉まっていた

  スーパーが開店し、多くのお客で賑わっているではないか。時間もいつの間にか開店時間を30

  分経過している。

   「よし。これで買い物が出来る」

   本来なら時間を操ることは不可能だとされているが、それはもう古い考えだ。しかし、そんな

  ことが可能になれば犯罪に利用され、大きな被害を産む。時間操作だけでなく、他の超能力・能力

  も使い方を間違えば被害・損害を与える。そうならないためにこの国では、超能力・能力があるか

  ないかを誕生から調べ、発覚次第、国へ報告することになっている。中には一時親元を離れての生

  活を余儀なくされるが、それも国の未来と自分と自分の家族を守るための手段らしい。

   「さて、これで買う物は揃ったわね」

   買い物メモを確認して、さっさと会計レジの列へ並ぶ。列はそんなに長くなかったのに、一つの

  かごに大量の食糧を詰め込んでいるのを見て『買いすぎだろ』と思ってしまう私だった。レジ脱出

  は約10分ほどかかったが、これで買い物は終了。後はこれを家へ持って帰るだけ…そう思ってい

  た。


   「愛美奏様」

   「…あら?遅かったわね?どうしてらしたの?」

   駆け付けた轟鬼にわざとらしくそう聞くが、悔しい顔すら見せない。

   「時間操作はお身体に負担をかけます。ご自分の身を大切にしてください」

   「はっ?」

   なにそれ?護衛のくせに………。

   頭に血が上ると、時間がゆっくりと減速。明るい青空も徐々に暗黒の色に染まり始める。

   スーパーで買い物に行く人、終えて帰る人、外で歩く通行人に道路を走る車はいつの間にか消え

  て、気づけばその場にいる人間は私と轟鬼の二人だけになっていた。

   「鬼の下っ端の下っ端の分際で、私に指図しないでくれない?護衛はただ主の身を守っていれば

  それでいいの。他のことに口出す必要はないわ」

   やがて私達を除き、景色は暗黒化。まるで宇宙に取り残されたかのように宙を浮いているような

  形になる。だが、きちんと地となった部分に自分達は足をついて立っているのでここが宇宙とは言

  い難い。

   「私は用済みでしょうか、愛美奏様」

   普通の人間なら恐怖を感じて逃走するが、轟鬼は無表情を保ったまま私に問う。

   「そうね。面倒だと思っていたけど………もういいわ」

   私に指図するような護衛、置いといても邪魔なだけ。処分と後始末のことは後で考えよう。

   今はこいつをとっとと自分の前から消し去りたい。

   そう思った時、私は左手で指を鳴らし、『時間よ。巻き戻れ』と祈っていた。

  

   

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