第27話 ハルシネーション・グリーン-3
青く染まったマグマが、火口の底から天に向かって、凄まじい勢いで放射された。
空を貫く一筋の激流に、蛍光塗料をぶちまけたが如きサイケデリックな光が、様々な色を発しながら螺旋状に絡みついている。
本来、自然の大地を象徴するはずの火山だが、それよりもさらに地底の奥深くに潜んでいたのであろう――異次元の物質が解き放たれ、マグマが侵食された極めて異様な光景が広がる。
「何だこれ……!?」
「これが……スレトニウス公務官たちが封印していたもの……!?」
あまりに異常な物質に、アイとジフは驚愕する。スレトニウスがあんなにも封印に触れさせないよう必死になっていた、その真相を本能で理解した。
おそらく、身を課して火口に飛び込んだアルテノーラによって、これほどのものを抑え込んでいた封印が破られてしまったのだ。
だが、マグマ原来の炎も、いまだ灼熱の猛威を奮っている。炎の飛沫が激しく飛散し、アイたちはただちに後方へ走って距離を取る。
「あぶねぇ!!」
「火口から離れろ!」
リンたちを背に庇うように立つジフが、前方のマグマに顔を向けた、その時。
一際強い炎の飛沫が舞い、ジフは反射的に腕で顔を覆う。火の粉に紛れて入り乱れる、ビビッドカラーの光の粒が降り注ぐ。
光から霧散した残滓――異次元のエネルギーの中で、強く瞑っていた目を開いた。
その時、ジフの両目が、無機質でサイケデリックなライトブルーの光を発した。
――バチリ、バチリ、バツン。
電気が回路を流れて、ひと繋ぎになるような刺激が、瞳の奥で微かに弾けた気がした。
瞬きの後、瞳の光は消え、いつも通りに戻っていた。一瞬の得体の知れない感覚に、ジフは呆然とする。
その間にも、青いマグマの激流の勢いは止まらず、さらには火山そのものが大きく揺れ始める。
『炎は俺に任せろ!』
「行けるか、ガリュマ!」
『私たちも加護を強めます』
『毎度毎度手のかかる!』
前に飛び出したガリュマダロンの体に、アイが残りの魔力を注ぎ込むのと引き換えに、大星座の装束が解けた。ガリュマダロンが吐き出した炎が燃え広がり、光の壁が登り立つ。
リンの中のフローランナ、ショウの中のハイルカントリュスも、大精霊の力を波及させ、ガリュマの生み出した壁を強化した。
「あのマグマ、どうなっちゃうの……!? とにかくここにいたままじゃ危ないよ!」
「あれを止めるにしても、この火山から脱出するべきですが……こんなに揺れている中で進むのは危険です」
「それなら転移は……!」
『ここにいるみなさんだけなら、確かに可能ですが……まだ中で見つかっていない炭鉱夫の人々までは……』
『このままでは火山の本格的な噴火が起きるのも時間の問題だ……リュウノオの奴め、まだなのか! ウスノロが!』
カナとショウ、そしてリンが打開策を求めるが、正体不明の強大な力の前では、さすがの大精霊たちも焦りが滲んでいる。
ハイルカントリュスが怒声を飛ばした、この場にいない存在――この火山で祀られている、リュウノオ様。これほどの異変が火山を襲っているのなら、それを鎮めるために姿を現すだろうか。それとも、もうすでに火山もろともあのエネルギーに呑まれてしまっているのか――
荒れ狂う青いマグマと火山の地震に、アイたちは成す術なく翻弄される。その時だった。
不意に、頭上に開いている空から、大気を切る疾風の音がした。
「――アイ!! みんな!!」
頭上から響いた、少年の叫び声。アイたちが空を見上げる。
現れたのは、翼を広げて飛行する数体のワイバーン。そして、背に跨がった二人の兄妹。
――ラルとマノ。彼らの手綱によるコントロールでワイバーンたちは激流の火飛沫をかわしながら高度を下げ、アイたちのいる場所へと降り立った。
