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第25話 ドルゴラッヘ火山-2

 数日後、準備が整った一行はバロディノーギア王国を発ち、ドルゴラッヘ火山行きの列車に乗車していた。

 王族関係者の直々に手配による、寝台付きの豪華な個室。移動する宿と言って差し支えない車内に、アイたちも調査の緊張感はどこへやら、すっかり心が躍っていた。


「大陸を救うための大事なお仕事なのはわかっているのですが……みなさんと旅に出発するのを、数日前から楽しみにしていて……

 父上やお兄様の外出について行くことはあったのですが、こうして自分で列車に乗るのも初めてなのです」

「不安になるよりかはそんなもんでいーんだよ! 俺たちだって観光みたいなもんだしさ!」

「良くはないだろ」

「そうだよ~! 今まで女子は私一人だけだったから、リンが来てくれてわたしも嬉しい~!」


 向かい合わせの座席に腰掛け、そわそわとした様子で顔を綻ばせるリン。アイとカナが口々に歓迎する傍らで、ジフだけが冷静にリンの情操教育を心配している。


「それに、フローランナも姫様と一緒に来てくださるなら、一国の王女様を預かる僕たちも安心ですね」

『ふふ、ありがとう。私もみなさんならとても頼りになりますわ』


 ショウが名を呼んだのに応えるように、リンの体から緑色の光――エネルギー体のフローランナが宙を舞った。



「そーいえばフローランナもおりぇと同じ大精霊だけどよぉ、戦う時以外はいつもリンの中にいるよなぁ」


 そう何気ない疑問を口にしたのは、アイの膝に乗っているガリュマ。その言葉どおり、彼は哺乳類の小さな獣の姿のまま、宙に浮遊しているフローランナの光に、ちょいちょいと手を伸ばしている。


『そうですね、ガリュマのような竜獅子の種族は、千年前のガリュマダロンが力を星座に返上した際に、完全な野生種になりました。

 それ以降、彼らは元素のコントロールから完全に切り離され、皆が自分自身の体を持って生まれ、生きています。

 一方で、私は今でも元素の化身として存在しているので、人の姿はあくまでも人々と言葉を交わすためのものなのです』


 フローランナの丁寧な説明に、アイたちは「へぇ~」と感嘆を漏らす。


『ですが……少し魔力をこねれば、このように』


 と、フローランナの光がもこもこと泡立つように形を変えたかと思えば――ポン、と弾け、やけにデフォルメされた小さな花の妖精が姿を現した。


『小さい体なら魔力の燃費も少なくてお手軽なのです』

「かわいい~!!」


 見慣れた妙齢の女性の姿から一転、マスコットのようになったフローランナに、カナとリンが目を輝かせて身を乗り出す。



「それと……ショウの中にもハイルカントリュスがいるんだっけ?」

「は、はい……」

「もしかしてハイルカントリュスもこのままついてくるの?」

「こないだはいろいろと協力してくれたから、悪さしないならこの際まあいいけど……」


 大精霊の話題に乗じて、アイが渋々念のためといった顔で尋ねる。カナは露骨に警戒しており、ショウも苦笑いで頷いた。ショウの体から渦中の鳥獣――ハイルカントリュスの光が飛び出す。


『フン、私に借りを作ったことをしかと覚えているならそれでよい。

 貴様らが消滅させた私の実体が早く戻るよう精々尽力しろ』

『何かあれば私が大精霊の権限でハイルを御しますので』

『なに……?』

「フローランナとハイルカントリュスってそういう感じなんだ」


 この二体は旧知の仲らしいのだが、小さい体のまま強制力をちらつかせるフローランナに、アイも畏敬の念を感じずにはいられない。フローランナはにこやかなまま、リンのほうへ振り返る。



