♥ テムモンフードコート 1
◎ 今回はニュイ視点になります。
──*──*──*── テムモンフードコート
──*──*──*── ニュイside
トッポに鷲掴みされてテムモンフードコートの中へ放り投げられたニュイは、一生懸命鳴いたがアルトが駆け寄って来てくれる事はなかった。
ニュイが大好きなアルトは、トッポに強引に無理矢理に引っ張られて行ってしまったからだ。
「 にゅ〜〜…… 」と落ち込んで項垂れていたニュイだったが、一部始終を見ていたテムモン達に励まされたり、元気付けられたりした。
トボトボと元気なくジャンプしながら屋台に向かうニュイは、トッポの言葉を思い出していた。
「 悪い奴等が来たら遊んでいいよ。死なない程度にね 」だったような気がする。
悪い奴等が本当に来るかは分からない。
だが──、トッポがそう言ったのだから万が一もあるし、来るかも知れない。
何せトッポは妖精王なのだ。
トッポが妖精王だと知っているテムモンは自分だけだ。
それにスタジアム内の中を実に多くの妖精が飛び回っている。
他のテムモンには妖精の姿は見えていないし、気配も感じていない。
妖精には実体が無いから気配なんてないのは当然なのだが…。
ニュイに妖精の姿が見えるのは、バブルスライムへ進化する為にトッポから祝福の一部を授けられたからだ。
妖精が何を言っているのかは分からないが、妖精の姿が見える。
だから、何と無くだがスタジアム内で何か良くない事が起こる可能性は0ではないとニュイは考えていた。
トッポは「 死なない程度にね 」と言っていた──と思う。
鯔のつまりだ、相手が死にさえしなければ、何をしても構わない──と言う事だ。
息さえしていれば、死ぬ事はないのだ。
ニュイは気持ちを切り替える事にした。
玩具が態々自分達から遊ばれに来てくれるのだ。
楽しもう。
狩りは大得意なのだ。
隅っこに追い詰めた無抵抗な獲物をメッタメタのギッタギタに痛め付けるのは楽しい。
それが悪人だと言うならば、多少の手加減をする必要はあっても容赦する必要は皆無だ。
ニュイが屋台へ着いた時にはテムモンの行列は無くなっていた。
屋台のスタッフから食事用のテムモンフードを貰う。
テムモンフードの入った木製の皿を頭の上に乗せながら、テムモンが集まっている場所へ向かってジャンプする。
暗闇の中でも目の見えるテムモンを見付けては、これから起こるかも知れない事をテムモン達に話して回る。
何も起きなければそれでいい。
何か起きた時、咄嗟に行動が出来るように準備をしておく必要はある。
備えあれば──と言うヤツだ。
テムモン達は真剣にニュイの話に耳を傾けていた。
誰か1人──いや、1体としてニュイの話を無視するテムモンは居ない。
何故ならば、ニュイは1:50の勝ち抜きバトルで50体のテムモンを負かしたスライムだったからだ。
そんなスライムの言葉を無視するテムモンはテムモンフードコートの中には居なかった。
スタジアムのスタッフもテムモンを警備してくれてはいるが限度はある。
いざと言う時は、テムモン同士で足りない部分を補い合いながら助け合う必要があるのだ。
小さいテムモンや弱いテムモンを強いテムモンや大きなテムモンで守りながら、暗闇の中で目が見えるテムモンの指示に従って落ち着いて行動する。
何処から悪い人間が襲って来るか分からないから油断は出来ない。
もしかしたら、スタッフの格好をして紛れ込んで来る可能性もあるが、臭いに敏感なテムモンが嗅ぎ分けてくれる事になった。
相手を眠らせる技を使えるテムモンには人間にだけ効果のある声で鳴いてもらう事になった。
スタッフ側から見れば、テムモン達が和気藹々と食事をしている微笑ましい光景に見えているが、実際は全く違っていた。
ある程度の話し合いが終わると、テムモン達は各々役割を果たす為に決めた配置へ移動を始める。
ニュイも空になった木皿を屋台へ戻すとピョンピョンと跳ねながら配置に付いた。
暇な時間──もとい、平穏な時間が続く。
他のテムモン達も警戒しながらではあるものの、暫しの自由時間を満喫しながら寛いでいる。
ニュイはアルトが恋しくて仕方無い。
アルトに会いたい。
早く3時間なんか過ぎてしまえばいいのに──と思っていた。
ニュイが芝生の上をゴロゴロと転がりながら、スタッフ達へ自分の可愛さをアピールしていると突然スタジアム内の照明が消えた。
辺りは完全な暗闇に包まれた。
突然の停電により、テムモンフードコート外は騒然とし出した。
パニックになっている人間達が叫ぶ声や悲鳴が聞こえて来たり、走り回っていたりする。
バタバタとテムモンフードコートへ近付く足音が複数も聞こえて来る。
ニュイは「 来たか!! 」と思った。
近くで誰かの断末魔が聞こえた。
スタッフだろうか?
この仕組まれた停電を起こした奴等は全員、手練れかも知れない。
然し、そんな事はニュイには関係無かった。
所詮はひ弱な人間なのだ。
LVが5桁もあり、高濃度の危険極まりない殺人的な酸を無限に飛ばせるニュイにはザコ中のザコで相手にさえならない。
暗闇の中で目の見えるテムモン達と怪物同士にしか解らない合図を出し合いながら、ニュイは駿足で動いた!!
楽しい狩りの始まりだ。
予備電源が動き出し、スタジアム内の照明が点いて周りが見えるようになった頃には全てが終わっていた。
スタッフの何人かは事切れている。
多分、見えないなりに預かっているテムモン達を必死で守ろうと抵抗をした際に返り討ちに遭ったのだろう。
テムモン達の安否確認により、テムモンに関しては1体も欠けてはおらず無事だった。
テムモンフードコートに居るテムモン達を襲った輩は全て、虫の息だった。
殺してはいないのだから、トッポ的にはセーフだろう。
アルト的には完全にアウトだろうが……。