「ラル! マノ!」
「こいつらに乗れ!!」
「この子たちみんな、人を乗せた飛行には慣れてます!」
彼らの言ったとおり、元よりこの火山を熟知しているワイバーンたちは、荒れ狂う火口を前にしても動じることなく、二人の指示に従っている。アイたちに避難を促すが、ラルはその場にいる面々を見回し、はたと気づく。
「あっ……親方は!? 会わなかったか!?」
「親方、火山の中に来てたのか!? 俺たちは会ってないぞ……!」
「クソッ、このままじゃ……!」
火山の入り口で別れたきり、ボルツはまだ戻っていない。ラルの顔に焦りの色が走る。
「兄ちゃん、親方……祠の様子を見てくるって言ってた。その近くにいるんじゃ……!」
「地図だとこの真下の階層です」
ショウの説明を目で追うように、ラルは火口のほうを見る。
「……あの崖から、火口までの高さの途中で、下の階層の吹き抜けに旋回できれば、最短で行けないことはない。けど……」
つまり、崖から火口に飛び降りる必要がある。そしてワイバーンのコントロールを誤れば、真下に待つのは灼熱の火口だ。たった今、アイたちの目の前であの中へ消えたアルテノーラと同じ結末を辿ることになるだろう。
ラルは不安と恐怖に揺れる瞳で、燃え滾るマグマを見つめる。
「クゥア」
「……ラグジ……」
ラルの傍らのラグジが、そっと鼻先で彼の腕をつつく。振り向いたラルとラグジの視線が重なる。
毎日のように、ラルの手綱で空を駆けてきたラグジだ。やることは何一つ変わらない。その感覚はラグジにも刻まれている。
言葉はなくとも、そう伝えてくるようなラグジの眼差しに、ラルは静かに息を呑んだ。
「っ……、ここまで来たんだ、親方の所まで俺が行く!!」
そう言って前へと踏み出したラルを見て、アイとガリュマダロンも顔を見合わせて頷く。
「なら、俺たちも一緒に行く! もしもの時にラルたちを助けられるかもしれないし、ラルたちだけを危険な場所に突っ込ませらんねぇよ!」
『そうだぞ! 俺たちにも任せろ!』
「アイ……って、こっちはもしかしてガリュマか!?」
アイのほうへ振り向くラルだが、勇猛な大型の獅子からガリュマの声が聞こえ、強張っていた表情を驚きに変える。
「マノ、みんなを頼んだぞ」
「うん……!」
「お前も油断するなよ、アイ」
「わかった、絶対にラルたちと戻る!」
アイはジフにそう伝え、ガリュマダロンの背に乗り込む。そしてラルとともに崖のほとりまで進み出でると、眼下のマグマを見据えるラルが手綱を握る。
「……行くぞ!!」
* * *
数分前。
火山内部にひっそりと佇む小さな社、リュウノオ様の祠。
その前へと歩み出たボルツは、おもむろに服の中に忍ばせていたペンダントを取り出す。
先代のお頭が己の容態を悟り、ボルツに受け継がせるために渡したもの。
結晶に炎が宿ったかのような、赤く透き通った石をそっと手に乗せ、ボルツは真近でそれを見つめる。
神の棲まう山に踏み入れる炭鉱夫の長に代々受け継がれる、感謝と責任を示す守り石。現代においては形だけの伝統も同然だが、今この石を持っているのは、自分なのだ。
「……ろくにここに来てねぇ俺が言うのも、図々しいかもしれねぇけどよ。あいつらのリーダーの俺にできるのは、今はこれくらいしかねぇんだ」
ボルツはぽつりと、低い声で吐露する。手にする石を通して、祠の背後の岩壁で脈打つ赤いマグマの光、火山の根源に語りかけるように。
「金塊だの、幻覚だのと、ここに来たバカどもを……街に帰してやってくれねぇか」
ボルツは、願いを言葉にして乞うた。祠という神聖な結界に身を隠した守り神が、そこにいると信じて。
岩壁に透けて見える熱源は、生きているかのように明滅している。だが、それ以上の変化はない。