『リンリアーナ、そろそろ列車の外に、あなたが楽しみにしていた景色が見えてくる頃じゃないかしら?』

「あー! そうでした!」

「姫様、向こうの展望デッキが開放されているので、外に出るともっとよく見えますよ」


 ショウの気の利いた提案に、リンだけでなくカナやガリュマも反応を示した。


「わたしも気になるー!」

「おりぇもおりぇもー!」

「あー! 置いてくなって!」


 思い思いに席から立ち上がり、廊下へと走っていく二人の少女と一匹の後を、アイが慌てて追いかけていった。

 賑やかな足音が遠ざかり、静まり返った座席に、ジフとショウが取り残されている。



 ジフは溜め息を漏らすと、頭を抑えた。


「どうしてこうもずっと走り回ってられるのか……」

「まあ、これから先は長いですし、居心地が悪いよりはずっと良いことですよ。僕たちも今のうちにじっくりくつろいでおきましょうよ」

「確かに、リンに同行してもらっている手前、退屈させてしまうよりはマシなんだが……」


 王城に引き続き、頭が痛そうに押さえているジフに、ショウが苦笑まじりになだめる。

 ふと、ショウはこうしてジフと二人きりになるのは珍しい機会だと気づく。



「それにしても、アイくんたちをずっとフォローしているジフくんも、本当にすごいですよね」

「なんだ、急に」

「前からずっと思ってましたよ。大部分はリオウさんがやってくれてるとは言え、ジフくんはとにかく修羅場慣れしてるというか……教団のお仕事って本当に過酷なんですね」

「こんな異常現象だらけの時代で、教団の兵士をやってれば、感情で調子が狂う程度のヤワな根性なんてすぐに叩き直される。それができない奴はとっとと別の道へ去るだけだ」


 やけに褒め言葉を連ねるショウに、ジフは突き放すように、冷淡に答える。それでもショウは相変わらずにこやかだ。


「アイくんもいつも話してくれますよ。〝ジフはほんとにすげーんだ〟って」

「…………」


 ショウの軽快な身振り手振りに、実際のアイの様子がありありと思い浮かぶ。ジフは呆れたような、気恥ずかしそうな、複雑な顔で返事に困っている。


 ――『ジフってさ、俺と同い年の子供なのに、バリバリ戦うし、何でもテキパキ考えて動くし、いちいち驚いたり怖がったりしないし、ほんとスゲーって思うんだ』


 ジフ本人にも、アイから直接伝えられたのをはっきりと覚えている。下心や打算もなしにああもすらすらと他人を褒められるのは、根っから他人を信用しすぎているのだろうといっそ感心した。

 教団の仕事が評価されているのなら結構なことなのだが、それとは別にジフの人となりの部分で、アイたちには何か少し大袈裟に捉えられているような気がして、ジフは複雑な気持ちになる。


「……俺の場合は、同じように保護された他の子供と比べても、昔から未練や願望みたいなものがなくて……そのぶん教義や訓練くらいしか、頭に詰め込むものがなかったというか……」


 本人にとっては深い意味はなかったのだろう、ジフが何気なく零した一言。にこやかだったショウも、少し改まった表情になる。



「……もし、気分を悪くしてしまったらすみません。

 僕も前から少し思っていたんですが……ジフくんは、言葉は淡白かもしれませんが、いつも冷静で人を助けることに恥じらいがない。

 ただ……アイくんのような、自分と同じ子供で、でも自分よりできることが限られていて、だけど大星座の力を持っていて。

 足りない分はこっちでカバーして、なのにいざという時は彼を立てて信仰しろなんて……それだけ聞くと、普通なら理不尽も良いところだと思うのに……

 ジフくんはそういうのを、劣等感というか不公平というか――〝ずるい〟と思ったりはしないんですか?」


 ショウなりに慎重に思慮して、そしてあえてはっきりとした言葉で聞いたのだろう。そんな彼の直球な問いに、ジフも真剣な顔で考える。


「最初の頃、実際に理不尽が積み重なって、俺はあいつごと匙を投げた。俺はお前らが思ってるよりも全然未熟だ。

 ただ、俺は……〝何かが違えば俺もあいつみたいになれた〟、みたいなことは……考えたことがなかった。

 さっきも言ったが、俺にあるのは教義だけで、それ以外のことに……そもそも心が動いたことがない」


 まるで、今しがた初めて自覚したかのように、ジフは言った。


「あいつは確かに、人が困っていると見境なく助けようとする。

 だが逆に言えば、あいつ自身が他人より得をしたり、優位に立つため……そんな理由で大星座の力を使おうとしたことは、一度もなかった。

 それに、俺が何年もかけて教義を理解して、今でも慎重に考えてようやく出てくる、適切な言葉……あいつはそれを、いつも口をついたように直感で言える。そうして会ったばかりの人たちの信頼を得られたことが何度もあった。お前やリンだってそうだろ」

