8話
季節も変わり、最終学年であるセレステ達ももうそろそろ卒業に向けて準備に入る。
そんな中、小規模ながら開かれた夜会にセレステは参加していた。
いつものように、柱の横に立ち周りの会話に耳を傾けていると、とある会話が聞こえてきた。
丁度、柱のすぐそばでセレステには気付いていない様だ。
一人の中年男性が、二人で話している女性の一人を見た後に驚きの表情を浮かべた後、詰め寄らんばかりに女性の元へやってきて口を開いた。
「夫人、失礼ですがそのネックレスどちらで手に入れたのですか!?」
「え?これですか?どうやってとは……」
「その、ちょっと似た様な物を無くしたもので……」
「こちらのネックレス確かに、昔からローザ様が前から身につけてらっしゃいましたよ。最近はお見かけしませんでしたが」
「ええ、少し事情がありまして手元を離れていたのですが、ようやく戻りましたの」
「確か、ローザ様のお母様からのお品と聞きましたわ」
「そうですわ、事情があったと言いましたが、殆ど騙されたような形で、手放す事になってしまっていましたの、ある方が届けて下さったんです」
「!」
「では、今お手元にあるという事は取り戻す事が出来たのですね、良かったですわね〜」
「それで、こちらのネックレスに何かありましたか?」
「い、いや ちょっと似たものを知っていた物ですから……勘違いでした、で、では失礼」
男は何か慌てたように、夫人達の元を去っていった。
「そう言えば彼の方は、月夜の怪盗に入られた方じゃないかしら?」
「そうね……月は見ていたという事でしょう」
最後のローザ夫人の呟きは隣の女性には聞こえなかった様だが、セレステには聞こえていた。
セレステは、さっきの男性を探すと、男性はワインを一気に飲み干しているところだった。セレステは、そっと近くに寄ってみた。
「あのネックレス、間違いない俺が手に入れた物に違いない……確かにあの日盗まれた、あの怪盗か!?わざわざ盗んで、渡したのか!?せっかく無理やり手に入れたのに……」
その後も男はブツブツと文句を言っていた。
「もしかして……月夜の怪盗が盗んだ物は……」
夜会が終わり、帰宅したセレステは今まで怪盗が入った屋敷と盗んだ物を調べる事にした。
数日後……
「あの人が盗んでいる物の共通点がわかったわ……」
あの人がただの悪人だなんて思えなかった。
噂だけで判断したら、自分は学園の人達と同じになるのは嫌だった、自分の手できちんと調べたかった。
*
王宮でアルバートが国王と話をしていた。
「そろそろお前も、婚約者を選ばねばならない」
「……わかっています」
「第二王子であった為、今まで自由にさせていたし、第一王子が正式に立太子するまでは、婚約者も決めておらんかったが、そろそろ良いだろう」
「……ひとつ良いでしょうか」
「何だ」
「少々気になる方がいます……」
「何処の者だ?」
「事情がありまして、後少しだけ時間を下さい」
「……時間は無いぞ。其方の学園の卒業と共に発表する」
「わかりました」
アルバートは拳を握り込むと、国王の部屋から退出する。
時間は無い……
どうすれば手に入るのだろうか……
「俺の月……」
夜に一人、アルバートは自室で夜空を見ながら一人の女性を想いだす。
*
学園卒業前の最後の満月の夜。
セレステと怪盗はいつも通り、庭の奥で逢っていた。
「前よりいっそう悩んでいる様ですね」
「今日は貴方もじゃないの?いつもより真剣な気がするわ」
「そうですね、私にも悩みがあったみたいです」
「どんな?」
「月を手に入れるにはどうしたら良いか」
「ふふ、私はもう諦めているのかも……」
「何があったのか聞いても?」
「今日、学園でユース様と親しくしている方に呼び出されたので行ったんです。そしたら、その方がユース様は自分を愛しているって言った後に泣き出してしまって、その後ユース様が来て……」
「そうか、信じてもらえなかったんだな……」
「もう、良いんです」
俯くセレステを男が抱きしめた。
セレステも思わず抱きしめ返す。
「今日で最後なんですね……」
「……」
お互いにわかっていた事だった。
「俺の月の女神……」
「私の月夜の怪盗……」
どちらともなく気付けば唇を重ねていた。
重ねていた時間はほんの一瞬だったはずなのに、とても長く感じられた。
そっと体を離し、見つめあった後男は闇夜に消えていった。
「さようなら」
残ったのは、月の光だけだった。
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