この願掛けも、言ってしまえば、日頃の参拝と大して変わりないのだから。祠を注視していたボルツの視線が、次第に落ちていく。
――その時。
火山内部で、ドン、と大きな爆発の轟音と衝撃が起きた。ボルツが立つ祠も、ぐらりと大きく揺れる。
ボルツがどうにか踏み止まった――かに思えた、直後。何倍もの強さの揺れが再び襲い、頭上から無数の岩が崩落して、視界が闇に落ちた。
「………………」
ボルツは地面に倒れたが、どうにか生きていた。
起き上がろうと身を動かせば、体に触れるのは周囲は巨大な岩だらけだ。それがわかったのは肌に触れた感覚のみで、目では何も見えない。
光がーー祠の入り口が、崩落した岩で完全に塞がれてしまっていた。
「……閉じ込められた……か」
呟きが、失意とともに暗闇に溶ける。そのまま岩にもたれ、脱力するように座り込んだ。
途端に、こんな時だけ格好をつけようとして、こんな状況に陥っている自分が、ひどく居た堪れなくなる。
この火山から、先代の死から、受け継いだリーダーの責任から、今までずっと向き合おうとしなかったくせに、言葉どおり神頼みでどうにかしてもらおうなどと。どこまでも都合が良く、浅はかだったせいだろうか。こんな無様な結果になるのは当然だったのかもしれない。
晩飯までには戻るとスミンに伝えてくれと、ラルたちに見栄を張ったというのに――
「……なんだ?」
無気力に浸りかけていたなか、不意に、魔力の熱を感じた。
探り当ててみてば、それは先ほどより一際強く赤い光を放っている、ペンダントの守り石だった。
何かに共鳴している? もしや、火山の根源が――リュウノオが、本当に反応しているのか? だとして、この状況でどうすれば良いのか?
「何なんだ……どうしろっていうんだ」
守り石は確かに何かを示そうとしているのに、ボルツには何もわからぬまま、ただ光り続ける石を見つめる以外にどうすることもできない。
その時、視界の端――地面に、守り石とは別の小さな光がきらりと瞬いたのが見えた。
目で追えば、地面に投げ出されていたボルツの左手、その薬指に嵌められた銀の指輪だった。
「…………光……?」
指輪が、微かな光を反射して煌めいている。岩で空間を完全に塞がれて、光源など無いはずなのに。
街に残っている妻、スミンと同じ指輪を、ただじっと見つめるボルツ。
そのうち、在りし日の記憶が、頭の奥底を掠める。
――『オメェがスミンに腹括ったのを見れてよぉ、こんな災害だらけの時代でも……悪いもんじゃなかったぜ。
この石には俺たち炭鉱夫の生涯が詰まってんだ。あとはお前がしゃんとしやがれ』
生前の先代から守り石を差し出された時のこと。寝たきりになって久しかったが、その声も笑い顔も相変わらず快活だった。
炭鉱夫の生涯。その道にスミンを連れ添わせたこと。そして、この守り石を誰に譲るでもなく、今でも自分が持ち続けているということ。
たとえ、この火山の異変そのものを解決する力はないとしても。
自分が生きるか死ぬかぐらいは、自分で選べるはずだ。
「……こんな有様で、どっから光が差してるのか知らねぇが……」
ボルツは、光を反射する指輪を嵌めた手を握りしめる。
「どこかに必ず、隙間があるってことだよな」
そして立ち上がり、入り口を塞ぐ岩のほうへ向く。胸に提げた守り石が揺れ落ちる。
この石を通して伝えようとしているのが誰なのか、それはわからないが。
今自分にできることは、光の在処を確かめることだ。
「ドルゴラッヘの炭鉱夫なら、このくらいできねぇとな――!!」
肩から腕、そして拳に力を籠め、ボルツは岩を殴りつける。何度か繰り返すうち、やがて手前のいくつかの岩が砕けた。
岩は何層にも分厚く積み重なっているようで、それだけでは開通に至らない。だが、ボルツの腕にも、まだまだ力が残っている。