「……はい」


 ジフは、これまで誰よりも近くで、アイが人を救う姿を見てきた。そのたびに、ジフの中にも確かに積み重ねられ、芽生える感情があった。


「だから……教義で人を救うために、教団の兵士をやっている俺も……負けてられないと思ったんだ」


 そう告げたジフの表情が、ショウにはいつになく感情の温度が籠っているように見えた。



 質問の答えを聞き、ショウは思案する。


「正直僕は、ジフくんには人に寄り添う人間味は感じるけれど……人間臭さのようなものをあまり感じないな、と思ったんです。教団の環境を聞いて、僕もまだまだ世間知らずでした」


 ショウはまず、詫びを述べた。今は訳ありの立場とは言え、両親が健在のショウには、孤児の話は少々重苦しかったかもしれない。そんなに深刻に受け止める必要はないのにな、と思うジフだったが、不意にショウと目が合う。


「それに……アイくんとジフくんは、本当に良い関係ですね」


 そしてショウは人の好い爽やかな笑みで、そう結んだ。

 一拍置いて意味を理解し、ジフは面喰らった顔をする。何か反論しようとして視線を右往左往させた後、結局思いつかなかったのか、苦虫を噛み潰すようにくしゃりと目を閉じる。


「……静かなうちに少し寝る」

「はい。おやすみなさい、ジフくん」


 座席の肘掛けに頬杖をつき、仮眠に入るジフを、ショウが微笑ましそうに見ていた。




* * *




 そして、列車は自然豊かで風光明媚な西の地から、黒く雄大な火山と青い海に囲まれた、白い建物が立ち並ぶ場所へと運んでいく。

 ――ドルゴラッヘ火山。その麓町。


 駅の広場に降り立つと、足元には鮮烈な色彩のモザイクタイルが広がっている。

 見渡す限りの塔と、それらを繋ぐ高い橋梁。空中回廊が網の目のように都市を結び、その隙間をさらりとした風が通り抜けていく。


「ドルゴラッヘ火山は、大陸で一番の鉱物の採掘地と言われています。

 動力源である星零石の原石に、加工用の鉱物、装飾用の金属も、ここで採掘されているんですよ。」

「このタイルも、ここで採掘された石灰や顔料で作られているのですよね!」

「へぇ~!!」


 日頃から熱心に各地の風土を学んでいるショウやリン。そんな二人でさえ、眼前に広がる色彩豊かな実景を前に、瞳を輝かせ、胸を躍らせている。楽しげに語る彼らの言葉に、アイとカナも無邪気な声を上げていた。


「とりあえずリオウが手配している宿に荷物を預けに行くか」


 ひとまずの目的地をジフが切り出し、一行は歩き出した。



 宿へ向かう道すがら、駅直通の市場を抜けていく。

 通りにはテント屋根が並び、その下のテーブルには様々な商品が広げられている。果物に日用道具、陶器やアクセサリー。どれもカラフルなビビッドカラーに彩られている。柔らかな洋風の雰囲気だったバロディノーギア王国とはまた違って、このドルゴラッヘ火山はエスニックな熱気を感じる。


