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悪役令嬢は怪盗とワルツを踊る  作者: 洸夜 真琥


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7/11

7話

今日は満月……朝から既に夜のことを考えている自分がいる。

少しそわそわしたまま、学園に向かった。


昼まではいつも通りに過ごして、昼食の時間になり食堂へ向かうと、廊下にユース様とアイリーン様が並んで話しているのが見えた。

一瞬足が止まりかけるが、そのまま当たりすぎる事にした。


「セレステ」


通り過ぎる瞬間、ユース様から声をかけられた。

私は足を止めて、振り返る。


「ごきげんよう、ユース様。何か用ですか?」

「ちっ……何故、挨拶もせずに通り過ぎるんだ」

「……お話の邪魔になってはいけないと思いまして」

「それは嫌味か?」

「やだ〜 セレステ様ってば、嫉妬ですか?私達が仲良く話してたからって」

「いえ……」

「セレステもアイリーンを見習って愛想の一つでも寄越せば良いものを、せっかく俺が貰ってやるんだから」

「……」

「何だ、何か言いたい事があるのか」

「……いえ、相変わらずですね」


私の返しが気に入らなかったのか、顔を赤くしてこっちを睨む。


「その馬鹿にした様な顔が気に入らないんだよ!調子に乗りやがって」

「馬鹿にはしていませんが、勘違いされているとは思っています」

「何を訳を分からないことを!とにかくお前は俺に気に入られる様にしてれば良いんだ!」

「お話は以上ですか?では私はこれで失礼します」


最近のユース様の思い込みは酷くなる一方で、どうやらアイリーン様がユース様に、ゲリング侯爵家の次期当主なのだからと、調子の良いことを言っているようだ。


今朝は上がっていた気分も、さっきのやりとりで底辺まで落ちる。

もしユース様が、勘違いに気付いたとしてもあの態度が変わるとは思えなくなってきている……

両親に相談すれば何か変わるのだろうか、期待して変わらなかったら?


学園から帰ると、お父様に話す前にお母様へ話してみる事にした。



*



「お母様、少しお話をしたいのですが、お時間頂けますか」

「ええ、大丈夫ですよ」


私は、お母様の前に座ると話をどう切り出すか考える。

お母様は公爵家に嫁いで来られて、幸せなのかしら…


「お母様は、どうしてお父様と結婚されたのでしょうか、やはり家の為ですか?」


質問をすると、お母様はじっとこちらを見つめて来る…。


「確かにそれが一番大きいでしょうね、でも確かに最初は家の為、公爵家からの縁談は断り難い事もありました。貴女のお父様は人にも厳しいですが、ご自分にも厳しい人です。でもそれは優しさからくる厳しさととでも言えば良いのかしらね……少し不器用なんです。側で見ていて、私はお支えしたいと思いました」

「そうですか…」

「貴女の事は跡取りだった事もあり、厳しく育ててしまいました。それが悪い事だとも思いません。でも、私は伴侶となる方は貴方を心から支えてくれる方であれば良いと思っています」


セレステは、まさかそんな事を言われるとは思ってなかった。家為に頑張りなさいくらいだろうと…


「ありがとう、ございます…」


お母様から話を聞いて、いつも冷静で今はもう冷たくなってしまった自分の心の中が少しだけ温かくなった気がした。


もう少し良く考えてみよう……

そう思い、今日はお父様に話すのはやめておいた。



*



日が沈み、空に月が昇ると、私はこっそりと部屋を抜け出して、庭園へ向かう。


薔薇の間を抜けると、人影があった。


「今晩は、私のセレーネ」

「今晩は、月夜の怪盗様」


お互いにゆっくりと近づくと、男がセレステの手に口付ける。


「今日は少し話しませんか」

「では、お手を」


スマートに手を引き、近くのベンチへ腰掛ける。

隣り合って座り、いざ話そうとしたがセレステは何を話していいのか分からなかった。


「今日も月が綺麗ですね……」


男が月を見上げながらそう言ったので、セレステも同じ様に月を見上げる。


「本当に……綺麗」

「何か迷い事ですか?」

「そう、ですね……」

「私は月を見るのに夢中なので、独り言を言っても聞き取れないかも知れません」

「……では独り言を……」


私はユース様とのことを話した。


男はセレステの話を聞きながら、いっその事やっぱり攫っていってしまおうか、でもその後は?

自分だってどうすることもできない柵の中にいるのに。

この関係だって長く続かないのは分かっている……

だが……


「もしも……私が手を伸ばしたら貴女は掴んでくれますか?」

「それは……」

「やっぱり聞かなかった事にしてください。今はまだ、この月夜のひと時を楽しみましょう」


セレステが頷くと、男は立ち上がり手を差し出すと、セレステも、手を重ね立ち上がる。


今夜も二人でワルツを踊る。

例え、もうすぐこの月夜のワルツが終わることは分かっていても……

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他にも、投稿しておりますので、ちらも読んで頂ければ幸いです♪


感想も頂ければ幸いです。

これからもどうぞ宜しくお願いします。


最後まで読んでいただきありがとうございました!

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