他の種族ではそんなに長くは続けられなかっただろう。しかし獰猛な腕力を持つドルゴラッヘ族になら、その可能性を変えられる。
ボルツはひたすら岩を殴り、砕き、岩の中を掘り進め――やがて。
「……れか……に……すか……!」
おそらく岩の外側から、くぐもった声が小さく、しかし確かに聞こえた。ボルツは拳を止め、静けさの中で耳を傾ける。
「聞こえていたら返事をしてください!」
「中にいるのか!」
若い男女の声。たしか、今回の捜索に協力してくれている、エスペル教団の司祭の男と、帝国軍の軍人の女だったか。
ボルツは声を張り上げた。
「……ああ……! ここにいる! 岩で閉じ込められたんだ!」
「ボルツさんですね!?」
声は届いたようで、確信した教団の男ーーリオウが名を呼ぶ。
「外まで振動が伝わっていました! こちらからも岩の破壊を試みますので、少し離れてください!」
「わかった!」
リオウの指示に従い、ボルツは後ろに下がって岩から距離を取る。ほどなくして魔力の熱とともに閃光が炸裂し、衝撃ののち光が止んだ。目を開ければ、入り口を塞いでいた岩は砕け、視界は本来の明るさを取り戻していた。
「ボルツさん! ご無事ですか!」
「そこから引っ張り出す! 手を掴め!」
まだいくらか岩が残る、辛うじて開けたスペースからリオウとオリカが顔を出し、腕を伸ばす。ボルツも前へ出られる限界まで身を寄せ、両手でその手を掴んだ。
出口を阻む岩の隙間から、ドルゴラッヘ族の屈強な体をどうにか引き出し――ボルツは岩の外へ脱出した。
牽引された勢いのままボルツは崩れ落ちるように地面に手をつき、リオウとオリカもすぐそばにしゃがみ込む。
「お怪我はありませんか?」
「……ああ……」
命の危機に瀕しためまぐるしい状況に、救出された実感がまだないのだろう。ボルツは半ば放心しながらリオウの呼びかけに応える。
「ボルツさんが内側からも岩を壊してくださったおかげで、外からも振動に気づくことができました。
生きることを諦めないでくださって……本当にありがとうございます」
「……あんた……」
教団の司祭らしい、生きるしるべを持つ者への言葉。今ばかりは差し込む光のように感じ、ボルツは少し顔を上げる。
――そこに。
「親方ーー!!」
ボルツにとって聞き慣れた、しかしここで聞こえるはずのない幼い声が響く。
直後、大きな翼の羽ばたきとともにワイバーンと竜獅子が飛来し、それぞれ背に乗った少年たち――ラルとアイが姿を現す。
「ラル……!? なんでここに」
「ワイバーンたちの面倒見てろって言ったのは親方だろ!
火山の外から見ても明らかにヤバそうだったから、いつも運送してるコースでみんなと飛んで来たんだよ!」
そう言ってのけるラルを、ボルツは呆然と見上げる。今のラルの顔つきは、まるで先ほど生き埋めから脱出しようとしたボルツとよく似た、確かな決意が宿っていることに気づく。
「マノと他のワイバーンたちが、先にカナたちを避難させてる!」
『リオウとオリカも俺に乗りな!』
「お前たち……」
アイとガリュマダロンも、この場に立ち合わせていた二人に促す。彼らのもとへ歩み寄るオリカの後ろで、リオウはボルツのほうへ振り向く。
「彼らの力を借りましょう」
「……ああ」
リオウに促され、ボルツは小さく頷いた。
* * *
火口の真上に開く円形の空に向かって、少年と大人たちを乗せた二匹の獣が急上昇する。外に広がる空へと脱出すれば、先に避難した数匹のワイバーンと、それに乗っているマノやカナたちが上空で待機していた。
「マノ! 親方は助けた!!」
「ありがとう兄ちゃん!!」
兄妹が無事を確かめ合うのも束の間、ラルと彼を乗せたラグジが火山のほうへ向き直ると、火山の様子は急速に変化していた。背に同乗しているボルツもそれを凝視する。