 アイとガリュマは鉱石や魔獣の牙などで作られた武器や料理に吸い寄せられ、カナとリンは芸術品やアクセサリーに目を輝かせながら、一行は市場を歩く。


「……ん?」


 ふと、カナがとある店の前で、立ち話をしている人物を視界に捉える。

 一人は長身で屈強な体格の、壮年の男性。もう一人は細身の女性。そしてもう一人はふくよかなエプロン姿の中年女性。カナは、最後の女性の方に目を凝らす。


「カロータおばさん!?」


 カナは名を呼び、その人のほうへ駆け出した。アイたちも驚きながら後を追う。

 突然大きな声で呼ばれたふくよかな女性が振り返り、カナに気付いた。彼女もカナの姿をしばし凝視し、やがて表情がぱっと明るくなった。


「もしかしてカナちゃんかい!?」

「そうだよ! 久しぶり~!!」

「こんな所で会えるなんて思いもしなかったよ! 見違えるほど大きくなったねぇ!」


 互いに顔と記憶が一致したようで、二人は駆け寄りざまに笑顔で再会の抱擁を交わす。そんなカナたちの様子を、追いついたアイたちがきょとんとした顔で見ている。


「あらずいぶんと賑やかだねぇ。カナちゃんのお友達かい?」

「そう! 今はこっちのアイと運び屋をしながら、こっちのジフたちと他の依頼も受けて、いろんな場所に行ってるの!」

「エスペル教団の子に、カンティル族……こっちのお嬢ちゃんはえらく綺麗なお洋服だねぇ。カナちゃんがこんなに立派なお友達にに恵まれるなんてねぇ~!」



 二人の会話は盛り上がる一方で、置き去りにされているアイがオロオロと声を漏らす。


「えーっと……」

「この人はカロータおばさん! わたしたちが運び屋を立ち上げてすぐの頃、カロータおばさんと旦那さんの食材屋さんに、ほとんど住み込みで面倒見てもらってたの」

「そうだったんだ……」


 ようやくカナがこちらに振り向き、紹介してくれた。


「運び屋のことは手紙で聞いたよ。ヨータくん……大変だったみたいだねぇ。早く良くなると良いんだけど」


 カロータおばさんの言葉で、アイは以前リオウが運び屋の取引先へ送った手紙を思い出した。詳細をそのまま書けるはずもないので、「店主の健康上の理由」といった、障り無い便宜を図ってくれたようだ。


「……カナたちにも、ちゃんと頼れる大人がいたんだ……よかった」

「…………」


 カナがカロータおばさんに心を開ききっている様子を見て、アイがぽつりと呟いた。隣に立つジフがそれを耳に拾い、アイの横顔を静かに見やる。

 そわそわと表情を綻ばせているアイに、カロータおばさんも気づく。


「坊や、今はカナちゃんのことしっかり頼むよ!」

「はっ、はい……! いぃっ!?」


 景気付けの発破をカロータおばさんに掛けられ、アイは威勢よく返事をする。が、それを上回る力で背中を叩かれ、アイはむせ込んだ。


「あ、そうそう。いつもこの食堂にうちの食材を卸しててねぇ。ちょうど今日は直接顔を出しに来てた所なのよ。

 こちらがここの店番をしているスミンさん。

 そしてこちらは、ここの火山で炭鉱夫たちのリーダーをやってるボルツさん。通称『親方』さ。この二人はご夫婦なんだよ」

「はじめまして」

「……どうも」

「この通り、スミンさんはともかく、親方はちょっと口下手なんだけど、子供たち相手に緊張してるだけだからさ。良い人だよ」


 カロータおばさんに右手で差され紹介された女性、スミン・ドゥニッチは、少し気恥ずかしそうに微笑みながら会釈する。一方の男性、ボルツ・ドゥニッチはそっけない挨拶を口にした。

 彼を間近でよく見てみれば、頭には闘牛の如き二本の立派な角が生えている。

 


 人が集まり、和気藹々とした雰囲気の食堂前。そこへ割って入るように、また別の声が聞こえる。

 ……が、その声が響いたのは、一行の頭上の青空からだった。


「親方~~~~!!」


 少年の大声とともに、大きな飛行生物の羽ばたきの音が、上空を見上げる一行のもとに急接近する。

 はっと状況に気づいたアイたちがその場から飛び退いたのとほぼ同時、少年と飛行生物がズドン、と着地した。


「うおおっ!?」

「ワイバーンだりゅ!」

「おっと、悪ぃ」


 よほど急いでいたのか、少年もようやくこちらに気づき詫びを入れる。

 陽に焼けた褐色の肌に赤茶色の髪と、エスニックなこの街で暮らしているのがよくわかる外見だ。そんな少年にもボルツと同様、頭に二本の角が生えている。搭乗してきた生物――ワイバーンとよく似たその角を、アイが珍しそうに注目する。


「すげぇ、この人も頭に角が生えてる」

「ここで暮らしている一族、ドルゴラッヘ族の人ですね。

 生まれつき角が生えていて、生身のままでも岩を砕くほどの力が出せる、力持ちの種族の方々です」

「ああ~! なるほど! カンティル族のショウにも羽が生えてるみたいなもんか」


 説明するショウの頭にも、生まれ持った鳥の羽が見えており、彼のようなこの大陸特有の種族なのだとアイは合点した。


 

 一方、落ち着きのない様子でワイバーンから降りる少年に、声をかけたのはボルツのほうからだった。


「どうした、ラル。急に空からそんなに慌てて」

「親方! さっきここにマノが来なかったか!?

