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Beyond World Online~一部イベント特効ゲーマーの行くVRMMO ~  作者: みなかみしょう


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第67話:地区解放クエスト+ 3

 他人の受注したクエストに、パーティーメンバーとして途中参加する。

 その場合は協力者扱いとなり、報酬がもらえるようだ。

 ただし、少し内容が変わる。メインクエストのようなゲームの根幹に関わる場合は制限があったりもするらしい。

 初心者がいきなり高レベルクエストに参加してパワーレベリング、なんてことを防止する仕組みだ。


 今回ケセラさんが受注したのはNPCと仲良くなって受注した特殊クエスト。

 パーティーに参加した俺は、協力者枠となり、特別なアイテム以外の報酬は同じだけもらえるらしい。特別なアイテムというのは『追憶』の鎖鎌みたいなやつのことだろう。


「よっと、ファストアタック!」

「むおーん」


 俺とラインフォルストは魔喰虫の群れを相手に戦っていた。このマンボウ、攻撃もできてたまに口から何か吐き出している。水っぽくない、光を。もしかしてブレス?


「お二人とも、退避してください」

「ピタっとフック!」


 鎖鎌を一本に持ち替え、天井に向かって脱出。ラインフォルストも上昇する。

 そして、俺達が集めた虫の集団めがけて、ケセラさんがいくつも爆弾を投げ込む。


「レッドボム! 吹き飛ばして!」


 赤くて丸い、導火線付きのクラシックな形の爆弾が次々と爆発を起こす。煙と爆風が全身に当たる。なかなか作り込まれた演出だ。

 爆炎が消えると共に、モンスターも消えていた。


「爆弾つよ……」

「ふふ。最高ですよね。音、エフェクト、範囲、威力。スッキリします。ちなみにスキルで自作してもコスパ最悪です」

「それを主な攻撃手段にして大丈夫なんですか?」

「別方面で稼いでいますから」


 これみよがしにバッグについたぬいぐるみをアピールされた。深堀りを避けるため、俺は「へー」と薄い反応をしておく。話題を広げようとしている、非常に危険だ。これが秘密を抱える者の代償か……。


「ボスはこの先ですよね。故障した警備ロボでしたっけ?」

「はい。親機と子機の二種類がいて、可愛いんですけどね。思ったより頑丈です」

「攻撃手段は?」

「体当たりとレーザーです。どちらも球状に変形して結構な速度で突っ込んできます」

「うっ……。大丈夫、それなら避けれますよ」


 一瞬、前にレベリングで巨大ダンゴムシに追い回された記憶がフラッシュバックした。あの時の経験が生きるとは、人生何があるかわからんな。


「そうだ。トミオさん、これをお渡ししておきます」

「? ああ、はい。おまかせを」


 渡されたのはアウェイクン・シンボル。復活アイテムだ。全力で自爆する気だな、この人。


「作戦としては俺が前で支えて、さっきみたいに爆弾。で、ボスが第二形態になったらケセラさんが突っ込む、と」

「はい。全力で微塵隠れをするので、倒せるはずです! できればあのユニークスキルで止めておいてください」

「了解。やっぱ知られてるんですね、アレ」

「かっこよかったですよ。イベントボスまで止められる素敵スキル」


 笑顔でフォローしてくれたけれど、なんとも言えない気持ちはぬぐいがたい。

 こりゃ、ダイナミック・バインドについてはかなり知られてるものとして見たほうがいいな。BWOで助かった。PvPメインのゲームだったら致命的だったかもしれない。


「あれやってる時動けないんで、微塵隠れする瞬間に解除して逃げますね」

「タイミングが合うかドキドキしますねっ」


 ユニークスキル『微塵隠れ』の欠点。味方も巻き込む。

 そりゃソロプレイが捗るだろうよ。


 ◯◯◯


◆WARNING!◆

【ボスモンスター出現!】壊れた警備ロボ 推奨レベル49【危険度:☆☆☆☆】 ◆WARNING!◆


 ケセラさんが受けたクエストは、かつて区画の管理をしていたNPCの親が事務所に残した私物を取ってきて欲しい、というものだった。

 閉鎖区画の管理を長年担当してきた一族で、大事な記録が残されているとか。


 いつしか区画の管理業務も撤廃され、残されたのは廃墟となりかけた事務所と壊れたロボットだけ。

 そんな寂しい空間にボスはいた。


「ほんとだ。丸い」

「可愛いですよね。敵じゃなければお持ち帰りしたいです」


 防衛ロボは丸いボディに手足が生えた形をしていた。各所の装甲が開いて武装が露出するタイプ。しかも、十体以上の小型のお供を連れている。


「あのお供、倒すと追加されます」

「常に多勢に無勢ってことか。援護お願いします」

「わっかりました!」


 ケセラさんが両手に赤い爆弾を取り出したのを見て、俺はラインフォルストと共に駆け出した。


「ラインフォルスト! 背中を頼むぜ!」

「承知」


 このマンボウ、俺より耐久力がある。頼りになる相棒だ。

 防衛ロボとお供の群れに正面から飛び込んだ俺達は、戦闘を開始した。


「投げます! レッドボム!」

「ピタッとフック!」


 たまに爆弾を避けて天井に逃れる。アルケミストスキルの爆弾は、味方を巻き込まない仕様らしいけど、爆発エフェクトで視界を奪われる。念のため、上昇して回避しておくことにした。


 すぐに向こうの戦力は把握できた。お供は怖くない、ケセラさんの爆弾でほぼ即死する。ボスは攻撃が大ぶり。目からレーザーを出すけど予備動作があるので回避は可能。

 この時点では低めの推奨レベル49だし、こんなもんだろう。戦闘は順調に推移する。


『エマージェンシーモード。リミッター解除』


 ボスが警報を発して、全身の装甲を展開。人型へと変わっていく。へー、けっこう良いデザインだな。背中のブースターとかゴツくてかっこい……距離詰められるのはまずくね?