「何だ……火口があんなに光って……」
「このまま噴火するのか……!?」
彼らの予想を実証するように、火山が噴火の前触れ――強大な地震を起こし始めた。上空にいる一行すら、大地の揺れの激しさを感じ取り、戦慄する。
最初に痺れを切らしたのは、ショウの体内に宿る魔獣だった。
『ええい!! これ以上は待てんぞ!!』
「えっ!? な、何を――」
宿主のショウに断りもなく、ハイルカントリュスは猛禽の雄叫びとともに彼の体から強い光を放ち、翼を広げた大鳥の如き形を成して、閃光を空に打ち上げた。
光は一直線に空を切り、雲の向こうへと消えた。
直後、今度はボルツの持つ守り石が、かつてないほど強く輝き出した。ボルツは驚きながら首に提がっている石を手に取る。
「何だ……石が――」
その時。
ボルツの守り石と同じ、一筋の赤い光が、遥か天空から雲を貫き、地上に向かって急降下してきた。
大気の激しい摩擦を伴いながら降臨するもの。その先端にいるのは――赤く煌めく鱗を纏い、長い体をなびかせる、東洋の龍。マグマの紅炎の如き線を、黄昏の空に真っ直ぐ描き続けるその様は、まさしく龍の尾。
ドルゴラッヘ火山の守り神、リュウノオであった。
「あれが……本物の……」
「リュウノオ様!?」
一族の伝承に語られる御姿が目の前に現れ、ボルツ、そしてラルとマノは目を見開く。
瞬く間にリュウノオは火山に近づける限界まで降下し、空中で静止した。そして、大きく開いた口の中に、眩い光が球体状に蓄えられていく。
それが最大限にまで強まり――リュウノオは火口に向けて光線を発射した。
今にも火山から溢れ出さんばかりにせり上がっていた青い炎に、リュウノオの光線がぶつかり、激しく押し合う。その間にも、ボルツが握る守り石は光り続け、共鳴するようにリュウノオの光線も強さを増していく。
そしてついに、光線が青い炎を打ち破った。
青い炎は飛沫を散らせて炸裂し、光線の熱に打ち消されていく。ついには光線がマグマの中まで貫き、地の奥底へと着弾した。
火山の振動が止み、一転して静寂に変わる。
次の瞬間、火山を飲み込むほどの眩い光が爆ぜた。それは噴火の爆炎ではなく、リュウノオが放った守護の光。一瞬で火山一帯に波及していき、この地に充満していた《影》のエネルギーは焼き尽くされた。
やがて光は粒子に変わり、火山一帯に降り注ぐ。
火山からは荒れ狂っていた気配が消え失せ、かつての穏やかな静けさを取り戻していた。
「火山が……止まったのか……?」
「リュウノオ様が止めてくれた……!?」
アイやラルたちは、静まりゆく火山を息を呑んで見つめていた。
完全に火山が沈静化したのを見届けたリュウノオが、一行のほうを一瞥する。そして舞うように身を翻し、再び天の彼方へとへと飛び去っていった。
「……今のは?」
『古い土地神同士、腐れ縁の一つや二つ。大精霊ばかりが大陸の世話をしていると思うな。
しかし……今回ばかりは、何か一つでもあと一押し足りなければ、どうなっていたかわからんがな』
突然の行動についてショウに問われたハイルカントリュスが、不遜な口ぶりで答えるが、切迫していた本音を零しながら視線を移す。
その先には、ボルツの手に持つ守り石の光が収まっていく様子があった。
「火山から漂っていた《影》のエネルギーは消失したようです。異常現象は収束した可能性が高いでしょう。
先ほどの青い炎の調査と、内部に残された方々の救助は教団が引き継ぎます。私たちは一旦街へ戻りましょう」
「わかった」
ガリュマダロンに同乗しているリオウが、手のひらの計測器を見ながら告げ、アイが頷く。
リオウの指示に従い、一行を乗せたガリュマダロンとワイバーンたちは街へと旋回した。