 俺が炭鉱の手伝いしてる間に、食堂に買い物しといてくれって頼んだんだけど、俺が家に帰ってもあいつ戻ってないみたいなんだ」

「マノってなんだりゅ?」

「こいつの妹だ。生憎、俺は今日は見てないがな」


 少年――ラル・ヘイル=リュージーンの用件を聞き、慌てように納得する一行。ボルツの隣で、スミンも心配そうな顔をして考える。


「……マノちゃんなら、確かにさっきここへ買い物に来ました。

 会計を済ませた後も、火山のほうをぼーっと見てたから、どうしたのって声をかけたんです。

『最近みんな具合が悪いみたいだから、リュウノオ様の祠にお祈りすればみんな治るのかなぁ』って話してて……そのまま火山の方に歩いて行って……」

「リュウノオ様……祠……」


 スミンからの情報を整理するように、ラルがその中に出てきた名称を呟く。


「……あ、」


 不意に、リンが足元の一点に目を留めた。食堂の入り口近くにしゃがみ込み、何かを拾い上げた。


「お守り……? が、落ちていました」

「それ、マノのだ」


 赤い紐がついた、手のひらに収まる護符状の小物。リンの手にするものを目にしたラルが、見慣れた記憶と一致し、次第にその顔が青ざめていく。


「あいつ……もしかして火山に行ったのか……!? こんな時に……!」



 取り乱すラルを心配する傍ら、会話の端々にのぼる「火山」という言葉で、アイたちもこの土地に訪れた理由――異常現象の調査のことを思い出す。そして、ジフが実際に切り出す。


「最近この火山の周辺で、異常現象が起きていると聞きました。微弱な地震が頻発していると……自分たちはその調査に来ました」

「異常現象……そう言われりゃ、そうなるかもな」


 ボルツが腕を組み、無愛想な顔がさらに少し訝しげな影を落とす。


「確かに、活動周期でもないのに火山の地震が続いてるのもそうだが……

 そんな危ねぇ状況だってのに、炭鉱の奴らが白昼夢でも見てるみてぇに、ふらふらと火山に向かうんだ。

 それも一人や二人じゃなく、日に日に人数が増えてやがる」


 そう話すうち、ボルツはより深く眉をひそめる。


「どいつもこいつも口を揃えて『金銀財宝がバカみてぇに採れるんだ』……って言ってな。一人が本当に持ち帰って来てから、どんどん広がっていっちまってよ……」


 荒唐無稽そのもの、という内容に、言葉にして語ったボルツの心中が伝わってくる。聞いていたアイたちも、すっかり不穏な表情になっている。


「それって……」

「かなり怪しいな」

「妹さんも、それに巻き込まれてるかもしれないってこと……?」


 アイとジフ、そしてカナは確認するように互いに顔を見合わせた。アイが一歩踏み出し、今にも駆け出そうとしているラルに声をかける。



「俺たちもこれから火山に行って調べようとしてたんだ。妹さんを見つけるためにも一緒に来ないか?」

「えっ……いいのか?」


 思いがけない申し出に、ラルが呆然と目を見開く。すかさず、背後からカロータおばさんの快活な声が飛ぶ。


「今の火山に子供だけで行かせるのも危険だしねぇ、大人も誰かついていってあげるべきさね。ねっ、親方!」

「……しょうがねぇなぁ」


 カロータおばさんに強めに背中を叩かれ、ボルツは首を掻きながら渋々了承した。

 想定よりも早々の運びとなったが、一行は不気味に煙を吐くドルゴラッヘ火山へと向かうこととなった。


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