「トミオさん! そいつ、ブースターで短時間高速移動します!」

「やっぱり! ダイナミック・バインド!」


 両手に鎖鎌を装備して、即座にユニークスキルを発動。ブースターを光らせかけていたボスごと動きを止める。束縛ゲージの具合からして拘束時間にして十秒もない。

 そして、戦況をちゃんと読んでいたケセラさんはこちらに駆け込んでいる。


「そろそろバインド終わります!」

「ナイスタイミングです! 逃げてください!」


 目をグルグルした形に変えて、ケセラさんが叫ぶ。なにその表情、なんかのスキル!?


「ピタッとフック!」

「脱出」

「微塵隠れ!!」


 俺とラインフォルストが上に逃れた直後、フロア全体を包みこまんばかりの大爆発が起きた。

 ……ちょっとダメージ入ったんだけど。こわっ。



 ◯◯◯

 

 ボス討伐と引き換えに、ケセラさんは死んだ。

 そして、すぐに蘇った。そのためにアウェイクン・シンボル貰ってたし。


「ありがとうございました。わざわざお手伝いしていただきまして」

「いえ、結構面白かったです」


 無事にボスを倒した後にイベントは進行。ケセラさんはアイテムを手に入れて、クエストも完了した。

 本当に手早く終わって良かった。そんなに強くなかったから、最悪レベルを上げれば単独撃破もできただろうな。

 

「そういえばケセラさん。凄い目をしてましたけど、あれ何だったんです?」


 気になったのは自爆直前のグルグル目だ。漫画みたいに変わってた。


「あれはですね、グルグル目っていう汎用スキルです。いつの間にか覚えてまして。なんか、勝手に発動するんですよね」

「え、勝手に? 任意で発動できないんですか? どんな効果が?」

「私、物事に熱中しやすいたちでして。それで、ああいう顔になることがあるんです。ちなみにNPCから割引してもらえたりします」


 ちゃんと効果があるんだ。凄いな。でも任意で発動できないんだよな。


「結構面白いスキルですね」

「いやー、私もびっくりです。何が原因で覚えたやら……」


 本人にもわからないのか。謎だ……。まあ、いいか。

 

「じゃあ、俺はこれで……」

「あ、なにかお礼を! えーと、こう見えてクラフトで稼いでるんですけど。何か欲しいものありますか? 手持ちで良ければ……ああ、スクラちゃん人形くらいしかない!」


 やっぱりスクラなんだ。そのぬいぐるみ。

 自然と目線が向いたのだろう、ケセラさんがやや粘着質な目でこちらを見た。


「気になりますか? 最近登場した、三下配信者フィーカちゃんの妹分にして保護者であるスクラちゃんです」

「さ、三下の方ならちょっと知ってますけど」

「凄く良いんですよ! フィーカちゃんのツッコミ役にして、対を為すデザイン! 二人並んで戦う時は前衛として的確な動きとサービス精神! サービスがあるんですよ!」


 ケセラさんが目をグルグルさせながら俺のよく知る人物の話を始めた。

 なるほど。こういうのを繰り返して取得したスキルなんだな。


「トミオさんも是非ご覧ください。きっと気に入ります。普通に参考になること教えてくれますし」

「それは助かりますねー」


 うっかりボロを出さないように受け答えするのに精一杯だ。

 ケセラさんのスクラ語りは五分ほど続いた。まだデビューしたばかりなのに、こんな熱狂的ファンを捕まえるとは。我ながら恐ろしい。絶対に正体バレたくない。


「そのぬいぐるみもクラフト作なんですよね。スクショ送ったら公式ですごい喜ばれたりして」


 この何気ない発言が、地雷だった。

 

「……違いますよ。スクラちゃんはですね、こういうのを熱心に取り上げないんですよ。フィーカちゃんが取り上げてちょっとだけ微笑む。あるいは、どうしたらいいか解らず、困った顔をする子なんですよ」

「あっはい」


 そうだったのか……。いや、ケセラさん、また目がグルグルしてるわ。せっかくちょっと落ち着いたのに。

 スクラ語りは更に五分続いた。


「と、とりあえず落ち着きましょう。動画は今度見ますから」

「見たら是非感想を教えてください! あと、お礼はしたいので小物や服でご依頼があったら気軽に言ってください。……それと、あの、これ」


 最後、遠慮がちにフレンド申請が飛んできた。

 これだけ話して断るわけにもいかないので受諾する。


「作って欲しいものが思いついたら、連絡しますね」

「はい、是非! ……待ってますから」

  

 悪い人じゃない。でも、付き合い方に気をつけよう。俺は心の底からそう決意した。


 その後、本来の目的であるエリア開放クエストはあっさりクリアできた。単独で。

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